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【イベントレポート(前編)】~がんになっても誰もが自分らしく働ける社会を目指して~「がんとともに働く」ために大切なこと

働きながら治療をする病気へと変化してきているがん。

予期せぬライフイベントに直面することで、人は仕事と治療(療養)の両立についてどのような悩みや不安を抱えているのでしょうか?

今回私たちは、一般社団法人がんと働く応援団 理事の廣田さんをお招きし、「がんとともに働く」をテーマに対話を進めました。看護師とがん罹患者さんの対話サービスを提供する、TomopiiaのCNO(Chief  Nursing Officer)の十枝内(としない)がイベントの進行を務めました。

今回は初めての取り組みだったのですが、120名程の方にお申込み頂き、がん罹患者の方以外にも看護師さんやキャリアアドバイザーの方など多くの方に参加いただくことができました。セミナーの最中にたくさんのコメントやチャットを投稿いただき、想像以上の盛り上がりで、とても手ごたえのある、素晴らしい会になったと思います。
こちらでは、この会の様子をダイジェストでお伝えいたしますが、ぜひリンクのセミナーアーカイブもご覧いただいて、雰囲気を感じてみてください。
主催側がまだ慣れていないため、お聞き苦しい場面もあったかと思いますが、何とぞご容赦ください。

全3部構成で展開された本イベント。まずはTomopiiaの十枝内が「Tomopiiaの対話サービスで看護師に語られた思い」をテーマに、がん罹患者さんの悩みや不安の特徴・傾向についてお伝えします。
がんと診断された時期から退職して再就職を考えるまでの間に、どのようなことが頭をよぎるのか。Tomopiiaのユーザーさんが実際にお話になられた内容を、4つの時期に分けて考えてみました。

 WEBセミナーアーカイブ
※全編を動画で見たい方はこちらからご視聴ください。



Tomopiiaユーザーさんが抱える、仕事の悩み

十枝内:まず最初に訪れるのは、がんと診断されたばかりの時期です。多くの方が、頭が真っ白になったり、突然のことでショックを受けたりと、次から次に押し寄せる不安を体験されています。

突然のことにショックを受け、次々と不安が押し寄せてくる時期

手術にするのか抗がん剤にするのか、それともホルモン療法になるのかなど治療方針が確定していない方も多い時期です。焦って判断を急ぐのではなく、自分はいま何が心配なのかを、整理していくことが大切だと考えています。

十枝内:次の段階では治療方針が決まり、実際の治療が始まります。この時期では手術の内容や使用するお薬が具体的になり、先生からも色々な説明があると思います。
診断されたばかりの時よりも課題が少しずつ具体的になり、リアルな不安に直面して対処法を模索する時期でもあります。国が用意するさまざまな制度や社会資源についても、情報収集が必要な時期と言えるでしょう。

十枝内:こののちに、治療をしながら就業を再開することを考えなければならない時期が訪れます。中には治療が終わっている方もいらっしゃるでしょう。この時期は職場の就労環境によって、さまざまな問題が表面化してくることが多いようで、中には「会社に病気のことを伝えていたのに協力してもらえない」という悩みを抱える方もいらっしゃいました。

再開の方法も人それぞれで、実際に働きながら、手術の時だけちょっとお休みをしてお仕事に戻られる方もいれば、全ての治療が終わってから仕事に戻られる方もいらっしゃいます。

就業している業務、職場の就労環境によって様々な問題が表面化する時期

十枝内:Tomopiiaのユーザーさんが抱える悩みも人それぞれで、職場の病気に対する理解の有無によって問題も大きく変わるようです。

精神的につらくなってしまったり、まじめな方ほどご自身を追い込んでしまうことも多いようです。この時期には、一人で悩まず、誰かに話を聞いてもらうことも必要かもしれません。

チャットで参加された皆さんから頂いたコメント(抜粋):

  • 以前のキャリアを活かして働くことができるだろうか?

  • 治療しながら働ける職場はあるのだろうか?

  • 治療は終わったものの、再発すればまた辞めなくてはいけない?

十枝内:「働きたい」もしくは「働かなければならない」というプレッシャーを抱えつつも、「果たして本当に自分は働けるのだろうか……」と漠然とした不安を抱える方も多いですよね。
ご自身のこれまでのキャリアも大切にしつつ、ご自分の実際の体調を客観的に判断することも大切になると思います。

十枝内:ご自身の状況に合わせて、「どこに相談したらいいのか」「なにを確認したらいいのか」が分かっていると、少しだけ心は軽くなるかもしれません。

お友達や同僚、主治医の先生、病院の看護師さんにカウンセラーさん、話し相手には色々な選択肢があります。ご自分の思いを吐き出せる場として「がんと働く応援団」や「Tomopiia」もあります。選択肢の一つとして、私たちのサービスもあることを、頭の片隅に置いて思い出してくれると嬉しいです。

「がん治療と仕事の両立」が当たり前の社会を目指して

続いて第2部では、一般社団法人がんと働く応援団理事 キャリアコンサルタントの廣田純子さんに登壇していただきました。「働く人ががんになるということ」「自分らしい『働く』を見つけよう」をテーマにお伝えいただきました。

