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グレッグ・ハックニーのタフな国。
(バスマスタークラシック2022 取材記④)
公衆トイレの扉を開けると、蛍光イエローのビブスを着た若い男が、小便器の前に立っていた。バスマスターの会場整理のスタッフだろう。僕より20cmくらいタッパのある彼の隣に並び、用を足して、手を洗って、日本から持ってきた手ぬぐいで手を拭き、そして僕がトイレを出るまでずっと、その若い男はとめどなく水音を立て続けていた。これがアメリカだと思った。器が違う。単位はガロン。
地図を広げればこの大陸がデカいことはすぐわかる。しかし一体どのくらいデカいのか。アトランタの空港に降り立ち、レンタカーで高速道路を北上して1時間ほどでサウスキャロライナ州に入ると、建物がまばらになり、景色は枯れた落葉樹の森に変わる。起伏の少ない土地だから遠くに山が見えるわけでもなく、この木々がどこまで続くのか底が知れない。スマホを忘れて足を踏み入れたら二度と出られそうにない森。そのまま誰かの土地に迷い込んで不法侵入者として当然の報いを受けそうな樹海。海のようにデカい大陸。
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