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2016年トランプ市場の思い出 

トランプ大統領候補が狙撃されましたね。

いやはや、政治の世界はいつの時代も命懸け(?)です・・・。

私がマーケット(主に外国為替、海外金利)業務に従事した11年間を振り返り、記憶に残る相場は何かと問われると、一つは確実に2016年のマーケットを思い出します。
そう、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが争った、大統領選挙の年です。


2016年トランプ市場回想

私は2014-2015年の2年間、ゴールドマンのニューヨーク本社に外国為替営業として勤めていて、たっぷりウォール・ストリート(オフィスはバッテリー・パークでしたが)の空気を吸い、2016年から東京の別チーム(外貨債券デスク)に異動したタイミングでした。

社会人としても、6年目になりもう若手とは言えず、営業としての結果が問われ始めた、大事な年でもありました。

2016年は、6月にBrexit(*)と呼ばれる英国のEU離脱が決まるなど、世界情勢的に不安定な雰囲気が漂っており、11月に控えた米国大統領選挙も、
「まさかとは思うがトランプが当選しないよね?」
という感じでした。

ちなみに、ゴールドマンにはワシントン出身の政治アナリストチームがあり、彼らの見解はヒラリー・クリントンの勝利でした。(というか、トランプ勝利を予測していた金融機関や調査会社はほぼなかったと思います。)
私も、担当していたお客様(日本の大手金融機関)相手に、いかに民主党とヒラリー・クリントンの勝利が盤石であるか、日本出張に来た政治アナリストと共に説いて回りました。

開票当日の思い出

そして開票日の11月8日、マーケット関係者の多くは前日から徹夜で張り付き、開票動向を見守りました。それこそBloombergのニュースに張り付き、ネット上の開票メーターを複数同時に注視し、東京時間翌9日の朝方だったでしょうか、(記憶が曖昧ですが確か)フロリダ州が共和党の赤に染まった瞬間、全メーターが一気に赤色になり、トランプ勝利が濃厚になり、マーケットは大混乱となりました。

当時、万が一トランプが大統領になったら?という問いに対して一番出てくる答えは「Risk Off」でした。セオリーで言うと株価下落、金利低下です。トランプ勝利が濃厚になって以降、マーケット大荒れの中、お客様が大量の米国債を(金利低下を予想して)買いに来たこと、あまりに値が飛ぶので、ニューヨークとの電話取引もワンミス大損ですから、かつてない冷や汗をかいたこと、今でもありありと想い出します。

ちなみに、その日お客様が買った米国債が利益を出す日は、その後2年間ほど来ることはありませんでした。(その日が金利の底だったのです・・・。)
後から冷静にトランプが掲げていた政策を考えると、正解が株価上昇、金利上昇であったことは、今なら誰でも言えますが、当時はそれも、多くの人には分からなかったのです。

調査もメディアも政治のプロも、信用できない

その時、(知識としてはわかっていたけど肌で)改めて私が感じた、

  • 世論調査、全然信用できんな

  • メディアも、全然信用できん(偏向報道だ)な

  • 「政治の(ゴールドマンに務めるような)プロ」でも普通に間違うんだな

  • そもそもウォール・ストリートは民主党に献金してたしな

  • アメリカって全然一枚岩じゃないんだな

といったことは、今の自分の基礎的な価値観にも、大きく影響している気がします。

また、結局のところ、そのイベントによって「どうお金が動くのか」「誰が儲かるのか」が極めて大事であり、
金融機関に勤めていても(当たり前だが)そんな裏側の真実は全く見えないし、どれだけ技術が進んでも、それが透明化される時代は来ないのだろうな、
と、謎な無力感(?)を感じたことを、思い出します。

さて、今年の11月はどうなるでしょうか?

先日Bloombergの昔話を書きながら、飛び込んできたトランプ銃撃のニュースに、

ふと思い出した8年前のお話でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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