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人生を変えた名盤シリーズVol.10 『カリフォルニケイション』
「昔やんちゃだった人ほど落ち着くと渋さが増す」
第10回目は、「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」から、7作目の『カリフォルニケイション』です。
メンバーはアンソニー・キーディス(vocal)、フリー(bass)、ジョン・フルシアンテ(guiter)、チャド・スミス(drums)の黄金ラインナップです。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下レッチリ)は、1983年に結成し、1984年にデビューしました。ファンクやハードロック、ヒップホップなどを混ぜた、いわゆるミクスチャーロックに分類されるバンドです。
前々作の『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』が世界的に大ヒットし、バンドが勢いづいてきた最中、ギターのジョン・フルシアンテがツアー中に突如脱退してしまいます。
その後別のギタリストが加入し、6作目の『ワン・ホット・ミニット』を発表しますが、音楽性の違いからまたギタリストが抜けてしまいます。
今作は、再びジョン・フルシアンテがバンドに戻り発表された作品です。
曲目は以下の通り16曲です。
1.『アラウンド・ザ・ワールド』
2.『パラレルユニバース』
3.『スカーティッシュ』
4.『アザーサイド』
5.『ゲット・オン・トップ』
6.『カリフォルニケイション』
7.『イージリー』
8.『ポースリン』
9.『イミット・レマス』
10.『アイ・ライク・ダート』
11.『ディス・ベルベット・グローブ』
12.『セイヴィアー』
13.『パープル・ステイン』
14.『ラスト・オン・タイム』
15.『ロード・トリッピン』
16.『ゴング・リ』※日本版のみのボーナス・トラック
アルバムは全体的に以前の作品と比べて控えめなサウンドで、どこか哀愁を感じさせられます。
1曲目の『アラウンド・ザ・ワールド』にて、ジョン・フルシアンテのハードなリフから始まり、アンソニーのユニークなラップなど、いつものファンキーなレッチリサウンドでアルバムは幕を明けます。しかし、いつもと違いコーラス部がどこか影を感じさせます。
ちなみに、こちらの曲は映画『BECK』のオープニングテーマにもなっています。
続く2曲目「パラレル・ユニバース」もアップテンポが続きます。
しかし、3曲目「スカーティッシュ」で一転、肩の力が抜けたような耳障りの良いサウンドに変わります。このように幅広い曲調を演奏できるのが彼らの魅力ですね。
この曲はシングル・カットもされ、グラミー賞を獲得しています。
4曲目から再びアップテンポの曲調になってアルバムは展開していきますが、個人的に思い入れが強いのが、6曲目のアルバムタイトル曲『カリフォルニケイション』です。
ジョン・フルシアンテの静かなリフ、チャド・スミスの抑え気味なドラムが良い味を出しています。全体的に哀愁が漂う、これまでのレッチリとは違った大人の色味がある曲です。
また、自身がレッチリを知ったきっかけの曲でもあります。
大学生当時、友人の影響とロックスターへの憧れでタバコを吸い始めた頃、Zippoのライターを使っていました。
やがてZippoライターをカッコよく開ける方法を練習するようになり、Youtubeで海外のZippo使いの動画を観ていたら、たまたまそのBGMに『カリフォルニケイション』が流れていました。
すぐに夢中になり、中古CDショップにこのアルバムを買いにいきました。
青春時代の懐かしい思い出ですね。
思い出話はこの辺りにして、アルバムのレビューに戻りたいと思います。
その後もアルバムは静と動を繰り返し、油の乗った各メンバーの個性が存分に発揮され終演へと向かいます。
特に11曲目の『ディス・ベルベット・グローブ』は静と動のコントラストが強く、印象的な楽曲です。
ラストの曲『ロード・トリッピン』は、アコースティックギターをバックにしたドラムがないシンプルな構成ですが、壮厳さを感じさせるナンバーです。
ビートルズの名曲『エリナー・リグビー』に通じるものがあると思いました。
最後に、日本版にのみ収録されている16曲目の『ゴング・リ』ですが、これが個人的に非常にお気に入りの一曲で、レギュラーで収録されていても遜色ないと思っており、私の中で『カリフォルニケイション』はこの曲をもって幕を閉じるということになっています。ジョン・フルシアンテの多彩なリフメーカーとしてのセンスが垣間見れます。
アルバムを通じて、改めてジョン・フルシアンテはレッチリサウンドに欠かせない存在だと思いました。彼なくしては、レッチリと呼べないと言っても過言ではないのでしょうか。
薬物中毒に陥るなど、様々な問題を抱えてきましたが、そんな彼だからこそバンドに彩りと輝きを与えられるのでしょう。
彼らの現在ですが、2022年になって新作アルバムを2枚発表するなど、昨今の活躍がとても目覚ましいです。
一時代を築いた人たちが未だに一線で活躍し続けているのは非常に嬉しいですね。
これからも、彼らの留まることを知らない創作意欲から生まれる作品を楽しみにしていきたいです。