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【100均ガジェット分解】(54)番外編「たまごっちユニ」
※本記事は月刊I/O 2023年9月号に掲載された記事をベースに、内容を追記・修正をして再構成したものです。
大幅に加筆したので有料設定にしましたが全文無料で読めます。
バンダイより電子工作でよく使われるESP32を搭載してネットに接続して遊ぶ「たまごっちユニ」が発売されました。今回は番外編としてこれを分解してみます。
パッケージと製品の外観
パッケージの表示
「たまごっちユニ」は2023年7月15日発売、標準小売価格は8,250円(税込)とたまごっちシリーズの中では少し高価な商品です。
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パッケージの底面には、技適マーク(シールで貼り付け)とリチウムイオンポリマー電池のリサイクルマークが表示されています。
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番号から検索したところ、技術適合証明は完成品ではなく、内蔵の無線モジュール(ESP32-S1-WROOM-1)での取得となっていました。
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同梱物と本体の外観
パッケージの内容は「本体」と「取扱説明書」と、充電用USBケーブル(USB-A~Type-C)です。取扱説明書は1枚シートのみ、きちんとしたものは公式ホームページからダウンロードが必要です。
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本体にはベルトが取り付けられていて、簡単に取り外しができます。
本体下側には充電用のUSB Type-Cポートがあります。ちなみにこのポートでPCと接続してみたのですがUSBデバイスとしては認識しませんでした。
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本体の裏面は半透明で内蔵のLiPoバッテリーの表示(370mAh)が見えます。裏面にはFCC ID(米国の技術規格)の表示があり、"SWALLOWUNI"というモデル名が書いてあります。このIDでFCCレポート(https://fcc.report/FCC-ID/PQ3SWALLOWUNI)を確認したところ、「BANDAI (SHENZHEN) CO., LTD.」がFCCを取得していることがわかりました。技適マークの表示は本体にはありません。
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本体の分解
本体の開封
本体裏面のビス部分のカバーは精密ドライバー等を差し込んで外し、固定しているビスを外すと裏蓋を外すことができます。
LiPoバッテリーは基板に両面テープで貼り付け、基板の右向こう側には無線モジュールのアンテナが見えます。スピーカーは本体上部にあります。
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LiPoバッテリー横には温度監視用のサーミスタが黄色いポリイミドフィルムのテープで固定されています。
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本体前面(LCD画面側)のカバーを外します。LCDパネルは、プラスチックの成形品に両面テープで貼り付けられていて、この成形品がビスでメイン基板と固定されています。
操作ボタンはプリント基板上のパターンをボタン部分の導電ゴムでショートする仕組みになっています。
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LCDパネルとメイン基板はコネクタ(11ピン)で接続、パネルの下側には無線モジュール(ESP32-S3-WROOM-1)があります。無線モジュールにも技適マークの表示はないので、日本国内で使用する場合はパッケージを保管しておく必要があります。
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メイン基板の構成
搭載されている部品
メイン基板はガラスエポキシ(FR-4)の両面基板です。
半導体部品は表面に実装、主要部品は無線モジュール(メインプロセッサ)、Audio DACとAudioアンプ、LiPoチャージャーIC、無線マイコンの電源用の3.3V LDO、ロードスイッチです。
LiPoバッテリーと温度監視用のサーミスタ、及びスピーカーはリード線でメイン基板にハンダ付けされています。
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裏面にはType-Cコネクタが実装されています。リセットボタン用のパターンと複数のテストランドが配置されています。Type-Cコネクタは6ピンの充電専用タイプで、電源用のVBUS/GNDとCCラインのみが接続されています。
CCラインは表面でプルダウン抵抗に接続されていますので、PD対応充電器でも問題なく充電できます。
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無線マイコンモジュール裏面にあるテストランドはデバッグ用でUARTとフラッシュへのDownload Boot起動用の信号がでています。
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プリント基板のパターン
基板のレジストが白でパターンがわかりにくかったので、照明の角度を変更しながら写真を撮影して合成してみました。プリント基板のパターンは非常にすっきりしているという印象を受けました。
![](https://assets.st-note.com/img/1709071724908-kV579AEkLu.png?width=1200)
主要部品の仕様
無線モジュール ESP32-S3-WROOM-1
![](https://assets.st-note.com/img/1709069631539-zfsBRO9d2G.jpg?width=1200)
無線モジュールは乐鑫信息科技(上海)股份有限公司(Espressif Systems, https://www.espressif.com/ )製の無線機能内蔵のSoCであるESP32-S3と周辺のメモリをモジュール化した「ESP32-S3-WROOM-1」です。
Xtensa製の32bit CPU LX7(最大240MHz動作)のデュアルコアで、ROM:384KB、SRAM:512KB、SPI flash:16MBを内蔵しています。対応無線規格は802.11b/g/n(2.4GHz帯のみ)とBluetooth LEです。
