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計画的に人口減少を迎えるために

2021.07.20 上椎葉福寿会様向けプレゼン資料 
椎葉村の中心部である上椎葉地区の上椎葉福寿会の皆様向けにプレゼンを行った内容をまとめた記事です。

※今回は一方的なプレゼン形式ではなく、聞いてくださった方の率直な意見やアンケートも取りながら行いました。後半に掲載していますので、ご覧いただければ幸いです。

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今日は貴重な機会を頂き、本当にありがとうございます。

まず初めに簡単に自己紹介をさせていだきます。私は今小崎の竹の枝尾の日当に住んでおります。今年で移住5年目となりました。息子はおかげ様ですくすくと育ち、来年小学1年生になります。

(七五三のお祝いも上椎葉にある厳島神社でしました!)

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本日は、避けては通れない「人口減少」に対して、「どうしようもない問題」という捉え方ではなく、「人口減少をどう迎えるのか」という発想の転換をして、今何ができるかを皆様と一緒に考えていきたいと思います。

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まず初めに、椎葉村の人口減少の実態についてみていきたいと思います。

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左側は2020年の椎葉村の人口です。

15~19歳の人口が極端に少ない特徴的な人口グラフとなっています。これは皆様ご承知の通り、高校進学とともに椎葉を離れるからです。

2020年現在2679名の人口は、一見するとあまり変わらないようにも見えますが、右の図、2040年には半数以下の1191名となります。


今日はもう少しスモールでローカルな視点で考えていきたいと思います。私が住んでいる小崎地区の人口を見てみましょう。

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令和2年10月現在の人口は、209名。そのうち集落維持活動の中心となる世代である15~64歳は92名です。


2040年の予想では…

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小崎地区の人口は約半分の100名。そのうち集落維持活動を中心的に行う世代の人数はなんと24名となります。(約3分の1になってしまう)


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もう少し先のデータを見てみると、40年後の2060年にはなんと32名という予測が出ていました。


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調べてみるとさらに衝撃的なデータも…

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こちらに出ている集落は、消滅の予測が出ていました。(引用:全国小地域別将来人口推移システム

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正直、私は「消滅するする」と言っても、「そう簡単には消滅しない」とどこかで思っていました。しかし、この集落の名前を見ると、どこの集落も人口が少なく、現実を突きつけられた気持ちになりました。

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(引用:集落「限界化」のプロセス 小田切 徳美(2009)『農村再生ー「限界集落」問題を超えて』岩波ブックレット)

人口がどんどん減り、集落維持活動ができなくなると、「臨界点」を境に一気に消滅に向かっていきます。「臨界点」なのかは集落ごとの事情に左右されるため、一概には言えません。

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先ほどの2060年の予想が現実になるとしたら…

消滅していないにしても32人で小崎地区全体の維持活動なんかできるはずがないと思いませんか?

客観的にデータを見ると、明らかに大変になることがわかりますが、なぜここまで深刻になったのか。それまでに気づくことができなかったのか、という疑問が残ります。

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私は、人口減少はガンのようだと感じています。死に至る病(=集落の消滅)なのに自覚症状が少ないと感じます。

どういうことなのか?

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年を重ねて穏やかになくなっていく高齢者の死から、人口減少によって集落の存続が危機的状況にある実感が全く生まれないからです。

ご高齢の方が亡くなっていくことは自然なことであり、災害のようにたくさんの方が亡くなるような「悲惨な状況」ではないからです。


もう一つ、文化継承の面からも考えてみたいと思います。

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私も竹の枝尾神社の神楽の時に、婦人会の方と一緒に手打ちそばを作りました。全部手作りのお蕎麦は本当においしくて、こんなに大量の美味しいお蕎麦をつくれる奥様方は本当にすごい!と、改めて椎葉村に暮らしている先輩方の偉大さを感じます!

蕎麦づくりでは、蕎麦を打つのはこの人、出汁を取るのはこの人、火の番はこの人、のようにそれぞれが専門家がいて、この人たちだからこそ作れる味を創っています。

こうした文化の継承においては、高齢のため活動から引退して、部分的に加勢をする状態から、本格的な引退を迎え、その後に亡くなる、という段階を踏みます。

アドバイスをもらえる関係性が一定期間続いたあと、引継ぎが完了してから亡くなるので、「人口減少で文化が途絶えるかもしれない」という切迫した状況にならないことが伺えます。

うまく継承できてはいますが、絶対的な人数が確保できない現実と向き合うにはまだまだ時間があり、この「穏やかさ」にこそ、深刻さが潜んでいるように思います。

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深刻さを増している人口減少、もう打つ手はないのか。

先日東京大学・京都大学・九州大学の先生方とこれについてお話しする機会がありました。その後、先生方のご意見や論文を調べていく中で良い方法を見つけることができました。

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とあることをすれば、2040年の人口予想を改善することができそうです。