一般社団法人がんと働く応援団理事 
キャリアコンサルタント 廣田純子 氏
2012年に健康診断で再検査となり、経過観察を経た2014年に子宮頸がん告知。仕事を続けながら2度の手術を乗り切る。自身のがん経験の他、人事総務職としての様々な経験から、多様な人の活躍する組織、社会づくりへの課題感を持ち、2019年キャリアコンサルタントを取得。企業勤務とキャリア支援者の研鑽を重ね、2022年に一般社団法人がんと働く応援団の理事に就任。1級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー、両立支援コーディネーター



十枝内:廣田さんは「一般社団法人 がんと働く応援団」の理事で、2019年に国家資格であるキャリアコンサルタントの資格を取得され、以降、現役世代に向けた①がん教育 ②支援者育成 ③罹患者支援を通して、がん治療と仕事の両立が当たり前にできる社会を目指して活動をされています。

廣田:ご紹介ありがとうございます。では私からは「働く人ががんになるということ」をテーマにお話をさせて頂きたいと思います。まずは、働く人ががんになる確率についてです。

がんの統計2019」のデータによると、

  • 生涯でがんになる確率は「2人に1人」

  • 4人家族で誰もがんにならない確率は「10家族中1家族のみ」

  • 現役世代(15歳以上、64歳以下)が31%

という数字を確認できます。

理論上の単純計算ですが、なんと10家族中9家族ではどなたかが残念ながらがんになる可能性があるんですね。決して他人事とは言えない病気です。
廣田:次にお伝えしたいのが、「がんショック」という言葉です。これは、がんと告知された時にほぼ全員がなる心の動きです。

がん告知後は誰でも気分が落ち込みます。そこでまず覚えておいていただきたいのは、「ゆっくりと退職を進める」ということです。
がんは長く入院をして治療するものだというイメージもあると思いますが、20年前と比べ入院日数は約半分以下というデータ(出所:厚生労働省:患者調査)もございます。

入院と外来の比率を見ても、外来の方が大きく増えていますし、長いスパン治療・通院をしながら抗がん剤治療を受けているケースも多いとのデータもあります。
もちろん個別性がありますので、一人ひとりのより良い就労の形は異なりますが、治療が進化し、がんになっても社会復帰ができる時代になったと言えます。

廣田:改めて、皆さんにとって「働く」とは何でしょうか?

一人ひとり、その時々によって働く意味付けはまったく異なるはずです。お金を得られるものと捉える方もいれば、自分の能力を用いて社会へ貢献できると考える方もいます。時にはやりがいや生き甲斐を感じたり、誰かとつながりが生まれるものかもしれません。

がんに罹患した今の自分が「したいこと・できること・必要なこと」を整理して、がんになったあとの、今の自分らしい働き方を見つけること。
それを周囲に伝え、周囲が受け止めるといったコミュニケーションから、がんとともに働くことが始まります。

その際に患者自身だけで、もしくはご家族や職場だけでがんというライフイベントを乗り越えることは難しい場合があります。
そこで大切なのが「相談する」ということです。Tomopiiaさんをはじめ、様々な相談窓口がありますので、ぜひ活用いただきたいと思います。

たくさんの支援者がいることを、どうか忘れないでください。
がんを経験した方が生き生きと活躍できる。そんな社会を目指し、治療と仕事の両立の輪を一緒に広げていってくださったら嬉しいです。



記事の「後編」では、クロストーク「がん患者さんのゲストを招いて」をお届けします。


「がんと働く応援団」の相談方法

がんになっても誰もが自分らしく働ける社会を目指し、さまざまな活動をするのが「がんと働く応援団」です。
本人が正しく選択できる、正しく支援する専門家がいる。そういった仕組みが企業や職場で整うよう取り組んでおります。

現役世代のための青のがん防災マニュアル、そして経営者のための緑のがん防災マニュアルをお届けしています。ホームページでは青のがん防災マニュアルのPDFを無料でダウンロードいただけます。

企業や自治体のオリジナル版の作成、がん防災についてのセミナーなどを開催していますので、ぜひまずはホームページをご確認ください。

■がんと働く応援団HP
https://www.gh-ouendan.com/


「Tomopiia」のサービス紹介

Tomopiiaでは、がん患者さんと看護師さんが「LINEを活用してテキスト対話ができるサービス」を提供しています。イメージは文通です。眠れない時や復帰後に疲れた会社の帰り道、定期検査の結果を聞く不安がある時など、色々な場面で使われています。

サービスの流れは下記の通りです。

  1. まずはLINEの公式チャンネルにお友だち登録をお願いします。 https://www.tomopiia.com/(ホームページ内にリンクがあります)

  2. LINE登録後、案内に従ってお申し込みを済ませてください。

  3. LINE公式チャンネルは対話までの「待合室」になっています。担当看護師が決まり、対話を開始する際にはご案内をいたします。

病気の話だけではなく、皆さんが思い思いのお話をされています。(嬉しかったことや、ちょっとしたことも話題になっています)参加頂いた方々からは、文章として書き出すことで気持ちが整理できた、といったお話も伺っています。伝える内容はまとまっていなくても大丈夫です。担当の看護師さんに少しずつ自分の気持ちを書き出してみましょう。ちょっとした一歩で始めた看護師さんとの対話を通じてホッとしてもらえる、そんな場所になればと願っています。

■Tomopiia HP
https://www.tomopiia.com/


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