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まるで時間を吸い取ってしまうような、東京の日々

東京にいると、時間が吸い取られてどこかに消えてしまったようだ、と感じる夜がある。

それは別に、ほんの少しのこと。たとえば、駅に着いたのに、駅から出るまでに結局5分かかっているとか、移動するだけで45分も経っていた、とか。

あとは、そうだなぁ。

カフェに入ったら満席で、席を探しても全然見つけられなくて、近隣のほかのカフェを探して、やっぱりさっぱり見当たらないし、なんかもういいかぁ、みたいな気持ちになってしまうとき。

誰かに会いたくて街に出たのに、その誰かが誰なのかがわからなくて、寂しさを埋めるようにLINEを上からなぞる。適当な連絡をして、会えることになったはいいものの、「やっぱり違うな」の感情を見過ごせない。

目的はあるはずなのに、目的をちゃんと掴みきれない。

東京にはそんな風に、数メートル先をぼやかしてしまう瞬間が、散りばめられているように感じられる季節がたしかに在って。

それが、私の隠れ蓑になっているときもきちんとある。

何か急いでいるように見せて、本当は急いでいないこと。頬が上気しているように見せかけて、内心早く帰りたくてたまらない気持ちでいたりすること。

誰もが早足で通り過ぎてくこの街は、心底では私のことなんて誰も気にしていないんだから。けれどお願い、あなただけは振り向いて。

冬は、いろんなことを思い出す。頭の中を、たくさんの声が抜けてゆく。

一年の総計だ、なんて言わないで。もう1年が経ってしまうの。

別に何も落ち込んでいるわけではなくて、こうやって思考の上澄みみたいなものを、書き留めて記してゆくこと。それ自体が心を鎮める行為であること。

「切なさ」という感情は、やっぱり、私にとっての前に進む原動力なのだ、と気づく12月の晴れた日。ちょっぴり変に聞こえるかもしれないけれど。

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伊佐 知美
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