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王道でもないし、人生を変えるほどじゃないけれど、個人的に好きなアルバムシリーズvol.5 『華麗なるレース(A Day at the Race)』

「偉大な兄の影に隠れたアルバム」

第5回目は、「クイーン」から、1976年発表の5枚目のアルバム『華麗なるレース(Day at the Race)』です。

前作の『オペラ座の夜(A Night at the Opera)』は、言わずもがなクイーンを世に知らしめた『ボヘミアン・ラプソディ』を収録した歴史的名盤です。

本作は前作の影に隠れがちですが、楽曲単位で言うと粒が揃っていて、個人的にはこちらのほうが好みのため今回記事にしました。

曲目は以下の通り、全10曲となっています。

1.『タイ・ユア・マザー・ダウン(Tie Your Mother Down)』

2.『テイク・マイ・ブレス・アウェイ(You Take My Breath Away)』

3.『ロング・アウェイ(Long Away)』

4.『ミリオネア・ワルツ(The Millionaire Waltz)』

5.『ユー・アンド・アイ(You And I)』

6.『愛にすべてを(Somebody To Love)』

7.『ホワイト・マン(White Man)』

8.『懐かしのラヴァー・ボーイ(Good Old Fashioned Lover Boy)』

9.『さまよい(Drowse)』

10.『手をとりあって(Teo Torriatte (Let Us Cling Together))』

冒頭の厳かなイントロのあとに、ストレートなハードロックで、ライブでもオープニングでよく演奏された『タイ・ユア・マザー・ダウン(Tie Your Mother Down)』で幕を明けます。

こちらはギターのブライアン・メイの作品です。

続いて2曲目は激しい曲から一点、ボーカルフレディの耽美なバラードの世界が繰り広げられます。

クラシックに素養のあるフレディならではの曲ですね。

そしてアルバムは3曲目の軽快なカントリー調の『ロング・アウェイ(Long Away)』をはさみ、4曲目の『ミリオネア・ワルツ(The Millionaire Waltz)』に続きます。

ワルツのリズムに合わせたコーラスと多重録音の分厚いクイーンサウンド。

まさに初期クイーン様式美の全盛ですね。

また、あらゆるジャンルの曲調を自分たちのものにする、その適応力に脱帽です。

そして極めつけには、シングル・カットもされた6曲目の『愛にすべてを(Somebody To Love)』です。

この曲はたびたびライブでも演奏されており、私の大好きな曲の一つでもあります。

ゴスペル風の重厚なコーラスと後半への盛り上がり方が最高で、フレディが魂で歌い上げているのが伝わってきます。

また、このブライアンのギターソロは何度も練習したくらいクセになりました。

私個人的な見解ですが、この時からフレディは同性愛者であることをカミングアウトできずに、本当に愛する人がいない苦しみを曲に乗せていたのではないかと想像してしまいます。

続いて、なかなか味のある小品『懐かしのラヴァー・ボーイ(Good Old Fashioned Lover Boy)』です。

軽快なピアノとメロディアスな曲調で、隠れた名曲です。

その後ロジャーのハスキーボイスが光る『さまよい(Drowse)』を挟んで、ラストは日本のファンに向けたブライアン・メイ作の『手をとりあって(Teo Torriatte (Let Us Cling Together))』です。

クイーンが本国イギリスより先に日本で受け入れられたという経緯があることから、日本とは特別な関係にあるといえるでしょう。(日本庭園でもてなすVIPっぷりです。)

当時の来日武道館公演に行かれた方はとてもうらやましいです。

以上、フレディ作の曲が中心となってしまいましたが、やはりクイーンはフレディの存在がそれだけ大きいバンドと言えます。

また、曲単位の充実度で言えば前作を凌ぐと個人的に思っていますが、やはり『オペラ座の夜』はかの大名曲『ボヘミアン・ラプソディ』の存在が圧倒的に大きいのでしょう。

偉大な兄に隠れがちですが、クイーンファンの中でも評価が高く、初期様式美クイーンの終焉となる作品でもあります。

このアルバムのあとにバンドは、パンク・ロック、ニューウェーブ等の時代の移り変わりの試練に直面します。

しかし、その中でも試行錯誤し、時代に逆らわずに貪欲にあらゆるジャンルを取り入れ、うまく自分たちらしさを損なわずに昇華していきます。(一部実験的すぎる作品もありましたが...)

古いやり方に固執せず、積極的に挑戦を続けたからこそ、全世界で愛されるバンドとなったのではないでしょうか。

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