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新しい「産業金融」を考える
皆さんは「産業金融」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
端的に言えば、文字通り、
「金融が産業界に適切な資金供給を行い、産業の発展を支える役割を果たすこと」
です。
私が今取り組んでいる事業は、日本のエンタメ・コンテンツ産業に特化した、まさに"新たな時代"の「産業金融」の定着と発展が、大きなテーマの一つだったりします。
「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」
「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」というドキュメンタリー映画をご存知でしょうか?
現在の米国映画産業では一般的である「完成保証」や「プリセールス」といった手法を定着させ、合計900本もの映画プロジェクトの資金調達を融資等で支援した銀行家、Frans Afmanのドキュメンタリーです。
彼がいなければ、「キングコング」「ターミネーター」「プラトーン」といった名作も世に出ていないことを考えると、Frans Afmanはまさに米国映画産業における「産業金融」の一形態を確立させた金融マンの一人であると言えるでしょう。
このnoteはその仕組みをよくまとまっています。
さて、国も時代背景も全く異なりますが、
私が目指しているのは、まさにこのFrans Afmanが成し遂げたように、
「この仕組みがなかったらこの作品が生まれていなかった」
というようなキラー・コンテンツが、新しい金融の仕組みから生まれることに他なりません。
そんな産業への貢献ができるのであれば、まさに「金融マンの本懐」ですし、
今こそ、この領域に真正面からチャレンジする、またとないチャンスであると、私は考えています。
「産業金融」の担い手は誰なのか
「産業金融」などと聞くと、それはあたかも国が何かを支援することのように聞こえるかもしれませんが、それは「制度金融」という産業金融の一形態に過ぎません。
私は、産業金融こそ、民間金融が、その時代に応じて、形や手法を柔軟に変えていくべきものだと考えています。
さらにいうと、よく、
「スタートアップがその領域をやるのか」
と言われることがありますが、
私は、スタートアップのように不確実性にチャレンジする組織こそ、新しいアイディアとスピードの速さで、この領域の金融の一翼を担うべき、と信じています。
産業の動きが激しければ、資金需要や投融資のリスク、つまり必要な金融は、常に変化します。
エンタメ・コンテンツほど、その動きが激しい業界も珍しいです。
この領域は、常に、次の時代を担うコンテンツの制作とそれを担うクリエイター、そして柔軟な資金の出し手を求めています。
一方、既存の多くの金融機関は、構造的に(私が長らくその立場にいましたのでよくわかりますが、)不確実なリスクをとって新たな領域を攻めにくいもの。結果、知見が中々溜まりません。
今こそ、新しい「産業金融」の形を探そう
そんなエンタメ・コンテンツ業界の金融の仕組みですが、
過去を遡ると、日本でも、その領域に立ち向かった多くのコンテンツ業者や金融マンがいたことがわかります。
コンテンツ制作も、常に資金集めとの戦いだったわけです。
例えばアニメや映画、テレビ番組の制作に関していうと、今や日本ではスタンダードとなっている「製作委員会方式」などは、1990年代を皮切りに定着した、素晴らしい資金調達のスキームです。(こちらは事業者出資の任意組合なので、金融商品ではないですが。)
また、主に1990年代後半から2000年代前半、金融機関がコンテンツ制作の資金調達をファンド等でサポートしようと奮闘した時代もあります。
「ジャパン・デジタル・コンテンツ信託」などの試みは、その中でもとても画期的なものでした。(しかし、残念なことにこの信託会社は2009年に悲惨な倒産をします・・・そしてその後、多くの金融機関はこの領域をさらに攻めにくくなるのです。)
さて、今は2024年。
これから、5年、10年、日本にとって一層その重要性が増していく(と少なくとも私は確信している)エンタメ・コンテンツ産業を支える「産業金融」は、果たしてどのような形なのでしょうか。
一つ言えることは、今こそ、その答えについて、業界の垣根を越え、知恵を絞るべき時だ、ということでしょうか。
もちろん、私はその先頭を走る所存です!
最後までお読みいただきありがとうございました。