2021年3月1〜5日 現場日誌


先週の現場備忘録です。

月曜から金曜まで、NPO法人樹木医ひろしま・チームスタッフとして、広島城内の支障木伐採・枝剪定を施業させていただきました。
メインの現場は、護国神社のすぐ裏手で、本殿に枝がかかりつつあるクロマツ3本が中心。このまま放っておけば本殿と反対側にある別のクロマツ群に押され、樹全体が本殿に覆い被さってきます。銅葺きの屋根にも影響があるでしょう。
伐採クロマツには不運ですが、狭い面積の中にかなりの大きな樹木がひしめいている状況なので、樹木の環境良好化という観点で見れば、間伐が必要であった、と感じます。

1日目  晴れ
この冬は、雪も多く、南部方面での山林・里山林系仕事をいただくことが多かったため、高所というほど高所に登るのは久しぶりな二人。
システム、ロープワーク、ポジション等を、念入りに確認して進めます。ここで時間をかけることは、ロスではありません。ちょっと違うかもしれないけど、ツールボックスミーティングというやり方が好きです。
一本目のクロマツは、樹高はそんなに高くなく、しかも本殿と並行方向に傾いているので、林業的にはチェンソーだけで伐採ができるような樹なのですが、幹〜枝の部分が完全に本殿にかぶさっているので、単純に伐倒したのでは枝先が屋根を叩いてしまいます。
そこで、スマートウィンチを使い、後ろ方向(本殿から引き離す方向)へ倍力で牽引伐倒することを選びました。後ろにある別のクロマツにかかり木状態にした上でロープで確保したのち、登って上の枝から徐々に切り詰めて棒状にした後ロープを緩めていけば、ゆっくり地上に倒し込むことができます。(写真が一枚もないのが残念)

切っておろした枝、幹は全て持ち出し処理のため、倒した後は大きめのチェンソーに持ち換え、人力で運べるサイズに小切っていきます。この人力運搬が超絶大変ですが、今回も五名もの人数で運び出し。予定通り、午前中でこの作業が終了。午後からは、2日目に伐倒予定の2本目クロマツの枝落とし。

2日目  雨のち曇り
夜半より雨。午前中早くには止む予定ですが、風もあり寒い予定でしたので、早々に伐採作業は中止。代わりに城内別現場・カシの剪定作業。
クライミングというほどではないですが、メインロープとハーネス&ランヤードのセットで作業します。なぜなら、施業はお堀の水面上に突き出たカシの枝の剪定なので、剪定者の作業場所は枝があると言っても、お堀の水面の上方。落ちたら(落ちないですけど)即ドボン。

吊っておいた枝をお堀の中に落とさないようによこに引っぱって着地させ、二十メートルほど向こうのダンプへ。常緑のカシの枝は葉もついて重い!なかなか手こずりました。少し離れて2箇所あったカシですが、2本目が少し残りました。

3日目  晴れ
2本目のクロマツの施業ですが、今日はオプションが一つ。
2本目と3本目クロマツは本殿と並行に8mほど離れた横並びですが、その間に、後ろのクロマツから長い枝が日本の間を縫って本殿上方へとかかるほど伸びています。それをどう切るか。

クライマーの相方が選んだのが、フローティングアンカーでした。ちょうどセンターにある枝に取り付くには、これが非常に良いチョイスでした。アンカーが空中にあることで、左右前後上下への移動が固定されたアンカーよりも自由が効きます。
隣のクロマツから無理やり取り付けば、その取りついた場所で無理矢理切るしかなく、銅葺き屋根に擦りながら枝が落ちてくることは間違いありません。

できるだけ屋根方向に移動して、想定より前で切断できたことで、安全な枝おろしができました。相方、素晴らしい!ここまでで昼。

昼からは初日枝おろししたクロマツ一本を伐倒まで持っていきます。
まずはトップカット。この辺りになると、そこまで大きなマツではないため、確実にセッティングしてあれば心配はありません。トップカット3回繰り返し、完全な棒だけになったクロマツに、チルホールという牽引具のワイヤーを取り付けた後、クライマーは降ります。
後はいつもの林業的伐倒。クロマツはアカマツより柔らかいかな。
無事伐倒も終了後は、玉切りからの人力運搬!
これで三日目終了。


4日目    晴れ
最後のクロマツを伐倒まで。
トップカットをしに自分が上がります。2日目からセットしたままにしてあった相方のクライミングラインでまずは上へ。
上へ取り付くと、自分のARTロープガイド&タキオン&スパイダージャック2に変えてトップカット開始。SRTセットでトップカットが主流でしょうが、僕はこのDdrtセットが好きです。

トップカットのセットは、このクロマツが本殿方向に傾いているため、反対方向のマツ上部にアンカーを取り、ロードトランスファー状にして、必ず本殿反対方向に荷が行くようにします。これは、単純なトップカットで、ロックさせてしまうより遥かにシステムに対して衝撃荷重が少なく済みますし、状況とクライマーにとって、単純な幹おろしより安全性も高くできます。

3回幹おろしをして、その後チルホールワイヤー取り付け後、伐倒。
もちろん伐倒も、チル以外のバックアップラインの取り付けをしてあります。
伐倒後はまた、玉切りからの人力運搬!!!!
で、昼です。これで、一番メインだった本殿裏が終了!

午後からは、最後の現場、本殿横の、社務所にかかる亜高木のカシの枝剪定。
これはもう、人海戦術で、夕方までに終了。

ここまでくれば、もうホッとしています。


5日目   曇り
2日目に残ってしまった、お堀上に出た枝の剪定数本。最初ナチュラルアンカーでやっていましたが、意外と手こずるため、急遽Xリングを使って、きちんとリギング。最後とはいえ、この辺の手間を省こうとすると、途端に誰かがしんどくなるのがリギング作業。だめですね。

といっても、昼には終了。
見積もり時、どのくらいかかりますか?との問いに、多分、余裕も見て、4日半だと思います。と答えてあったので、よかたよかった。

総勢五名、総力を出し尽くした(!)五日間でした。

最後、お礼参りを護国神社にして、解散!
みなさま、本当にお世話になりました、ありがとうございました。


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