人生を変えた名盤シリーズvol.7 『Urban Hymns』
「どん底から何度でも這い上がる美学」
第7回目は、イギリスのロックバンド「The Verve」より、3作目の「Urban Hymns」です。
メンバーはリチャード・アシュクロフト(vocal)、ニック・マッケイブ(guitar)、サイモン・ジョーンズ(bass)、ピーター・サリスペリー(drums)、サイモン・トング(guitar)の5人体制です。
The Verveは1989年に結成し、1994年デビューした元々シューゲイザーやサイケデリック・ロックに影響を受けたバンドで、評論家からは評価されていたものの、今ひとつセールスに伸び悩んでいました。(シューゲイザーについては別の機会に語りたいと思います。)
そんな中、メンバー間の確執などの問題による解散の危機に発表されたのが今作であるブリット・ポップの傑作「Urban Hymns」です。
このアルバムは全英チャートで12週連続1位を獲得するなど、同バンドがどん底からの復活を果たし、彼らを一躍トップアーティストの座に君臨させることに貢献しました。また、同作は90年代当時降盛を極めたブリット・ポップの終焉を象徴するものとなっています。
主要な曲がいくつかありますが、まず1曲目の「Bitter Sweet Symphony」
この曲は彼らのアンセムであり、ブリット・ポップの代表曲と言っても決して過言ではないです。
冒頭からのストリングスは、彼らの新たな門出を象徴するかのような美しさで、初めて聴いたときはいつまでも耳に残り、頭から離れられませんでした。
ちなみに、このストリングスはローリング・ストーンズの「The Last Time」のオーケストラバージョンのものをサンプリングしたものとして、ストーンズ側のレコード会社に著作権問題で告訴され、同曲のクレジットを「ジャガー/リチャード」に変更したことは有名です。
また、リチャード・アシュクロフトが歩行者を避けることなく歩道を歩いていくPVも見ものです。(実際にこのような歩行者がいたらはた迷惑とは思いますが...)どんな困難にもめげず、自分たちの信念を貫き通す意思の強さといったものを感じ取れました。
次に彼らを語るのに外せない曲として挙げられるのが「The Drugs Don't Work」です。
同曲は彼らの唯一の全英1位を獲得しました。アコースティックなこのナンバーは、当時ドラッグに溺れていたリチャード・アシュクロフト自身のことを歌ったものであり、また、彼が11歳の時にがんで亡くなった父親に捧げた曲です。薬に頼って一時的な快楽に溺れて現実から目を逸らすのではなく、苦しくても前に進もうといった、前向きな気持ちを後押しする気持ちが伝わって来ます。
他にも「sonnet」や「Lucky man」といった、メロディアスな彼らの代表曲が収録されており、総合的に聞き所満載の内容となっています。
また、オアシスの2ndアルバム「モーニング・グローリー」の「キャスト・ノー・シャドウ」は、当時伸び悩んでいた彼らに捧げた曲であることも有名で、オアシスとはその後も交流があり、お互いに尊敬しあう存在です。
この作品を発表後に再び彼らは解散し、2007年に4枚目のアルバム「Forth〜再生」でまた復活しますが、その後3度目の解散をして現在に至ります。
何度も倒れては復活をするその姿は、まるで不死鳥のようです。
また、いつか彼らが素晴らしい作品を引っさげて舞い戻ってくることを心待ちにしています。