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【100均ガジェット分解】(36)ダイソーの「人感・明暗センサー付LED電球」

※本記事は月刊I/O 2022年3月号に掲載された記事をベースに、色々と追記・修正をしたものです。

一般的なE26型口金に取り付けられるLED電球の「人感センサー内蔵タイプ」がダイソーから500円(税別)で発売されました。今回はこれを分解してみます。

パッケージと本体の外観

「人感・明暗センサー付LED電球」は他社からは1000~1500円程度(2022年1月時点)なので、かなり安い価格設定になっています。
ブランドはダイソー、LED電球のコーナーには40W相当と60W相当の2種類がありましたので、今回は「40W相当」の物を選びました。
箱の写真では先端中央に明暗と人感の2個のセンサがついています。

店頭展示の様子

パッケージ

箱の裏面には商品の仕様、側面には「取り付け可能な器具」と「センサの感知範囲」が記載されています。

パッケージの表示

箱には取扱説明書(40W/60W共用)も同梱されています。製品仕様によると定格消費電力は5.1W、設計寿命は20000H(常時点灯で2年強)となっています。

取扱説明書の製品仕様

本体の外観

本体上面の真ん中には人感センサー、その横に明暗センサが配置されています。

本体上面

電気用品安全法(PSE)のマークは本体の口金付近に表示されています。電球は特定電気用品対象外なので、〇で囲んだマークです。

本体のPSEマーク

本体の分解

本体の開封

本体は発光部分を覆うポリカーボネートのカバー、放熱用ヒートシンクと口金で構成されています。接着剤で固定されていますので隙間を超音波カッターで切断して開封します。

開封した本体

LED基板はヒートシンクに2か所のビスで固定されています。2種類のセンサーは成形品に固定されていて、プリント基板から部品の長い足で引出すように実装されています。

基板の取り出し

LED基板とヒートシンクの間は放熱のために白いシリコングリスが塗られています。
ヒートシンクの内側には電源基板があります。LED基板と電源基板はコネクタで接続されていて、簡単に分離することができます。

LED基板を外した状態

電源基板は口金とハンダ付けされていますので、口金とヒートシンクの間を超音波カッターで切って基板を取り出します。

電源基板を外した状態

プリント基板と回路の構成

LED基板

LED基板はガラスコンポジット(CEM-3)の両面基板です。主な面実装部品は7個のLED(2.8mm x 3.5mm)とセンサーコントローラです。人感センサと明暗センサはスルーホールにリードを挿入して裏面からハンダ付けされています。
電源基板用のコネクタ(ピンソケット)は基板に穴をあけて、裏面から接続できるようになっています。
LEDの裏側にはヒートシンクと接する放熱用の銅箔パターンがあります。

LED基板

電源基板

電源基板は紙エポキシの片面基板です。面裏面(パターン面)の主な実装部品はブリッジダイオード、LEDドライバ、5.1Vのツェナーダイオード、LDOレギュレータです。
写真左の黒いチューブの下には過電流保護用抵抗(0.47Ω)がついています。写真右端にはLED基板用コネクタ(ピンヘッダ)が実装されています。

電源基板

回路構成

基板パターンから回路図を作成しました。

回路図

AC入力からブリッジダイオード(BD1)で全波整流された電源を使い、電源基板のLEDドライバ(U1:BP2886)が7個のLEDを駆動します。
同じ電源からツェナーダイオード(L13)で5.1Vに降圧した後に、LDO(Low Dropout)レギュレータ(U3:L4JBDLX)で3.3Vを生成します。これはLED基板のセンサーコントローラ(U1:LIS1002)と各センサの電源に接続されます。
センサーコントローラには人感センサ(PIR)と明暗センサ(QC1)が接続され、それぞれの検出値に応じてPWM信号を出力します。このPWM信号が電源基板のLEDドライバのPWM端子に入力され、LEDの明るさをコントロールしています。

主要部品の仕様

次に本製品の主要部品について調べていきます。

人感センサー: PIR D203S

人感センサー

「人感センサー」は樹脂キャップで覆われたPIR(Passive Infrared Ray)センサーです。本機で使われている3端子のタイプは「D203S」という型番です。複数の会社で製造されていてAliexpressでは5個200円程度で販売されています。

https://ja.aliexpress.com/wholesale?catId=0&initiative_id=SB_20200523183219&SearchText=D203S

データシートは複数メーカーで同じものが使いまわされており、代表的なもの(会社名が検索しても存在しない「PIR SENSOR CO., LTD」)が以下より入手できます。

明暗センサー: フォトレジスタ HW5P1

明暗センサー

「明暗センサー」にはフォトレジスタが使用されています。これも複数の会社で製造されていてAliexpressでは20個200円程度で販売されています。

データシートは深圳市海王传感器有限公司(Shenzhen Heiwang Sensor Co.,ltd., http://www.szhaiwang.cn/)の「HW5P-1」という型番のものが以下から入手できます。

https://cdn-shop.adafruit.com/product-files/2831/HW5P-1_2015__1_.pdf

以下の写真はフォトレジスタのチップ部分の拡大写真です。リード線の上に実装されたチップからボンディングワイヤで反対側のリード線に接続されているのが確認できます。

チップ部分の拡大写真

LEDドライバ BP2886

LEDドライバ

LEDドライバーは上海晶丰明源半导体股份有限公司(Bright Power Semiconductor Co., Ltd., http://www.bpsemi.com/cn/)の「BP2886」です。
このICは外部からのPWM入力で調光できる非絶縁型(ACラインと分離しない)ステップダウンLED定電流駆動ICです。データシートは以下から入手できます。

センサーコントローラ LIS1002

センサーコントローラ

センサコントローラはLEDドライバと同じ上海晶丰明源半导体股份有限公司のPIRコントローラ「LIS1002」です。ただし、メーカーのサイトには情報はなく、データシートも見つかりませんでした。基板の結線からは、PIRとフォトレジスタの入力と、抵抗分割で入力された基準電圧を比較した結果に応じたPWM信号出力でBP2886のLED電流を制御していることがわかります。

電圧レギュレータ(LDO) L4JBDLX

電圧レギュレータ

表面のマーキング(L4Jの文字及びロゴ)をベースに検索をしたのですが、該当するものを発見することができませんでした。ピン配置が特殊ですが、回路構成から3.3VのLDOレギュレータと判断しました。

まとめ

LED基板は大手メーカー品でよく見る「アルミ基板」ではなく、ガラスコンポジット基板の両面パターンを使いセンサー回路を1枚に実装しています。アルミ基板と比べると放熱性能は劣りますが、コスト優先で割り切っているようです。


機能のポイントになるPIRセンサ・明暗センサは定番のきちんとした部品を使用していました。
本製品のLEDドライバとセンサーコントローラは同じメーカー製でセンサー付LED向け「チップセット」となっていて、最小限の周辺部品で必要な機能と価格を実現しているのもわかりました。

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ThousanDIY (Masawo Yamazaki)
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