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マルタ共和国に、おはようを【#マルタ語学留学3weeks】

目が覚めたら、まず窓を開ける。どんなに眠る場所が変わっても、1日の最初に行う、私の人生における数少ない習慣のひとつ。

蹴伸びをして、薄茶色の木に金の飾りがついたドアをキィ、と音を小さく立てて、身ひとつ分だけ、また開ける。何かを開くと、新しい風が入ってくるのは世の常っぽくて、なんだかいいな、と私は想う。

ドアの向こうには、フラットメイトが共用で使う、銀色のステンレスが光るキッチンがそっと佇む。歩幅にしたら、ベッドからキッチンまで10,11歩くらいだろうか。戸棚を開けて小鍋を取り出し、片手で支え、水道をキュッとひねって、水を溜める。

まだこのフラットには、やかんや電気ケトルがない。8人も暮らせる上、毎週生徒が入学したり卒業したり、とにかく入れ替わりは激しいのだから、誰かがどこかで導入したらいいのに。

……ってきっとみんな、こんな風に思い続けて今日までこうやってきてしまったのだろう。もしかしたら、私が導入するべき人物だろうか? とふと考えたりしながら、私は小鍋を火にかけて、今度はくるり、と踵を返す。

キッチンからもう10,11歩ほど移動をしたら、今度は洗面台のある小部屋が現れる。やはり薄茶色の木に金色の飾りが付いたドアを、キイイ、と音を立てつつこっそり開ける。

時刻はまだ6時半。フラットメイトたちは、きっと未だよく眠っていて、私は彼女たちを起こしたくない。

そっと蛇口をひねって、顔を洗って、歯を磨く。そろそろお湯が沸いた頃だろうか、とキッチンに戻って紅茶を淹れて、ふぅ、と深呼吸して、このあたりで採れたというベリーをかじりながら、少しだけ仕事をする。

マルタの朝

マルタでの毎日は、そうゆうふうに始まってゆく。

フラットを出て、今日も空が晴れ渡っていることを確認して、世界各国、たとえばブラジルとか、コロンビアとか、ロシアとか、ドイツとか、フランスとか。そういった国々から、ともに英語を習おうと考えてここに集った「多種多様な生徒たち」と、足並みそろえて9:00からの授業に向かう。

学校の門の向こうの向こう側には、遠く青い海が見える。波はまだない。こちらに到着してから数日が経つ。けれど私は、まだこの国で大きな波を見ていない。凪。

遺跡のような語学学校。7-8人のグループレッスンの教室の廊下を、この敷地で暮らす猫たちが、ゆったり、のっそりと通り過ぎてゆく。時折こちらをチラと見たと思ったら、何事もなかったかのようにまた歩く。

語学学校「シュプラッハカフェ」の校舎廊下にて

その向こうにはビストロ、とみんなが呼ぶカフェ兼レストランが、その隣にはみながくつろぐテラスが、そしてそのもっと向こう側には、昼休み以降ともなれば、晴れた日に水球大会が行われちゃったりするようなプールが在る。

英語を学ぶ教室と、私が暮らすフラットが入る建物。私の毎日はここで行われている

そのかたわらにはたくさんのプールサイドチェアー、学内の端っこには、ビーチバレーが楽しめる簡易的な砂浜だとか、日々の夕刻以降をいかに楽しむか?を提案し続けてくれるアクティビティオフィスがあったりだとか、現実味溢れるけれど洗濯機とか乾燥機とか。そうゆうものを並べてくれているランドリールームがあったりする。

毎日はそうゆう風に進んでゆく。マルタでの日々、日常、英語を学ぶ時間、生徒でいること、あなたから離れて暮らしてしまうこと。

さみしい、けれど必要だと感じている経験。磨くこと、進むこと、人生で温めたいことに、もう一度だけ大人になってチャレンジしてみることを決めたこと、サポートしてくれる人がいること、見つめてくれる人たちへの愛情。

2カ国目の語学留学。まるで夢の中にいるような。けれど思うように英語が口をついて出てこない現実に頻繁に絶望したり。このコントラスト、なかなかの。

こんな感じで、歩いている。いま、日本から遠く離れた地中海の小さな島、マルタ。イタリアだって、クロアチアだって、エジプトだってチュニジアだって。すぐ着いてしまう、そんな場所で。毎日「絵のような美しさだ」と心打たれながら。あなたから遠く離れた、この島の丘の上での日々。

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伊佐 知美
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