見出し画像

まちづくりの未来予想図 Ⅱ

≪おごおりト−ク27≫

2.地域課題の解決に向けた仕組みづくり


前回の「協働のまちづくりの成果と課題」が確認できれば、次は「じゃあ、どうすればいいの?」ということになります。

そこで、ガイドラインの次の段階として、「これからの地域課題の解決に向けた具体的な仕組みづくり」について考えてみたいと思います。この点についても、地域包括ケアシステムにおける生活圏域の3つの階層に分類して考えてみます。

【自治会圏域】
「自治会圏域」では、自治会などの地域活動において役員の高齢化や担い手不足の問題が深刻化していることは前述のとおりです。これからも自治会を中心とした地域コミュニティが飛躍的に活性化することは期待できないことから、今後は、地域の高齢化や人口減少の影響に見合った地域活動の見直し(縮小や廃止)が余儀なくされることと思います。
自治会においても、既存の地域活動全てを継続することができない以上、「あれかこれか」を選択する必要があり、その際に「何を残すべきか」ということが重要になると思います。

「自治会圏域」の中では、個別課題の取り組みとして自主防災活動があります。これは自治会の自主防災組織が中心となって活動を行い、行政や「まち協」防災部会などが自主防災活動を支援するというスキームになります。
自主防災組織は、災害時に特化した体制づくりは機能不全に陥ることが想定されるので自治会と一体的に組織することとされており、平時の自治会活動の延長線上に災害時の防災活動が位置付けられています。
また、行政や「まち協」防災部会では地域の災害特性に応じた防災訓練や防災研修によって自主防災組織の活動を支援するとともに、自主防災組織の担い手を確保するために防災リーダー養成など人材育成にも取り組んでいます。

もう一つ、「自治会圏域」の個別課題の取り組みとして高齢者の見守り活動があります。
これは自治会の「ふれあいネットワーク推進委員会」が主体となった活動で、民生委員や社会福祉協議会などと連携しながら取り組まれています。
このふれあいネットワーク活動も自治会活動と一体的に取り組まれており、それによって活動の担い手を確保するとともに、月2回の広報配布の機会を活用して自治会活動の“ついで”に見守り活動が行われています。

本市の地域自治の基盤は自治会活動にあり、これら自主防災活動やふれあいネットワーク活動は自治会活動と一体的に取り組まれている地域の支え合いのシステムだといえます。
役員の高齢化や担い手不足の問題が深刻化する中で地域活動を継続していくためには、個別課題ごとにバラバラに対処するのではなく、自治会活動と一体化した体制づくりによってその担い手を確保するとともに、地域資源である地域の支え合いのシステムを活用した仕組みづくり(スキーム)を検討することが重要だと思います。

私がなぜ、この2つの地域活動を取り上げたのか…。それは、仮に自治会活動が行き詰まり、「あれかこれか」を選択しなければならないような状況に立ち至ったとしても、いずれの活動も市民の生命を守るための最優先の取り組みであるということ、そして、自治会の「地域力」によらなければ行政では対応が困難な課題であるということ、という共通点があるからです。

【小校区圏域】
「小校区圏域」では、「まち協」のプラットフォーム化について考えてみます。

現在の「まち協」が、実施計画で描いたような地域の自治会やPTA、老人クラブ、民生委員、NPO、ボランティア団体など多様な主体の参画によって運営される組織になっているかといえば必ずしもそうではありません。地域の誰もがオープンに参加できるプラットフォームというより、特定の人達だけで運営される組織として固定化され、敷居の高い組織になっているという指摘もあります。そのことが、「まち協」の新たな人材の発掘や担い手の育成、地域の世代間交流などを阻害する要因になっているかも知れません。

実施計画では、「まち協はそれぞれの自治会が行う地域活動を重層的に補完するもの」とされていますが、このままでは自治会を補完するどころか「まち協」自体が自治会から支援を受ける側に陥る可能性さえあります。
「まち協」が受援側でなく支援側としてその機能が発揮できる組織になるためには、従来の硬直化した組織の枠を超えて、誰もが気軽に参画でき、新たな人材育成やつながりが創出できる地域のプラットフォームとして、あらためて組織のつながりを再構築する必要があると思います。

今、自治会が必要としているのは地域活動の担い手確保に向けた対策です。「まち協」自らがプラットフォーム化により自治会では担いきれない新たな人材育成の機能を備えた組織となることは不可欠であり、それこそが「まち協」の存在意義といえるのではないでしょうか。本来、この「まち協」のプラットフォーム化については、それぞれの「校区まちづく計画」の中で検討されるべき課題だと思います。

【市全域】
「市全域」では、地域活動を支援する中間支援組織について考えてみます。

事例をあげると、「防災士会」は自主防災組織や「まち協」防災部会の活動支援を行うボランティア団体で、専門性を持った有資格者で構成されており、行政でもなく自治会や「まち協」でもない立場で行政と地域をつなぐ中間支援の役割を担っています。
特徴的なのは、自主防災組織や「まち協」防災部会のメンバーが「防災士会」に加入したり、中間支援の防災士が担い手として「まち協」防災部会に参画するなど、組織間の人材交流が図られている点にあります。

このように、専門性のある人材を備えた中間支援組織との連携によって、自治会や「まち協」の担い手確保や人材育成の仕組みを検討することも必要だと思います。

3.これからのまちづくりの行動指針


少子高齢化や人口減少社会の中で、本市の総合振興計画が目指すまちづくりは「地域共生社会」の実現です。つながりのある地域をつくる取り組みは、自分の暮らす地域をより良くしたいという地域住民の想いや主体性に基づき、「他人事」ではなく「我が事」として実践されてはじめて持続可能な地域活動となり得るものです。
これらのまちづくりの実現を目指して「まちづくり条例」が制定され、条例の実効性を高めるための行動指針として「まちづくりガイドライン」が策定されることから、このガイドラインのまとめとして「これからのまちづくりの行動指針」が示されなければならないと思います。

そこで、これまでのまちづくりの検証と地域活動の考察を踏まえて、私なりに「まちづくりの行動指針」を以下の3点に集約してみましたのでご紹介します。

【まちづくりの行動指針】
≪地域自治の基盤である自治会活動の担い手確保に向けて≫

①「自治会圏域」では、自治会活動と一体化した体制づくりと地域住民による支え合いのシステムの活用、地域課題の解決に向けた仕組みづくりとその共有化

②「小校区圏域」では、校区まちづくり協議会のプラットフォーム化による新たなつながりの創出と人材育成機能の強化

③「市全域」では、市民活動団体、ボランティア、中間支援組織等との連携による新たな人材活用の仕組みの構築

ここまでガイドラインについて述べてきましたが、これらは、あくまで私個人の意見にすぎません。私としては「まちづくり条例」の理念に基づいて策定するこのガイドラインが、より多くの市民や地域のまちづくり関係者にとって、そして地域と協働する立場にある自治体職員にとっても、将来にわたって目指すべき「まちづくりの未来予想図」として共有されることを期待しています。
(2022.10.10)

いいなと思ったら応援しよう!