リアルタイムのリモートセッションの成功例2(Vo,Gt,Ba,Dr,Sync,PAの編成)
前回おさらい
前回の記事で、YAMAHA のNETDUETTO β2を使ったリアルタイムのリモートセッションの成功例を見て頂きました。
このセッション時の楽器パートは
・ヴォーカル
・リードギター
・リズムギター
・ベース
・シンクマスター(生演奏以外の音をコンピューターを使って司るセクション)
でした。
楽しくセッションはできたのですが、我々がどうしても実現させたいのは、「PAによるサウンドのミックス」「シーケンスと生楽器を同期させて演奏する」ということ。
PAは、アーティスト、ミュージシャンが演奏した音をミックス(音のバランスをとったり、加工したり)して、ライブの感動を倍増させてくれます。皆さんもアーティストのパフォーマンスとサウンドの一体感、身体に感じる低音などをライブ会場で体感したことがあるはずです。またシーケンスとは、生演奏と演奏以外に楽曲で使用されている音をプログラミングし同期させる現代コンサートには欠かせないシステムです。
今回の動画では、シンクマスターがPAを兼任する方法を採用しました。
ランダムに遅延するメトロノーム
現代のライブでは(特にシーケンスの入った曲)、演奏者はシンクマスターから送られてくるメトロノーム(我々はクリックと言います)を聴きながら演奏しています。今回の動画でも、それぞれのメンバーはクリックを聴いているのですが、そのクリックが”ランダムに遅延する”のです!?
ランダムに遅延・・・というのは、NETDUETTO β2を介して、それぞれの演奏者が、他の演奏者やシンクマスターの音を聴くと(クリックも含まれます)、不定期に音が遅れたりする、ということです。これは、ZOOMなどでミーティングしたことがある人は、喋りが途切れ途切れになったりした経験があるはず。その状況が、演奏中に起こっていまうということですね。
当初私達は、その”ランダムに遅延するメトロノーム”に、どれだけミュージシャンが惑わされず、一定のテンポで演奏することができるか、が課題になると想定していました。
まずは、特にNETDUETTO β2の設定は意識せずにやってみたところ・・・開始数秒でストップ、もしくは走りきれたとしても演奏が信じられないほどズレて聴こえてしまう。体感ですが、カラオケで友達にリモコンでテンポを上げ下げされるイタズラを、4人同時にやられているような感じでした。
こんな演奏では別の理由で仕事を失ってしまう(笑)。この状態では、いくらミュージシャンのテンポ補正能力があっても、”ランダムに遅延するメトロノーム”には勝てない! という結論に至りました。
遅延を解消する取り組み
インターネット、wifi、Bluetoothなど私達が使用している通信関係の仕組みは、実は情報が通過するたびに少しずつ遅延が発生しています。それらの遅延をできるだけ少なくしていく必要があります。
まずインターネット上の音のやりとりで、遅延を最も抑えてくれるツールが、今回使っているNETDUETTO β2。弊社のメンバーが過去にリモートで音楽制作をする時に使用していて、私のMacにもインストールしていたのですが、自分から積極的に使ったことはなかったので、この2ヶ月間チームメンバーとともに研究しました。
他にも海外のJamKazamというアプリケーションもあり、英語ということ以外は映像も共有できるし使いやすいのですが、「PAによるサウンドのミックス」「シーケンスと生楽器を同期させて演奏する」という面がクリアできなかったので、最終的には、NETDUETTO β2を採用したのです。
NETDUETTO β2を最も有効に使うために、遅延する原因を探っていきます。遅延の解消をできるポイントとしては・・・
①インターネットの速度
ー自宅の回線スピードの強化→インターネットの契約形態
ー自宅内の遅延条件の排除→パソコンへの有線接続
②パソコン内のスピード強化
ー高いスペックのパソコンを用意
ー遅延の少ないオーディオインタフェースの導入
③NETDUETTO β2内の設定
ーバッファーサイズを小さくする
ー音質を演奏に影響が出ないギリギリまで上げる→これはそれぞれの環境によって変わってきます。
などがありました。
これらを一つずつ詰めていくと、なんてことはない、普通に演奏ができるようになりました。イタズラっこメトロノーム君は頼れるテンポキープリーダーになったのです! 詳しい設定などは、次回以降に書きたいと思いますが、参考までに私達のチームのパソコンとインターネットの環境をここに掲載しましょう。
これはどのくらいのレベルかを簡単に説明すると、パソコンのスペックは高めでインターネットのスピードは普通程度です。他のメンバーは十分なスペックになっていると思います。
ドラマーを迎えてのテストセッション
となれば、次は最もクリックの遅延の影響を受けそうなドラムパートを加えてのテストをしたい! と思い、協力者を募ったところ、何名か連絡をいただきまして、テストをすることができました。その中で、今回の動画でドラムを叩いていただいたのはこの方!
山本淳也さん
素晴らしいサウンド&グルーヴ。
それではご覧ください。
ベーシックな編成でのリアルタイムリモートセッションの成功
生ドラムの演奏が加わることで、楽曲にまた違った味をつけ、気持ちを高まらせてくれます。実際私のテンションも1段階上がっているように見えます(笑)。山本さんありがとうございました!
何名かのドラマーに参加いただいた中で、皆さん演奏は素晴らしかったのですが、山本さんとのセッションが、一番NETDUETTO β2を利用したネットワーク上の安定性がありました。山本さんのパソコンとインターネットの環境は以下です。
十分なスペックですね。他のドラマーの方たちは、山本さんよりもスペックが低かったため、ネットワークの安定性に欠けてしまい、セッションが難しい場面もあったのです。
今回は、パソコンのスペックとネットワークの安定性を中心に書いてきましたが、先述のとおり、遅延を解消するための方法は他にもいろいろあり、それらを総合してできた結果でもあります。そちらは、また次回、詳しく書いていこうと思います。
リアルタイムのリモートセッションによるライブ実現に向けて
さて、ここまで演奏環境が整ってきたので、我々は次の段階=演出、映像や照明など、各プロフェッショナルの皆さんにライブ実現へ向けて相談を始めていて、同じ想いのプロフェッショナル達が集まってきてくれています。ぜひこれを読んでいるあなたが音楽関係者であれば是非一緒に頑張りましょう。大好きな音楽の仕事のために。
また音楽ファンの皆さんは、応援よろしくお願いします。できれば沢山シェアしもらって、まだ光の届いてない仲間の目にも入るようになったらいいなと思っています。私達にオススメないい配信ライブがありましたらどんどん教えてください。
また、ネットワーク、5Gなど通信系のプロフェッショナルな方、アプリ等の開発のプロフェッショナルの方にも教えていただきたいことがたくさんあります。
もし力を貸して頂ける方、是非ご連絡ください。
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