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洗濯物干すのもバスフィッシング

みんな毎月どのぐらい釣りに行けるのだろう。週休2日だとして最大で8日? 体感的には、その半分ぐらいの人が多いような気がする。年齢、生活環境、経済状況の違い。たとえば大学生で、しかもフィールドの近くに住んでいたらお金がなくても毎日オカッパリできるかもしれない。逆に東京の大学生なら、たとえ実家住まいでも自分の車+潤沢なお小遣いがないかぎり、そもそもバス釣りなんて始めないだろう。

ニンゲンの一生のなかでいちばん時間の自由がきく大学生でさえこうなのだから、社会人がバス釣りを継続するハードルはめちゃくちゃ高い。アウトドアが流行って、キャンプが流行って、釣具のチェーン店で初心者用チョイ投げキットがバカ売れしていても、バス釣りブームが再燃しないのは当然だ。

どうすればもっとたくさんバス釣りができるのか?

多くの先人がこの難問に取り組んできた。掘り下げていくと問題はふたつに集約される。お金と時間だ。そして、どちらかといえば圧倒的に「時間」の占める割合が大きい。お金があっても解決しない部分が残るからだ。

「バス釣りするためにもっと稼ごう」みたいな発想は、あんまり聞いたことがない。仮にもっと稼げたとしても、そのために費やす時間が増えたら元も子もない。例外的に「いっそのことバス釣りでお金を稼ごう」というパターンはちょいちょい見かけるが、このケースではまた別の問題が浮上する(はたして趣味ではなく仕事としてのバス釣りは楽しいのか?)ので、今回は省く。

あくまで現実味のある話として考えると、「もっとたくさんバス釣りを」のために必要なのは「時間を作ること」、ほとんどこれ一択になってしまう。釣り場の近くに引っ越すとか、ほかの趣味をやめて釣りに専念するとか、平日に休みが取れたり有給休暇がきちんと消化できるような転職を考えるとか、家族にうまく交渉するとか、いっそ家族をやめてシングルを謳歌するとか。

とにかく時間を作ろう! そのためにできることは個々人それぞれ違いますよね。みんなたいへんだけど頑張ろ〜。

……みたいなフワッとした結論を書くために早朝3時に起きたわけじゃないんですよ。今夜からほとんど寝ないで野尻湖へ走ってH-1グランプリのプラクティス&試合があるので、その準備のために起きただけ。しょうもない釣りブログみたいなのを書いている場合ではないのだ。

ラインを巻きかえて、必要と思われるルアーを押入れのなかからほじくり返し、等深線入りの野尻湖マップを検索してスマホに送ったりしていたら、寝室から怪獣のバラードが。息子が汗だくでのたうち回っていた。牛乳を欲しているのはわかっているが、さいきん飲み過ぎで軟便気味だし、寝ながら飲ませると虫歯になりやすいと一歳半検診で注意を受けたばかり。ならば麦茶はどうだと、哺乳瓶につめて渡したら気に入らなかったようでさらにギャンギャン泣く。

ここで台所にあった「ほんだし」の顆粒スティックが目に入った。普段から味噌汁やスープは好んで飲むほうだし、これなら虫歯のおそれもない。さすがに無味だと嫌われそうなので、塩ひとつまみだけ加え、ぬるま湯で溶かして飲ませてみた。成功! やはりアミノ酸は正義だった。すべての生物を狂わす魔力があると、「たくみづけ」を紹介するバスマスターの記事に書いてあったようななかったような。

騒ぎが一段落して、再び野尻湖に取り掛かろうとして、ふと思った。

釣りの準備だって釣りの一部であるはずだ。しかもかなり重要な。このロッドを持っていくか否か、このルアーを入れるか否かで、1尾が10尾に化けるかもしれない。いやいや準備だけじゃないぞ。ただぼーっと釣りのことを考えている時間でさえ「これは釣りの一部だ」と捉えることが可能。駅のホームで傘を振ってスイングを確かめるおじさん、彼はそのときまさに「ゴルフをしている」のかもしれない。それと一緒だ。

早朝4時のテンションで、こんなふうにして釣りの定義をどんどん拡張していった結果、私はやがてこういう次元に達する。

「夜泣きする子供にほんだしを飲ませる、というアイデアを思いついたことすら一種のバスフィッシングである」

以上、時間とお金をやりくりせずに「もっとたくさんバス釣りをする方法」でした。









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