空から降ってきた言葉を、ただ綴る夜も悪くはない
手放そうと思ったわけではなく、受け渡したい、と思っていた。考え始めたのはずっとずっと前で、言い出したのはたしか2017年の秋だった。月日は流れる。それを捕まえてくれたのはみんなだった。
居場所を創りたい、と彼は言った。そのとおりになっている、と私は思う。そこに甘んじていいのか、と彼女は言う。それでも私はここに居たい、と応えていた。
そうなのか?と自問自答する。私は別にここにいなくてよくて。誓ったところでその約束は破れるのだ。であれば私は、一体何を。信じたらよかったのか。
とか言いながら、私は彼の傍を離れようと思った試しがない。正確にいえば考えたことはあるけれど、決意した記憶はない。
なにの話をしているのかと聞かれても、別に今はなにの話もしたくない。いろんな話を混ぜてするから、私はいつもなにも言わない。
どこへ行ってもいい、行かなくてもいい。その自由の享受のしすぎは、きっと不幸になるだけだと2016年から知っていた。きっとみんなは、もっと前から知っていた、はず。
お酒が入るのはよくない。飲み過ぎは眠れませんよとまいちゃんは言う。月がきれいな夜は過ぎて、桜のピークも過ぎたであろう。春は爛漫を迎え、新緑の季節を過ぎ、夏の前に梅雨の季節が来る頃には、私はもう日本にいないだろうと思っている。
どこへ行くのかは知らない。どこでもよかった。呼ばれた場所へ、行こうと思った。呼ばれなければ、ふらりくらり、風が吹いた方向へ。英語が言語でない国のほうが、なにの形容も出来ないし聞こえないから、よいかもしれないと今夜は思う。
「愛しているの響きが届かないなら、私たちはなにの言葉で、あなたにこれを伝えれば」と、空から音が降ってくる。
誰に対して、いつ想ったことなのかもう覚えていなかった。今はただ、春の季節が気持ちいいなと思いながら、今まで通り誰のことも。このまままっすぐゆったり、揺られていたいと決める。
いつも遊びにきてくださって、ありがとうございます。サポート、とても励まされます。