あなたは何が出来ますか?
転職者の面談において最もシンプルで本質的な質問です。
この答えにどのように答えるかがあなたがあなたをどう認識し、どのマーケットにどのようにポジションしようとしているのかが表れます。
私の場合は「日本企業がグローバル展開する際に遭遇する問題を予見し解決出来ます」と答えます。「ERPのグローバル導入」や「クラウドの導入」といった実績は、私の経験の一部ではあるけれど、それが「何ができるか」の答えではありません。生産システム、販売システム、物流システム、SCMシステム、会計システム、人事システム、ビジネスインテリジェンスシステム…など経験して来ましたが、それらの経験を通じて事業が直面する課題、特にグローバルに展開する際に生じる様々な課題に対して、「プロセス+IT」で解決をすること、これが私が選んだ職業です。このように定義すると、別に製造業でなくても良い訳ですし、特に業界にも依存しません。幅広い業界で食って行けるスキルを手にしているという自覚と自信を持っています。
以前知り合いから転職の相談を受けました。その人に「何が出来ますか?」と聞いたところ、答えは「プラズマテレビの設計ができます。」でした。プラズマテレビから各社撤退する中で、職探しは困難に思えましたが、よくよくこれまでの実績をお聞きすると、グローバルに分散した設計部門組織を効率よくマネジメントされておられました。何が出来るかという認識を、抽象度を上げ、プラズマテレビから離れて発想すると、極めて魅力的な人材像が浮かび上がりました。
松下電器産業に入社した当初、グローバル財務システム、グローバル連結経営管理システムのCOBOLバッチプログラムの運用を担当していました。財務会計の制度と仕組み、輸出入貿易の手続き、外国為替管理の実務、グローバル連結経営管理といった広範囲な業務プロセスをCOBOLで記述されたコードを通して深く理解する機会になりました。ここでの学びが、「日本企業がグローバル展開する際に遭遇する問題を予見し解決出来ます」という私のスキルの土台となっています。
1,000本を超える夜間バッチCOBOLプログラムの運用担当、これだけ聞くとちっとも魅力的な仕事に思えません。あの時、もし自分自身を「COBOLプログラマー」と定義していたら、私の人生は全く別の道を辿っていたでしょう。
人はどうしても目に見える「モノ」だけに着目してしまいます。抽象度を上げながら同時に解像度を高め、自分の歩んで来た道と今の仕事を見つめ直すと、自分のできる「コト」がキラキラと輝きながらあなたの手のひらに現れるのではないでしょうか。