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UVI『Tape Suite』プラグイン、ワイならマスタリングでこう使うで
先日藤本健さんのこの記事を目にした人も多いと思いますが、UVI社からリリースされた『Tape Suite』プラグインを購入しました。
プラグインの詳しい概要は藤本さんの記事とオフィシャルサイトを見てくれってばよってわけなんですが、「Tape Delay」「Tape Flanger」「Tape Chorus」「Tape Color」の4つのプラグインがバンドルされたお品になっています。で、こちらをデモしてみると(付き合ってもいいかも……。)となったので、実際にどんな付き合い方をしているかを今日はご紹介します。
使用するのはマスタリングなわけで
前述のとおり「Tape Delay」「Tape Flanger」「Tape Chorus」「Tape Color」4つのプラグインが付属しているのですが、使用するのはマスタリング用途なわけなのでここでの話は音色調整特化のプラグイン「Tape Color」の使用のみに限定します。
とりあえず最初にやることは
ぼくの場合、新しいプラグインをデモするときに最初にやることは、プラグインはインサートするけど、OFFれるパラメーターはぜんぶOFFったりゼロにしたりして、そのプラグイン自体の持つ音色変化を確認します。
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この変化はそのプラグインを使う際に不可避ということになるので、この変化が気に入らなければ何するにもその子は非常に使いづらい。結構あるのよね、インサートだけで上下とか左右が狭くなること。で、実際に「Tape Color」でやってみると、そもそも音量が3dBくらい下がるねん。なんでや!マスタリングで使うような設計ではないとは言える。まあ自分はあまり気にしない。というわけで「gain out」を3dBちょっと上げておく。
肝心なインサートしただけの音色変化は、けっこう大きいね。ペン先が小慣れた「お名前ペン」くらいの太さのペンで音像の輪郭を縁取ったような太さは得られるが、同時にちょっと大味になって細かい描写は少し見えづらくなったとも言える。でもテープシュミレーターによくある「ジワァッと輪郭がにじむ」ような音像変化じゃないのが「Tape Color」タンの気に入ったところ。
この変化のクセはよーーーく掴んでおく。そしてこの変化が必要じゃない場合は「Tape Color」に手は出さないということが大事。
そもそも「Tape Color」に求める役割は
そもそも自分の場合「Tape Color」タンに求める役割は、主旋律を担う楽器がストリングスとかプラックとかマレットだったりで、でもちょっと「線が細いなあ」とか「主張が弱いなあ」と感じられるときの処方箋といったところ。音の立ち上がりがちょっとなまって太さが得られればオッケー。歌ものや音数の多いポップスはほぼ想定していない(かったのだけど、ジャズボーカルの楽曲で実際に何曲か使っちゃった)。ワンポイントリリーフなのです。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/147497049/picture_pc_a243528dae7602271ca37a5dc673383d.png?width=1200)
基本、操作するのは中央のメインパラメーターではなく下のとこ。
1番右から『modulations』
ここは名前のとおりモジュレーションでうねうねしたりするので無視。バイパスします。
右から2番目『playback filtering』
ここの結果が面白かった!
ここをオンにすると、基本的にハイが減ってローが増える。変化が大きいので、「speed」は最大の130%、「spacing」「thickness」「azimuth」はゼロ、「width」は最大の100にして、ハイをもっと落ち着かせたければ「speed」を、ローを減らしたければ「width」を減らしてバランスを取る。
なにが面白かったかというと、基本的にハイ落ちする方向の変化なのだけど、(パラメーターをやりすぎなければ)こもった感じは少なくて、プラグインをバイパスして元音源と比較すると元音源がピーキーに感じられることがあったこと。製品紹介文に「テープの自然なサウンド」とあってなんのこっちゃと思っていたけど、「これのことか!」と膝を叩きました。
右から3番目『compander』
は、アナログテープで録音するときに切り離せない問題、サーっというヒスノイズを抑えるために使用することがある「ノイズリダクションシステム」によるトーン変化のシミュレーション。これはオンにすると音が明るくなる方向の変化でここでは求めてないのでバイパス。
1番左の『tape simulation』
これが指しているのはテープ自体の物理的な特徴や状態のシミュレーションの様子。「material」はローのロールオフやたぶん過度特性も変化している様子なのでゼロを基準にちょっとずつ上げてみて、ハマらなければバイパスでオッケー。「degrade」は音量がうねるので基本ゼロで〜。
肝心のセンターセクションは……。
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左の『gain in』と『drive』
すでにここまででだいぶ濃い味なので、基本はゼロにて候。
来たよ!真ん中の『texture』と『speaker』
ごめんな、「speaker」はバイパス。
『texture』はノイズを混ぜ込んで全体の質感を変化させる。んだけども「level」をしぼり切っても-50dBぐらいの音量でノイズが鳴るのでシンプルにS/Nがあれになっちゃう。音の無いところでノイズを吐くのをやめるゲート機能はあるのだけど。ここの「level」が無音までしぼり切れるアップデートを希望して候。
数あるノイズの中で面白かったのは「vinyl 3」。逆相成分のノイズになっていてこれをオンにすると広がりが増して聴こえる。ただこれも「vinyl」なので「パチパチ」ノイズが乗っちゃう。クラックルノイズも独立してレベルを下げられるようにアップデートを希望して候。
ほとんどの場合まだ味濃いはずなので
たぶんわるい感じには感じられないのだけど、冷静になるとだいぶ味付けが濃いはずなので「mix」または「amount」を下げて調整をする。先の「texture」のノイズレベルも下がるのでまたよし。
UVI『Tape Suite』プラグイン、ワイならマスタリングでこう使うででした
今回はマスタリング用途に限ってしまったので『Tape Suite』の可能性をめちゃめちゃ狭めてしまったのだけど、ここに書いたのは『Tape Suite』タンの上っ面だけなので、みなさんにおかれましてはもっと深くお付き合いなされることをおすすめしたく存じ奉り候。
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[根本"マッシュ"智視(ねもとともみ)]
サイデラ・マスタリングのチーフマスタリングエンジニア。 マスタリングのモットーは、『美しい音色であること』『音楽のリズムを引き出すこと』『いまこの時代にしか作り出せないサウンドであること』を軸に、常にクライアントの想像の2歩、3歩先をゆくサウンドを提供すること。
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