ROIを超えて経営に貢献する

情シスの流儀として投資効果を測る時にROI(Return on Investment)が使われます。会計学上のROIは利益を投資額で割って算出しますが、IT投資における利益とは、合理化効果で削減される時間に人月単価を掛け合わせた金額が便宜的に使われるケースがほとんどです。IT投資の費用は確実にP/Lにヒットしますが、合理化効果はその分の人がすぐに減るわけではないし、個々人の時間割で見れば、合理化効果で得られた時間は他の付加価値の高い本来業務に使われる訳で直接P/Lに表れないケースが多い。経営者がITの効果を実感出来ない、ITは金食い虫だと言われる理由はこの辺りにもあります。投資費用対効果を測る基準としてROIは一つの指標ですが、経営者の実感を上げるために私が心掛けているポイントをご紹介します。

何人にリーチできる?
例えば従業員が1,000人いる会社で、期間と費用が同じプロジェクトが2つあったとします。その時に私が聞く最初の質問は「何人にリーチできる?」という質問です。1つが10人の利用者にリーチ出来る、もう一つが従業員全員の1,000人にリーチ出来るとしましょう。その時にはリーチ出来る人数が多いプロジェクトを優先します。多くの人にリーチ出来る取り組みは、ITの進化による恩恵がより多くの人に届く。より多くの人が幸せを実感できる。より多くの人に私たちの愛を届ける事が出来るのです。

会社の意思決定を支えよう
見える化ダッシュボードやレポート作成、小さい所ではCSVでのデータ提供などなどデータの活用は情シスが力を入れるべき領域ですが、その一方で使われない帳票など、使われないシステムが大量に生まれるのもこの領域です。
多くの場合、重要な意思決定は重要な会議体で行われます。そこでの意思決定の精度を高めるための情報活用の高度化は直接経営貢献出来る領域です。各部門担当者からの要請による終わりのない帳票作りの手を止めて、重要な意思決定の瞬間に関わる情報に先ずは注力しましょう。意思決定の情報フローを描くと良いでしょう。

一番足の遅い子を支えよう
ザ・ゴールで有名になった制約条件理論。一番足の遅い子が転ばないように支える必要があります。会社のその時々に現れる経営課題。それは「足の遅い子」が起こす問題なのです。情シスはこの経営課題に常に先頭に立って取り組む必要があります。それが経営に参加する、という事です。今動いているプロジェクトを全て止めてでも、全員で「足の遅い子」を支える必要があります。役員会でホットな議題となっている「足の遅い子」問題つまり「会社の経営課題」を支える取り組みに中心となって参加する事、これが重要な視点です。事業部門が問題解決に向けて走ってる状況の中で、情シス部門だけが3年前の古新聞の様な中期経営計画に沿ってプロジェクトを進めている。事業とはライバルの出方で戦況が大きく変わります。目の前のゲーム状況に即した組織運営ができない部門は、同じフィールドに立つ事が許されません。

経営のアジェンダで語る
よく社外の方から「どのように説明すれば経営者にクラウドを理解してもらえますか?」と聞かれます。「クラウドを説明しない事です。」が私の答えです。経営のアジェンダ、例えば今期会社としてコミットしている内容や事業部門の主要取り組み課題、役員会で議論されるレベルの粒度の課題に対して情シス部門がどのように貢献するか、それをパワーポイントでなく、動くモデルとしてあたかも既にシステムが出来ているかの様にプレゼンすれば、経営者は直感的に判断し、ひざを乗り出して話しに乗ってくるでしょう。クラウドかどうかではなく、それだけのスピード感でアウトプットを出せるプラットフォームである事が重要なのです。経営者はITが経営にどう貢献出来るのかについては大変興味を持っています。自分が話したい話しをして、相手が理解してくれないと嘆いている人の実に多い事。相手が聞きたい話しをすれば良いだけなのです。


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