花あれば、心躍る⑥
やがて、くもは消え、太陽が さんさんと 二人を照らし始め、 ぬかるんでいた 足元も だいぶ 固まってきました。
女の子は、「わたし、もうそろそろ行かなくちゃ。」と言って、
コウヤくんに 手を差し出して、二人は 最後に笑顔で 握手をしました。
「元気でね。またいつか会おうね。」とコウヤくんは 去っていく女の子の背中に向かって 叫びました。
女の子は 振返らずに まっすぐに 歩いていきました。
女の子の足取りは 軽くしなやかに、 その後ろ姿は とても りりしくて まるで竹のような しなやかさと 強さを 感じさせます。
コウヤくんも 少し寂しそうに 女の子の後ろ姿を チラチラ見ながら、一歩一歩 歩き出しはじめました。
コウヤくんは ポケットにいれた赤い果物を 少しずつ食べながら 歩いていくと だんだん からだ全体が ポカポカしてきて 元気が出てきました。
コウヤくんは しばらく 歩いていると 落ちている鏡を 見つけました。
コウヤくんは 鏡をひろって 自分の姿を のぞきこむと そこには 泥まみれになった鎧をつけている 自分の姿が 映っていました。
「もうこんなのいらないや。えいっ!」と言って コウヤくんは 鎧を脱ぐと からだがとても 軽くなり 涼しい風を感じることもできて とても すっきりしました。
その瞬間に、コウヤくんが持っていた地図に 少しだけ 道が浮かび上がりました。
コウヤくんは 地図を一人で見つめて ただただ 笑っていました。
そして 地図が示す方向へ 力強く 一歩一歩 歩き出しました。