データシートは以下より入手できます。
![](https://assets.st-note.com/img/1709069993263-CdcD3L1jN5.png?width=1200)
Audio DAC ES8156
![](https://assets.st-note.com/img/1709069711844-3b2uG60Sxb.jpg?width=1200)
Audio DACは苏州顺芯半导体有限公司(Everest Semiconductor, http://www.everest-semi.com/ )の「ES8156」です。
左右2チャンネルのステレオ対応ですが、本製品では片側のチャンネルのみ使用しています。
パッケージはQFN-20、I2S入力で最大96kHz/24bitのサンプルレートに対応し7バンドのイコライザを内蔵しています。
データシートは以下より入手できます。
http://www.everest-semi.com/pdf/ES8156%20PB.pdf
![](https://assets.st-note.com/img/1709070185156-ErHkC6raVn.png?width=1200)
Audioパワーアンプ GPY0031A1-HS011
![](https://assets.st-note.com/img/1709070228567-tyxqQcJt7j.jpg?width=1200)
Audioパワーアンプは台湾凌通科技(Generalplus Technology Inc, https://www.generalplus.com/ )の「GPY0031A1-HS011」です。
最大出力2W、低歪率(THD+N=0.15%@630mW)と高性能のICです。
データシートは以下より入手できます。
https://www.generalplus.com/pLVfLN11915SVpfSNnormal_download
![](https://assets.st-note.com/img/1709070468646-5ZPGYCV3mF.png?width=1200)
ジャイロセンサー 型番不明
![](https://assets.st-note.com/img/1709070513845-YlbSuidbfH.jpg)
ジャイロセンサーは”6KK AN”のマーキングを頼りに検索したのですが、見つかりませんでした。たまごっちユニでは”ゲームセンター”->”レッツダンス♪”でジャイロ機能を使用したゲームが遊べます。
![](https://assets.st-note.com/img/1709070633679-Bwr8ImHScc.jpg?width=1200)
3.3V LDO XC6210B332MR
![](https://assets.st-note.com/img/1709070726876-RyLIAbqvVv.jpg?width=1200)
“0B20”のマーキングの部品は日本のトレックス・セミコンダクター(特瑞仕半导体、https://www.torexsemi.com/ )の3.3V LDO「XC6210B332MR」です。
小型のパッケージ(SOT-25)ですが出力電流は最大800mAと大きく、無線モジュールの電源に使用されています。
データシートは以下より入手できます。
https://product.torexsemi.com/system/files/series/xc6210.pdf
![](https://assets.st-note.com/img/1709070889438-lMyJNKAtMk.png)
LiPoチャージャー XC6804A4E14R-G
![](https://assets.st-note.com/img/1709070932355-tb6SPvba9q.jpg?width=1200)
“40C”のマーキングの部品もトレックス・セミコンダクター製で1セルLiイオン電池チャージャーIC「XC6804A4E14R-G」です。
低消費電流(100uA typ.)、サーミスタによる電池温度検出機能や外部抵抗によるCC充電電流設定機能を内蔵しています。
データシートは以下より入手できます。
https://product.torexsemi.com/system/files/series/xc6804-j.pdf
![](https://assets.st-note.com/img/1709071063953-eR36MrQkRl.png?width=1200)
ロードスイッチ XC6194B3NNER-G
![](https://assets.st-note.com/img/1709071098715-R0Pm1ryKds.jpg)
“460”のマーキングの部品もトレックス・セミコンダクター製でインテリジェントロードスイッチ「XC6194B3NNER-G」です。
PushボタンでON、STDN端子への外部信号でシャットダウンができます。最大出力電流1A、シャットダウンの際のリーク電流は 1nA(TYP.)と非常に低電力です。
データシートは以下より入手できます。
https://product.torexsemi.com/system/files/series/xc6194-j.pdf
![](https://assets.st-note.com/img/1709071258248-fosgntd3Lo.png?width=1200)
主要部品まとめ
調査した結果を含めた主要部品の配置をまとめました。
![](https://assets.st-note.com/img/1709072171662-IxAada03iF.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1709072396358-6qTDJY7PH0.png?width=1200)
まとめ
電子工作向けのガジェットでは非常によく使われているマイコンであるESP32シリーズの大手メーカー製品への採用ということですが非常に丁寧に作りこんだ設計で、コストと機能のバランスが非常に良い商品だという印象を受けました。
無理のないシンプルな構造で分解しやすい=組立しやすい
操作ボタンをパターンで実現してコストを削減
商品のメリットとなる省電力のためには高性能の部品を使用
実際に動作させて見たのですが、フル充電から5日経過してもバッテリー切れにならず、普通に動作しています。本製品のような育成系のゲームは放置することも多いので、バッテリーでの稼働時間が長いのは、非常に重要なポイントだと思います。
今回は構造と使用部品の解析だけとなりましたが、機会があればもう少し詳しく解析してみたいと考えています。
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