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【100均ガジェット分解】(40)ダイソー(Standard Products)の「スマホを置くだけのスピーカー」
※本記事は月刊I/O 2022年7月号に掲載された記事をベースに、色々と追記・修正をしたものです。
ダイソーの「Standard Products」ブランドでスマートフォンの音を大きくする「スマホを置くだけのスピーカー」というものをみつけました。早速購入して分解します。
パッケージと製品仕様
「スマホを置くだけのスピーカー」の価格は1000円(税別)、Bluetooth接続せずに本体にスマホを置くだけで音を大きくすることができます。
100円ショップでよく見かける「空洞で音を響かせるタイプ」ではなく、アンプで増幅してスピーカーへ出力するタイプで、最大出力は3W、内蔵バッテリーは400mAh、連続再生時間は約4時間です。
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「NearFA (Near Field Audio)」と呼ばれる、スマホのスピーカーが発生する磁界を内蔵のコイルで拾って、アンプで増幅する「近距離音声通信」を使っています。
ちなみに「NearFA」は2012年末に規格が発表され、2013年1月のCES(電子機器見本市)で実機デモがあったのですが、その後は規格の普及が進まず、公式ページ(http://nearfa.org/)も2022年5月時点ではすでになくなっています。
音声出力はモノラル、実際に使用した印象では音質は「携帯型AMラジオ」相当です。
本体の分解
本体の外観と同梱物
パッケージの内容は本体と充電用ケーブル、取扱説明書です。本体はスマホ用のスタンドとなっていて、正面には電源スイッチがあります。使用時はスマホのスピーカーを左側の内蔵コイルの位置にあわせておくことで音声を拾ってアンプで増幅します。
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背面には充電用のMicroUSBポートと電源スイッチ、オーディオジャックがあります。オーディオジャックは入力用でケーブルを直接つないで音声を再生することができます。
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スピーカーは本体底面に1個だけです。四隅の足で浮かせる形になっていて、増幅した音は床で反射されて正面側に出力されます。
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本体の開封
底面の足のクッションの下にあるビスを外して本体を開封します。内部は2枚の「プリント基板」、「リチウムポリマー(LiPo)バッテリー」、「スピーカー」で構成されています。スピーカーは黒いボックスで覆われています。
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各パーツは「メインボード」を中心にリード線で接続されています。
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製品を構成する部品
メインボード
メインボードはガラスエポキシ(FR4)の両面基板です。基板上には型番「AZ-317-V3」と製造日「20210628」の表示があります。部品は片面にすべて実装されています。配線パターン以外の部分はベタGNDとなっていて、電源パターンも十分太く電流の流れに合わせた設計ができています。全体的に余裕のある設計という印象です。
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サブボード
サブボードはガラスコンポジット(CEM-3)の片面基板です。基板上に型番「AZ-317-GY-V3」と製造日「20210606」の表示があります。基板上にはスピーカーの磁界を拾うためのトランスが2個実装されています。
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スピーカー
スピーカーは4Ω3Wの外磁型(マグネットが外側にあるタイプ)です。口径は5cmと100均のガジェットとしてはかなり大きめのものが使われています。
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バッテリー
バッテリーはリチウムポリマー(LiPo)充電池で、保護回路内蔵の容量400mAhのものです。印刷では602040(W40xH20xD6mm)となっていますが、実測では403040(W40xH30xD4mm)です。
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回路構成
今回も実機より回路図を作成しました。
U1はAB級/D級動作の切替可能な汎用のオーディオアンプ、本機ではD級動作で使用しています。
U2はリチウムイオン電池用の充電制御ICです。
スマホのスピーカーの磁界は直列接続されたトランス(JP1,JP2)で拾って、Q6のトランジスタで増幅されてオーディオアンプ(U1)に入力されています。
プッシュ式の電源スイッチ(S1)のトグル動作(押すたびにON/OFFを切替)はトランジスタ・抵抗・コンデンサといったディスクリート部品で実現しています。
マイコン等のコントローラは使用しておらず、汎用部品のみでの構成となっています。
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主要部品の仕様
オーディオアンプ(U1) HAA2018
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オーディオアンプは「上海海栎创科技股份有限公司(Shanghai Hynitron Technology Co., Ltd. http://www.hynitron.com/)」の「HAA2018」です。中国の部品ECサイトであるLCSCでの部品単価は$0.13(2022年5月時点)、データシートはLCSCのサイトより入手できます。
https://datasheet.lcsc.com/lcsc/2201121330_Hynitron-HAA2018A-B-R_C2928138.pdf
AB級/D級切換機能付の単チャンネルオーディオアンプで、本機の使用条件(電源電圧3.7V、4Ω負荷)ではTHD10%で1.7W(typ.)となります。
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充電制御IC(U2) PJ4054
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充電制御ICは「东莞平晶微电子科技有限公司(Dongguan Pingjing Semi Technology Co.,ltd. http://www.pingjingsemi.com/)」の「PJ4054」です。LCSCでの部品単価は$0.0736(2022年5月時点)、データシートはメーカーのサイトより入手できます。
http://www.pingjingsemi.com/UploadFile/pdf/PJ4054英文版.pdf
リチウムイオン電池充電制御用ICで”PROG端子の外付け抵抗(Rprog)”で充電電流を設定できます。
本機では充電電流500mA(Rprog=2kΩ)で使用しています。
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P-Channel MOSFET(Q1) SI2301
![](https://assets.st-note.com/img/1672670509400-BFTgeFYHgA.jpg?width=1200)
「A1SHB」のマーキングの部品はP-ChannelMOSFETの「SI2301」です。
同一型番・マーキングで複数の会社より販売されている汎用部品で、LCSCでの部品単価は$0.04(2022年5月時点)、データシートは「深圳市富满电子集团股份有限公司(Shenzhen Fine Made Electronics Group Co., Ltd. https://www.superchip.cn/)のものがLCSCのサイトより入手できます。
https://datasheet.lcsc.com/lcsc/2202251730_Shenzhen-Fuman-Elec-SI2301_C337189.pdf
主な定格は、VDS: -10V(max), ON抵抗: 100mA(Vgs=-4.5V時) です。
NPNトランジスタ(Q2~Q4,Q6) S8050
![](https://assets.st-note.com/img/1672670679797-3MUC1sBmQ1.jpg?width=1200)
「J3Y」のマーキングの部品はNPNトランジスタ「S8050」です。
これも同一型番・マーキングで複数の会社より販売されている汎用部品で、LCSCでの部品単価は$0.015(2022年5月時点)、データシートは「江苏长晶科技股份有限公司(Jiangsu Changjiang Electronics Technology Co.,ltd https://www.jscj-elec.com/)のものがLCSCのサイトより入手できます。
https://datasheet.lcsc.com/lcsc/1810010611_Changjiang-Electronics-Tech--CJ-S8050_C105433.pdf
まとめ
一時期話題になったものの、既に忘れ去られた技術の感がある「NearFA (Near Field Audio)」対応のガジェットが新製品として発売されたのは興味深いです。
もしや専用ICが流通し始めたのでは?と推測したのですが、分解してみたらディスクリート部品と汎用部品の組合せ構成されていました。特に電源スイッチのトグル動作を実現している回路は設計の参考になりそうです。
基板の製造日から過去製品の在庫の放出というわけでもないので、どのような背景があるのかを調べてみるのも面白そうです。
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