福祉協力者のトリセツ
≪おごおりト−ク29≫
「まちづくりの未来予想図」では書き切れなかったのですが、どうしても触れておきたいテーマに「福祉協力者」があります。
「福祉協力者」とは、地域のふれあいネットワーク活動の担い手として見守り訪問活動やサロン交流事業の取り組みに協力している市民ボランティアのことで、地域によっては福祉員やふれあいネットワーク活動員などとも呼ばれています。
今回は、この「福祉協力者」にスポットを当てて考えてみたいと思います。過去のトークと重複する内容も含まれますがご容赦ください。
なぜ民生委員は福祉協力者を必要とするのか?
福祉協力者については、民生委員からもその制度化が要望されていますが、では、なぜ民生委員は福祉協力者の制度化を求めているのか、その事情から見ていきたいと思います。
ふれあいネットワーク活動とは、地域の高齢者の孤立や孤独死を防止することを目的とした活動で、平成8年度から市の委託事業として小郡市社会福祉協議会(以下、社協)で取り組まれている事業です。
市内の自治会においては自治会役員、民生委員、福祉協力者、老人クラブなどを中心に「ふれあいネットワーク推進委員会」が設置され、70歳以上一人暮らし高齢者と75歳以上高齢者世帯等を対象とした見守り活動やサロン事業などに取り組まれています。
しかし、このふれあいネットワーク活動の問題点として、本来は自治会に設置された「ふれあいネットワーク推進委員会」が主体となって取り組むべき活動が、その推進体制が十分に機能していないことから、結果として民生委員などに負担が集中していることがあげられます。
地域では高齢化に伴って見守り対象者が増加する傾向にあり、見守り活動を民生委員だけで行っている場合はその負担が大きく、すでに民生委員だけでは担いきれない状況も出てきています。また、サロン事業なども民生委員の大きな負担となっており、このような状況が民生委員の後継者不足や定数欠員につながっていることから、民生委員の負担軽減のための対策として福祉協力者の制度化が求められているのです。
しかし、この事情をよく見てみると、そもそも自治会に設置された「ふれあいネットワーク推進委員会」が十分に機能していないことが民生委員の負担増大につながっている根本的な原因であって、仮に民生委員の負担軽減のために新たに福祉協力者を配置したとしても、地域のふれあいネットワーク活動の推進体制が改善されるわけではなく、根本的な問題解決にはつながらないということになります。
つまり、民生委員の負担軽減のために必要なのは自治会における「ふれあいネットワーク推進委員会」の推進体制の再構築(機能化)であって、福祉協力者の配置という対処療法的な対策ではないと思うのです。
福祉協力者の制度化の問題点
この福祉協力者の制度化によって生じる新たな問題点についても触れておきたいと思います。
私が、この制度化において最も問題だと考えているのは、福祉協力者が自治会の外部の体制として配置されることです。つまり、福祉協力者の活動範囲が自治会エリアであるにもかかわらず、行政や社協が制度化を行うことによって自治会の外部に福祉協力者が配置されることになります。(第二の民生委員的な立場)
福祉協力者が自治会の外部に位置付けられてしまうと、これまでのようにふれあいネットワーク活動を自治会活動と一体化して取り組むことが困難になるばかりか、自治会で取り組まれている自主防災活動との連携も難しくなることが考えらえます。さらに、この福祉協力者の立場が福祉活動に特化した自治会外部の担当者ということになれば、例えば広報配布や回覧板など日常的な自治会活動の「ついで」に見守り活動を行うような立場ではなくなってしまいます。つまり、福祉協力者の制度化によって地域の自治会活動と福祉活動が分離されることになれば、今度はそれぞれの活動で担い手を確保する必要性が出てくるのです。
実は、福祉協力者の制度化は、地域のふれあいネットワーク活動(高齢者の見守り活動)を自治会の広報配布活動と一体化して取り組むというこれまでの方針転換を意味するものであることに、行政関係者や社協の皆さんは気付いておられるでしょうか。このことは、自治会の高齢化や担い手不足の状況の中で、地域のふれあいネットワーク活動を今後どのように継続していくのかという持続可能性に関わる問題だと思うのです。
もう一つ、この制度化は一定の配置基準に基づいて福祉協力者を配置するというものですが、民生委員の確保にも苦慮している状況の中で、さらに福祉協力者も確保するということが現実的に可能なのかという問題があります。
仮に1自治会に平均3人の福祉協力者を配置するとなれば市内全体で約180人が必要となります。この180人の福祉協力者を誰が、どこから、どのようにして確保するのか、この人材確保を民生委員自らが担うことなく自治会長(区長)に押し付けるのであれば、それはあまりも荷が重すぎます。
仮に福祉協力者を新たに確保するのであれば、その対応策として具体的に人材確保や人材発掘をどうするのか、将来的な人材育成や“人づくり”の取り組みをどう進めるのかが同時に検討されなければなりません。
福祉協力者の制度化は必要ない
このように見てみると、地域のふれあいネットワーク活動については、まずは自治会の「ふれあいネットワーク推進委員会」の推進体制を再構築すること、そして、地域の見守り活動については自治会活動と一体化して取り組むことによって福祉活動の担い手を確保し、民生委員や一部の役員に負担が集中しない体制づくりを行っていくことが重要だと考えられます。これらの課題解決が図られない限り、民生委員の負担軽減や後継者不足の解消にはつながらないと思います。
さらに、すでに地域で活動している福祉協力者については、自治会外部の福祉活動に特化した担当者とするのではなく、自治会活動の担い手として「ふれあいネットワーク推進委員会」に位置づけていくことが必要だと思います。厳しい言い方かも知れませんが、現状の自治会外部の福祉協力者の存在が、自治会におけるふれあいネットワークの機能化を阻害する要因にもなっているのです。
このように、私としては、制度化によって生じる新たな問題やデメリットがあまりにも大きいことから、あえて福祉協力者を制度化しなければならない必要性は見当たらないと考えています。
これからの福祉協力者のあり方
この福祉協力者に関しては、おそらく10年くらい前から民生委員の要望を受けて関係者間で検討が重ねられている課題だと思いますが、平成28年に市と社協から「福祉協力者について」一定の考え方と方針が示されています。
その中では「福祉協力者は市内およそ7割の自治会で様々な形で配置されており、その活動内容、選任方法、位置づけ、自治会との関係性は多種多様でどれが正解という形がないことから、画一的な制度化は難しいこと」、「画一的な制度化を行うと、民生委員児童委員の確保にも苦労している自治会が多い中、さらに福祉協力者を確保することは現実的に困難であること」、「そのため地域の福祉協力者のあり方については、画一的な制度化によらず、それぞれの自治会の実情に応じた体制づくりを行っていくことが重要であること」という見解が示されています。
私は現時点でもこの考え方に同感であり、この方針に基づいて自治会のふれあいネットワーク推進体制の再構築に取り組んでいくことが必要だと考えています。
今回の「まちづくりガイドライン」の作成にあたっては、将来にわたって持続可能な地域活動を展望する観点から、この「福祉協力者」のあり方についてもぜひ関係者間で共有してもらいたいと思っています。
(2022.10.20)
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