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二人の子どもの話
これも母から聞いた話です。
母方の祖母はあたしが中学生の頃に亡くなったのですが、亡くなる少し前から体調を崩して伏せっていました。
母の実家、つまりあたしから言えばお祖父ちゃん・お祖母ちゃんちは同じ市内で、うちから私鉄で一駅、自転車でも20分くらいのところにあり、伯父夫婦と祖父母が同居していたのですが、伯父夫婦が自営業で忙しくしていたために、母がお見舞いと看病の手伝いとで、ときどき訪ねていました。
あるとき、祖母が寝床から上のほうの一点を見つめてニコニコしているので、どうしたのかと尋ねたら
「あそこにな、子どもがいてるんやわ」
と祖母は答えるのです。
「子ども?どこに?」
「ほれ、あそこ。欄間のとこに子どもが二人おってな、こっちを覗いてるんやわ」
「え…?」
母はぎょっとして欄間を見上げましたが、もちろんそんな高いところに子どもなんていやしません。
「何言うてるの、子どもなんていてへんよ?」
「あんた見えへんの?小さい男の子と女の子がいてな、こっち見て笑ぉてるんやわ。ほんまに綺麗な子やなあ、どこの子やろなあ」
それからほどなくして祖母は亡くなったのですが。
母には赤子の頃に亡くなった姉と弟がいるのです。
「お祖母ちゃんが子どもがいてる言うてたんは、その子らが迎えにきてたんかもしれへんなあ」
あたしもそんな気がします。
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