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大集団セッション、どうしてる?
音楽療法士の仕事をしていると、
「個人セッションや小集団セッションが理想なんだけど……」
というセラピストの意向はなんのその、
「20人のクラスをお願いします」
「フロア全員で50人くらいなんです」
など、大集団セッションのオーダーがくることって、多くないですか?
学生のときの実習や施設への訪問セッションは、ほとんどが大集団セッションかもしれないですね。
私の元に見学に来てくれる学生さんや若手音楽療法士さんからも、よく質問や相談を受けます。
人数が多いと、いろいろ難しいですよね。
そこで、今回は、大集団セッションのプログラムの立て方や進め方について考えていきます!
大集団セッションの難しポイントを考える
①いろいろな人がいる
この一言に尽きる!といえばそれまでですが、どんな領域にしても、とにかくこれがセラピストの頭を抱えさせます。
まずは、この「いろいろ」を整理しましょう。
・年齢
人数が多ければ、年齢がいろいろ。
例えば、私が行っている、とある児童発達支援センターでは、約30人を対象にセッションをしていますが、クライエントの年齢は2~6歳。
幼児期の4歳差って、結構幅広いです。
高齢者施設では、若い方は60代、最高齢は100歳越え!!なんてこと、普通にありますよね?
障がい者施設に至っては、高校卒業後の年齢18歳以上は全員大人!
高齢になってもそのまま通所(入所)しているので、10代と80代が同じグループにいる、ってこともあります。
・病気や障害の種類や現状
これはすべての領域共通ですが、1人1人の病気や障害の種類がいろいろ……。
たとえ診断が同じだとしても、症状もADLもいろいろ………。
一口に「認知症」と言ったって、高齢者施設にいらっしゃる方は大半がそうです。
「自閉スペクトラム症」と言っても、なんせスペクトラムなので、本当に十人十色。
もう大変!困ったもんです!!
②プログラムの立て方
いろいろな人がいると、なぜ難しいのか。
「プログラムをどこに合わせたらいいのかわからないから!」
最初のお悩みポイントはここです。
・選曲
まずは選曲。
年齢がさまざまだと曲の好みやヒット曲の年代も幅広いですよね。
毎回、あーでもないこーでもない、と悩むセラピストさんも多いんじゃないでしょうか?
・活動の難易度
続いて、ADLや発達年齢がさまざまだと、活動の難易度をどのくらいに設定するかも悩みどころ。
Aさんに合わせたらBさんには難しすぎるし、Bさんに合わせたらAさんには簡単すぎる……なんてことを考えてたら、大集団セッションだとキリがなくて途方に暮れます。
③セッションの進め方
頭を捻ってプログラムを決め、迎えたセッション当日。
人数や状況にもよりますが、始まりから終わりまで、段取りやトークや目配り……とにかく必死で消費エネルギー半端ない!ってことになりませんか?
そして、終わってからの記録や反省が多すぎる。
多すぎる割に、とにかく必死だったから全部は思い出せない……。
あぁ、だから大集団セッションは難しいんだよぉ。
最大公約数のプログラムを立てる
「最大公約数のプログラムを立てなさい」
これは、恩師から教わった大切な言葉です。
【最大公約数のプログラム】とはなんでしょうか?
それは、すべてのプログラムを通して、満遍なくすべてのクライエントのニーズに合うポイントが散りばめられているプログラムです。
例えば、始まりから終わりまで45分のセッションだとすると、クライエント1人1人が、少なくとも足して20~25分くらいは、楽しんで能動的に参加できるように配慮して組み立てます。
具体的に私がプログラムを立てるときに気をつけていることを紹介します!
