「営業は潰しが効く」説
新卒でリクルートの関連会社に入社し、求人誌の営業をしていたことがあります。入社後、配属された営業所で言われたのは「営業は潰しが効く」ということ。
「営業職経験者は、特にこだわりがないから、そのあと転職してもなんでも柔軟に対応できる」くらいの意味で言われたような記憶があります。
確かにその通りなのだけど、それって専門的な技能を持たないという意味でもあるんじゃないかとちょっと不満に思った記憶もあります(笑)
その後4年で離職し、程なく縁あって今の夫と結婚することになりました。子育てと、たまたま始めた小さい組織の運営でいっぱいいっぱいの毎日が続きました。
その間に「営業は潰しが効く」という言葉はすっかり忘れていましたが、最近になってふと思い出しました。コロナウィルス感染症の影響で、日常から強制的に少し離れることになったからかもしれません。
そしてそれには、別の意味もあることに思い当たりました。営業職は柔軟性という資質の上に、「クロージング」の意識とヒアリング力をしっかり持ってないといけないということ。
営業時代、毎週のようにやらされたロープレでも、「下手でもいいから、とにかく最後に『〇〇はいかがですか?』とか『〇〇をいつまでにご検討いただけますか?』などクロージングをしてから帰るように」と、上司から口を酸っぱくして言われたものです。
また、こっちが自分の商品のことばかり話して、相手のことをヒアリングしないと、相手の求めていることや状況がわからない、ただの押し付けになってしまう、ということも散々言われました。営業の人って商品の説明をするより、人の話を聴くほうがメインの仕事なんだなーと意外だった記憶があります。
これらは、営業職だけでなく、経営者にもなくてはならないものだったと今になって思います。クロージングしないと責任を果たせないし、お客様やスタッフ、そして世間に耳を澄まさないと、思い込みで事業展開をしてしまい、最終的に誰も幸せになりません。また、様々な予測不能な状況に対し、柔軟に対応しなければやっていけません。
無理に売るな。
客の好むものも売るな。
客のためになるものを売れ。
と、松下幸之助さんが仰っていたそうですが
まさに、ヒアリング、柔軟性、クロージングの3要素のことなのでは、と勝手に解釈しています。
自分勝手に売りたいものを売るのでもなく、お客様のいいなりになるわけでもない。「ためになるもの」を売るという、ある意味どっちも同じくらい幸せになる第三のものを立てなければならない。これを本気でやろうとすると、相当肚が据わってないと難しい。
さらに、この3つの力は、子育てにも必要なように思います。
子供のいいなりになるのでも、大人の押し付けになるのでもない。「どうしたらその子のためになるか」を子供との対話の中でよく観察すること、子供の好みも大事ですが、それより何よりその子のためになることを頭を柔らかくして本気で考えること。
となると、やっぱり営業職というのは、最終的に潰しが効くのだなと、改めて実感しています。
いつまで続くかわからない休暇中、ずっと隙を見せられない臨戦体制で生き延びていかなければ...。そんな不思議な緊張状態の中、飛んでくる矢を交わしながら、肚を据えて次のことを考える。それも考えようによっては、潰しを効かせるための鍛錬にはちょうどいい機会なのかもしれません。
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