51.よし川を渡ろう

家のそばには大きな小矢部川が流れています。

現在は堤防はコンクリートで固められ、容易に川に入れませんが、私が子供の頃は河原には石がゴロゴロとあり、夏になると水辺で沢山の子供たちが遊んでいました。でも川の真ん中あたりは流れも強く深めなので、皆行きませんでした。

4年生のある日、お友達のえみちゃんと川の向こう側に遊びに行き、帰りに河原にいきました。川を眺めていたら、2人とも今日は水がやけに少ないことに気がつきました。

「橋まで行くの遠いよね」「渡ったら私たちの家はすぐそこだよね」「すご〜く近いよね」

「よし、川を渡ろう」

2人でどの石を飛ぶかシュミレーシヨンして、濡れないで楽勝で行ける確信をしました。えみちゃんが先で、その後を私が続きました。

始めは順調でしたが、川の真ん中に差し掛かる少し前に、思ったより流れが早くて、石に生えたコケがツルツル滑ることが判明しました。もう泣きそうになりました。もう振り返っても戻るには既に遠く、頑張ってゆっくりゆっくり進みました。2回ほど転んでびしょ濡れになりました。えみちゃんもスカートが濡れていました。

どうにかこうにか渡ったけど、ずいぶん時間がかかりました。恐怖と闘い、びしょ濡れ。もう疲労こんぱいでした。もう薄暗くなっていて私たちは言葉少なに別れました。

急がば回れという言葉を耳にする時、必ず思い出すちょっと苦いひとコマです。

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