・幅広い選曲
みんながよく知っている既成曲(歌謡曲・童謡・アニメソングなど)の選曲は、年代や好みによるものが偏らないようにします。
もちろん、事前にクライエントからのリクエストも聴取して参考にしながら選曲します。
また、クライエントからのマニアックすぎるリクエストに応えるアイデアとして、お誕生日が近いセッションのときに、みんなでお祝いしながらその曲を楽しむ、ということもしています。
それから、どの領域のセッションにも、一般的な既成曲のみでなく【音楽療法のための曲集から】【自作曲】【即興】など、みんなが共通して予備知識なく活動できる曲を組み込むようにしています。
このときに気を付けることは、使用する曲をセラピスト自身がしっかり自分に落とし込んでいくこと。
なんとなーく「この曲使ってみよっかなー?」では、クライエントの良い反応は期待できません。
メロディーも歌詞もしっかり覚える。
クライエントの反応を促すために、ここでrit.をかけて、様子を見ながらフェルマータ。
うまくいったらここに戻って繰り返す、反応がイマイチだったら、ここまでで一旦止める。
など、細かい段取りを全部イメージしてから、堂々と使用することで、クライエントは知らない曲でも、引き込まれて参加できることが多いです。
ちなみに、初めての曲を使用するときには、当然「ポカン」とされることもあります。笑
でも、こちらが【使用する意図】と【今後のビジョン】をしっかり持って使用できているなら、少なくとも3回は繰り返してみましょう。
私は、1回のセッションで2~3回繰り返し、定着するまで毎回のセッションに組み込みます。
クライエントのインプット期間というのは、結構長く、ある日突然、アウトプットしてくるということがよくあります。
ただし、よかれと思って取り入れたのに、何回かやっても箸にも棒にもかからないようなときは、策を練り直すことも必要です。
そんなときもあります。
この見極めは経験を積み重ねるしかないと思いますが、経験を重ねていても迷うところです。
・活動の難易度
次に、活動の難易度について。
これは、1つの活動そのものの難易度も、もちろんあるのですが、活動毎に【初級】→【中級】→【上級】と段々レベルアップするように進めていくように心掛けています。
例えば、【音楽に合わせて身体を動かす活動】をするとします。
①ゆっくり丁寧に動きを説明しながら、1つずつ区切ってする【超初級】
②ゆっくりのテンポで音楽に合わせながらする【初級】
③様子を見ながら少しずつテンポをあげていく【初級~中級】
④その活動の標準のテンポでする【中級】
⑤ちょっと速めのテンポにチャレンジタイムを作る【上級】
これは一例ですが、このように、1つの活動の中で、ずっと「簡単すぎてつまらない」とか「難しすぎてできない」とか思い続けるのではなく、どこかの段階で「やってみよう!」や「できた!!」を感じられるポイントを作っておくのです。
それはつまり、セラピスト側から見た臨床目標に対しても1人1人にピントが合うポイントができる、ということです。
難易度の調整は、進め方の段階を経る方法だけでなく、【クライエントによって関わり方や声のかけ方を変える】【ADLに合わせた楽器を選んで渡す】など、さまざまな工夫ができます。
みんなを巻き込んで目と手を借りる
現場の職員さんに協力してもらうには
大集団のセッションは、どうしても音楽療法士だけでは大変です。
現場によって必要なサポートは異なりますが、私が職員さんにお願いしていることは、次のようなことです。
・プログラムを渡して、クライエントの反応や全体の様子を記録
・楽器や歌詞カードの配布や回収
・特に支援が必要なクライエントの横についてサポート
・歌詞幕を指し棒で追う
現場によっては、忙しくてサポートが手薄になることも多々あると思いますが、「どういうサポートが必要」という話は、最初の契約時にきちんと伝えておくといいと思います。
最初からお願いしておくことで【音楽療法のときの仕事】として、当たり前に定着させていただけることが多いからです。
記録に関しては、あとから自分でも書きますが、職員さん目線での記録は、とても役立ち助かります。
「こんなことお願いしたら悪いかな?」
「忙しそうだし無理だろうな…」
と躊躇せずに、まずはなんでもお願いしてみるといいですよ!
もちろん、いろんな現場があるので、協力してくださる度合いは違います。
しかし、どの現場でもできる限りのコミュニケーションを取って、良好な関係を築くことを大切にしていくと、セッションのしやすさが変わってくると思います!
今回は、大集団セッションについて考えてみました。
やり方も難しいし、療法的な目標や評価も難しいですが、レクリエーションとの違いを明確にして、音楽療法士としてプロの仕事をしたいですね!