王道だけどちゃんと聴いてなかったシリーズVol.12『トランスフォーマー(Transformer)』
「完璧な日々を過ごすために②」
第12回目は、こちらも映画『PERFECT DAYS』で劇中歌として使用された「ルー・リード」のソロ2作目『トランスフォーマー(Transformer)』です。
「ルー・リード」は、1965年に結成された「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」のボーカル・ギタリストとして、同バンドを牽引してきました。1967年に発表されたデビューアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ(The Velvet Underground and Nico)』は、そのアヴァンギャルドな音楽性や「アンディ・ウォーホル」の有名なバナナのジャケットのデザインも相まって、現在では名盤として数え上げられています。
『トランスフォーマー(Transformer)』は、1970年にソロ活動を始めたルー・リードが、1972年に発表した2作目のアルバムで、「デヴィット・ボウイ」とそのパートナーである「ミック・ロンソン」との共同プロデュースの元に生み出されました。
曲目は以下の通り、全11曲です。(※は2002年にリマスターされた際に収録されたボーナス・トラック)
1.『ヴィシャス(Vicious)』
2.『アンディの胸(Andy's Chest)』
3.『パーフェクト・デイ(Perfect Day)』
4.『ハンギン・ラウンド(Hangin' Round)』
5.『ワイルド・サイドを歩け(Walk on the Wild Side)』
6.『メイキャップ(Make Up)』
7.『サテライト・オブ・ラブ(Satelite of Love)』
8.『ワゴンの車輪(Wagon Wheel)』
9.『ニューヨーク・テレフォン・カンヴァセイション(New York Telephone Conversation)』
10.『アイム・ソー・フリー(I'm So Free)』
11.『グッドナイト・レイディズ(Goodnight Ladies)』
※12.『ハンギン・ラウンド(アコースティック・デモ) (Hangin' Round (Acoustic Demo))』
※13.『パーフェクト・デイ(アコースティック・デモ) (Perfect Day (Acoustic Demo))』
早速ですが、こちらが映画『PERFECT DAYS』のタイトルにも取られた3曲目の『パーフェクト・デイ(Perfect Day)』です。
冒頭の切ないピアノのイントロが印象的で、その後ルー・リードがささやくように歌い上げていき、サビの部分でオーケストラをバックに盛り上がっていきます。
歌詞の内容は、リードの最初の妻である「ベティ」との関係について触れていると言われており、動物園や映画に行ったりと、何気ない日常こそが完璧な日であるとの趣旨を歌い上げています。
映画では、役所広司演じる平山が、自宅でゆったりと陽の光を浴びながらこの曲を聴いてる場面で流れており、世間の喧騒や過去のしがらみなどを離れ、まさに何気ない日常の小さな幸せを噛み締めているように思える印象的なシーンです。
続いてこちらは、5曲目の『ワイルド・サイドを歩け(Walk on the Wild Side)』です。
この曲は、小説家の「ネルソン・オルグレン」が1956年に著した『A Walk on the Wild Side』に影響を受けており、特徴的なグルーブ感のあるベースと抑えめのドラム、コーラスをバックにルー・リードが淡々と歌い上げていき、どちらかと言うと無骨な印象の曲調ですが、なぜか耳に残ります。
歌詞の内容は、短命破滅的な裏道の人生を生きる様々な人達を取り上げていて、それぞれに自分なりの美学があり、それを肯定するわけでも否定するわけでもなく、単にアイコンとしてそこに存在し、「ワイルド・サイド(裏道)を歩け」と囁く存在として取り扱っている点が、個人的に興味深いと感じた一曲です。
ちなみに同曲は後に「パーフェクト・デイ」と両A面シングルとしてカットされ、全英10位、ビルボード・ホット100の16位を記録し、リードの代表作となりました。
アルバム全体を通して、控えめで静かな曲調が多いかと思いきや、意外とポップでバラエティに富んだ内容になっている印象で、聴けば聴くほどルー・リードの世界観の広さと深さに引き込まれていきます。
ちなみに映画の『PERFECT DAYS』の方は、先日惜しくもアカデミー国際映画賞の受賞を逃しましたが、この映画がなければこちらのアルバムにも出会っていなかった可能性があるため、映画の制作に関わって下さった方々皆様に感謝を申し上げたいと思います。(ぜひ映画のサントラが出てほしいです。)