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フランス旅行記 リヨン篇 6
ペルージュへの小旅行
ジャン=マリーが運転しみんなでペルージュへ行こうという話になりました。ペルージュとはリヨンから北東へ35キロにある人口 1,100 人の小さな村です。リヨンはローヌ・アルプス県にありますが、ぺルージュは同県ではなくアン県 ( Ain ) に位置。フランスの中世時代をそのままに残している村。リヨンとジュネーブを結ぶ街道沿いにあり、12世紀の城塞、15世紀から18世紀にかけて麻織物の村として栄えたところです。城塞の中は13世紀以降の歴史的建築物が多く残っており、サン=テグジュペリも愛した村として知られています。
フランスの最も美しい村
フランスの最も美しい村協会 (Les plus beaux villages de France) は、フランスの田舎の小さな村に遺る文化遺産保護と歴史遺産の価値向上、そしてそれに伴う観光による経済活動を支援するものとして発足。157村がこちらに登録されています。もちろんペルージュもその村のひとつ。村の入り口にこちらの看板がたっています。
「中世」からなにを連想するか?「三銃士」ペルージュはまさに三銃士の映画のロケ地となったところ。実際、中世とは厳しい身分制度のもと大きな戦いが繰り広げられ、絶対王政が繰り広げられた時代。生まれ落ちた身分が将来のすべてを決定していくという時代。これがルネッサンスまで続いていたのだから、一般の人々はなにを考えていただろう。
子供たちが学校の遠足としてこの村を訪れ、中世の生活について話を聞いていきます。
村にはいってみると城郭教会が見えてきます。石の壁でできた大きな建物で窓は小さく、城砦のように見えますが、中は教会となっています。
村は石畳。壁も道もすべて石を並べて作られている。
ネコもいます。
こちらは古井戸。かつては城塞の一部であった。
15世紀に建てられたゴシック様式のサントマリー・マドレーヌ教会
こちらはペルージュ下門。アーチがとてもきれい。
ペルージュの名物、ガレット。こちらのガレットはブルターニュのガレットとはまたちがい、甘い。
ペルージュは小高い丘にある村。見降ろした景色が美しい。
「三銃士」といえば。わたしにとって映画の原点ともいえるゴダールが撮った「女と男のいる舗道 Vivre sa vie」の中に三銃士の話しがでてきます。
Place du Châtelet - L'inconnu - Nana fait de la philosophie sans le savoir
第11章 シャトレ広場、見知らぬ人、ナナは知らぬ間に哲学する
- 見てはご迷惑?
- いや
- 退屈そうね
- 全然
- 何してるの?
- 読書さ
- 何か飲んでいい?
- いいよ
- ここにはよく来るの?
- いや時々ね。今日は偶然だ
- なぜ読書するの?
- 仕事さ
- 変ね、わたし、何言ってるのかしら 突然こうなるの 何か言おうとすると 言う前によく考えているうちに いざとなるともう何も言えなくなるの
- そんなものさ 「三銃士」は読んだかね?
- いいえ、映画は見たけど なぜ?
- つまり、ポルトスという人物が… これは「二十年後」の話なのだが ポルトスという太った大男がでてくるだろ 彼は一度も考えたことがない
ある時、地下に爆弾を仕掛けることになった そして導火線に火をつけ 逃げた その時突然考えた 何を考えたか? なぜ右足と左足が交互に前にでるのかと そう考えた途端、急に足が動かなくなった 爆発が起こり、地下が崩れた
彼は強い肩で必死にささえたが、1日か2日後にはおしつぶされて死んでしまう 考えたために死ぬんだ
- わたしになぜそんな話をするの?
- ただ話をするためだよ
- でも なぜ話をするの? 何も言わずにいきるべきだわ 話しても無意味だわ
- 本当にそうかね?
- わからない
- 人は話さないで生きられるだろうか
- そうできたらいいのに
- いいだろうね そうできたらね 言葉は愛と同じだ それ無しには生きられない
- なぜ? 言葉は意味を伝えるものなのに 人間を裏切るから?
- 人間も言葉を裏切る 書くようには話せないから だがプラトンの言葉も私たちは理解できる それだけでもすばらしいことだ 2500年前にギリシャ語で書かれたものなのに 誰もその時代の言葉は正確にはわからない でも何かが通じ合う 表現は大事なことだ 必要なのだ
- なぜ表現するの? 理解しあうため?
- 考えるためさ 考えるために話をする それしかない 言葉で考えを伝えるのが人間だ
- 難しいことなのね 人生はもっと簡単なはずよ 「三銃士」の話はとても美しいけれど 恐ろしい
- 恐ろしいが意味がある つまり… 人生をあきらめた方がうまく話せるのだ 人生の代償…
- 命がけなのね
- 話すことはもう一つの人生だ 別の生き方 分かるかね 話すことは話さずにいる人生の死を意味する うまく説明できたかな 話すためには一種の苦行が必要なんだ 人生を利害なしに生きること
- でも 毎日の生活には無理よ つまり その…
- 利害なしに? そう、だから人間は揺れる 沈黙と言葉の間を それが人生の運動そのものだ 日常生活から別の人生への飛翔 思考の人生 高度の人生というか 日常的な無意識の人生を抹殺することだ
- 考えることと話すことは同じ?
- そうだと思う プラトンも言っている 昔からの考えだ しかし思考と言葉を区別することはできない 意識を分析しても 思考の瞬間を言葉でとらえるだけだ
- 嘘をつきやすいこと?
- 嘘も思考を深めるひとつの手段だ 誤りと嘘の間に大きな差はない もちろん日常的な嘘は別だよ 5時に来るといって来ないのはトリックだ 微妙な嘘というのは誤りに近い
何か言おうとして言葉が見つからない さっき君が言っていたことがそうだね 言葉が見つからないことへの恐怖
- 言葉に自信が持てる?
- 持つべきだ 努力して持つべきだ 正しい言葉を見つけること つまり何も傷つけない言葉を見つけるべきだ 傷つけない… 殺さない…
- つまり 誠実であることね ある人が言ってたわ 「真実は誤りの中にもある」って
- その通り それがフランスでは理解されなかったことだ 17世紀には誤りを避けることができると信じていた者もいたが 不可能なことだ
なぜカントやヘーゲルなどドイツ哲学が生まれたか 誤りを通じて真実に到達させるためだ
- 愛については?
- 大事なことは 正しい思考と判断の原理 ライプニッツの充足理由律 永久真理に対する事実真理 日常的人生 そういった考えがドイツ哲学で発展した 現実は矛盾を可能な世界として認識される 本当だよ
- 愛は唯一の真実?
- 愛は常に真実であるべきだ 愛するものをすぐ認識できるか?20歳で愛の識別ができるか? できないものだ 経験から 「これが好きだ」という あいまいで雑多な概念だ
純粋な愛を理解するには成熟が必要だ 探求が必要だ 人生の真実だよ だから愛は解決になる 真実であれば
監督・脚本: ジャン=リュック・ゴダール
撮影: ラウル・クタール
主演: アンナ・カリーナ
女と男のいる舗道 vivre sa vie