新しいジブン〜随筆

「顔というもの」


お土産店の民芸品や地域の物産店などに、お面が売っていたりする。

狐や犬、猫、翁など様々な顔だ。

お祭りで売っている戦隊ヒーローやアニメキャラのプラスチックと違って、
よく作り込んでいる。

とりわけ印象が深いのが般若だ。

般若は、怒り、憎しみ、嫉妬、悲しみだけに囚われ、
鬼になってしまった女性の顔を表している。

おまけに眉間にシワが寄り、眉と目は釣り上がり、頬は痩せこけ、青白くなっている。
負の感情は凄まじいものだとうかがえる。

能の世界では、しばしば悪霊や魔物として登場しており、
芸術の世界でも、それは立派な表現手段としてある。

能の面というのは、上を向けば笑顔に見え、下を向けば泣いているように見える。

般若の面も同じ表現をするが、やはり下を向いている場面がほとんどだ。

これは、私達人間も同じである。

怒りや憎しみといった負の感情は、完全に消すことはできないものだが、
笑えない時は、誰かと比べるのではなく、
少しだけ顔を上げると良いのではないかという気がする。

日常で仮面はいらないのだ。

人々の姿は、そのままの顔が一番美しい。