#読書感想文「クチコミデザイン」
いわゆる口コミとは、ユーザーから発信された商品への感想や批評のことで、バズるとはネットでのその口コミがたくさん起こってムーブメントとなることである。ただバズり方には一定の指標はないため、クライアントから求められた場合は、具体的に数値的な指標をすり合わせる必要がある。
クチコミマーケティングとは、ソーシャルメディア時代に沿った手法で、企業と生活者のコミュニケーションを、クチコミを軸としてトータルで設計したマーケティング思考のことである。一方的な宣伝ではなく、生活者の興味関心に対してアプローチするのだ。
クチコミマーケティングによって働きかけが行われたコミュニケーションは、ある時点からは何もせずともレバレッジがかかり、ひとりでに拡大していく。これは従来の広告・PRでは起こり得ない効果である。従来の広告・PRでは、企業側からユーザーへの一方通行のコミュニケーションであるため、働きかけが行われないと、コミュニケーションはみるみるうちに消滅していく。
また、この「ひとりでに拡大」するのは「キャズムを超え」た時に発生する。キャズムとは、直訳すると割れ目や溝。この溝は、5段階ある顧客モデル「イノベーター/アーリーアダプター/アーリーマジョリティ/レイトマジョリティ/ラガード」のうち、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に存在する。
つまり、クチコミのターゲットをアーリーマジョリティに設定することでキャズムを超えられ、コミュニケーションひとりでに拡大する「バズり」を生むことが可能となる。
アーリーマジョリティーは「クチコミのキーマン」と呼べる。
クチコミデザインでは、バズを生むための「仕掛け」と、その仕掛けを含めた情報発信のシステム「仕組み」を作る。
新商品やキャンペーンをデザインする場合、そのゴールとターゲット、期間をしっかり明確にした上で、その新商品やキャンペーンに関しての話題となるようなストーリーやエンタメを仕掛けとして作り、それをWebニュースやブログ、SNS、キュレーションサイト、メルマガなどの様々な媒体を掛け合わせて駆使してターゲットに届ける。この「仕掛け」の設計をする際、生活者のクチコミからインサイトを紐解き、クチコミに繋がる仕掛けを講じる。
仕組みについては、どのターゲットが、どういう媒体でクチコミを発信し、どうバズるのかまでこちら側で意図してデザインしている。そして、最初に設定したゴールを達成するのだ。
クチコミマーケティングというと、PRやただの話題作りにしか捉えられないかもしれないが、その実はマーケティングの本質を押さえたもので、
①企業の本質的なゴールを
②ターゲティングした生活者に対して
③生活者の口コミからインサイトを紐解き
④それを元に話題性の伴う仕掛けを作り
⑤適した媒体を駆使して届け
⑥そこで発生した口コミが口コミを呼んで拡大させることで
⑦達成させるものである
本書で度々出てくる「NAVERまとめ」は現在ではもう無くなってるサービスであるというのも興味深い。めまぐるしく変化するネットの業界で、新しく出来たり流行るサービスに対して迅速に対応できるよう、日頃から情報収集もしっかり行っていきたい。