先ほどの資料で、100名だった人口は152名へ。
集落維持活動をしていく人口も24名から62名へ改善することができそうです。

その方法とは…

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人口1%戦略です。(引用:田園回帰1%戦略~地元に人と仕事を取り戻す~ 藤山浩)

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現在の小崎地区の人口である200名の1%(=若者2名)が、毎年小崎に定住していけば改善されるというものです。

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とはいえ、空洞化による臨界点突破で消滅の危機を避けられたわけではありません。

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私は椎葉中学校で学習の支援を行ってる中で、生徒に「将来どうするの?椎葉に帰ってくる??」と聞きたことがあります。

「〇〇になりたいから、椎葉には帰ってこないかなー」とか、「椎葉に帰ってきたい!」「天野さんと一緒に仕事したい!どこに進学したらいい?」と言ってくれる生徒もいます。

椎葉村に前向きなイメージを抱いている子どもたちが「帰ってこようかな」と思った時に「集落が消滅していた」という状況を作らないよう、今こそ真剣にこの問題と向き合い、考えていきたいと思っています。

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私は移住者で、椎葉に家を持って長年暮らしてきた方々の気持ちがわからなかったり、椎葉で育っていないからわからない部分もあります。

私が今考えていることが、実現可能な計画なのかどうか、ぜひご意見をいただきたいと思っております!

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毎年2名の若者とを定住させるためには、まずは、住宅が必要です。

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これまで行政が空き家バンク登録に向けて、家主の方と交渉をしてきましたが、様々な事情から、断られるケースが多かったと聞いています。

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私は「集落を空洞化させない」という意識を集落の人が持つことでこれを改善できるのではないかと思っています。

これまでは、個人が自分の家のことだけを考えてきたところを、集落で話し合いを行い、みんなで考えていくことで空き家を次世代に受け渡すことが可能になるのではないでしょうか?


皆様のご意見

Aさん「借家というのはとても難しい問題。土地と建物が別の所有者である場合はさらに難しい。また、長年放置された家の場合、改修費用ばかり増えてしまい、椎葉村が行っているサブリースの予算をオーバーしてしまう。自己負担してまで改修しようという人は少ないと思う。」

Bさん「上椎葉にサブリース物件がある。集落としては新しい方に入ってもらうことは大歓迎!しかし、今日まで入りたいと希望する人が出てきていないのが現状。」

Cさん「集落単位でこうした計画を立てる方法がベストだと思う」

Dさん「集落と行政の連携を密にしていけば可能なのでは?」

Eさん「地域(集落単位)毎の中長期鋭角を立て、家族単位の協議を十分ンした上で考えるべきではないか」

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次に土地の提供についてです。
若者に住んでもらうために土地・山林・耕作放棄地を無償で提供することはできますか?

皆様のご意見

Aさん「耕作放棄地について課題だと感じている。しかし、それよりも先に空き家を考えるべきでは?耕作放棄地は空き家に新しく入った人の生活の一部として再提供した方が良いと思う」

Bさん「役場主管課に案内係を設置し、親身になって相談に応じることで土地の提供者が増えるのではないかと思う。個人個人の条件は色々あるので…。有償か無償かという問題ではないと思う。」

Cさん「住宅建設のために提供したいと思っています。(地権者との協議を密に)」

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次に高齢者向けの共同生活が行える物件についてです。

①一人暮らしが不安な老人ホームにいく前の段階の方が住む物件として

②村の中心部である上椎葉に建てるというものではなく、ご自身が住んでいた集落の中に建設(これまでのコミュニティの中で暮らせる)

③引っ越しをした後、ご自宅を若者に貸し出す

こうした条件の場合であった場合、こうした場所に住みたいですか?

皆さんのご意見

Aさん「やはり自宅が良い。栂尾にそうした共同住宅を建設し、4世帯が入居できるようにしたが1軒も入らなかった。最後まで自宅で過ごすことが幸せなのではないか。そう考えるものの、「そういう時代ではない」とも感じている」

Bさん「一人暮らしはなにかにつけ問題ありだと思う。集合住宅が良いですね。引っ越したあと自宅を貸すことについては、借入希望があればOKです」

Cさん「集合住宅は安心につながります。閉校跡地にこうした施設を建てたらよいのでは?小崎小学校跡地は小崎の人だけが使うという発想ではなく、村内全体の人が使うという発想も必要なのでは?引っ越したあと自宅を貸すことについてはOKです。」

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大変貴重なご意見をいただき本当にありがとうございました。今後、皆様の意見を考察し、より実行可能な計画づくりに役立てていきたいと思います。


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これまでは、一方的なプレゼンで終わることが多かったのですが、地域に住む方の生の声というのは、理論や理屈だけでは解決できない気持ちの部分をくみ取るためにも有意義なことであったと感じました。

一住民である私にどこまでできるのか、こうしたことに時間を費やすことで本当に効果がでるのか不安に思う時もあります。

これからも椎葉に暮らす先輩方の意見を聞くことは、しっかりと続けていきたいと思います。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

天野


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