急な配薬を減らす方法
先日clubhouseで在宅(主に施設)における「今すぐ持ってきて!」を減らす方法について話題になっていました。
みなさんも夕方5時頃にFAXが流れてきて、施設スタッフさんに電話をすると即日持ってきて欲しいとご希望されることは経験があると思います。
もちろん抗生剤などの緊急性が高いものもありますが、中には医療的に緊急性が低いと考えられる整腸剤や外用剤などである場合もあります。
これらが集中したり繰り返されると現場は疲弊しミスを起こすリスクが高くなり、結果患者さんに迷惑をかけてしまうことになりかねないですよね。
これを防ぐ方法としてclubhouseでは仕組み作りが重要だという話になっていました。
あらかじめ配薬にまつわる取り決めをしておいて、緊急性に応じて対応させてくださいねということにしておくわけです。経営サイドとしてはやっておくべきことだと思います。
では現場サイドとしてできることはないのか、ということについて僕の経験から書いてみたいと思います。
まず、そもそもなぜこのような事が起こるのかについてです。
急配を希望するのは現場の看護師さんやヘルパーさんであることが多く、彼らにはもちろん悪意はなく”医師の指示(処方箋)が出たのだから、すぐ薬が来る”のが普通だと認識しているのです。
これは利用者(患者さん)のことを考えてのことなんですよね。
ここで頭ごなしに”緊急性ないので、今度訪問するついでに持っていきますよ”なんて言った日にはお互いの正義をぶつけ合う、目も当てられない状況になるのは明らかです。
では、どうすれば急配を減らせるのか。
それは彼ら(他職種)の信頼を勝ち取ることだと思います。
それぞれの正義の中に歩み寄り合える場所があるはずです。
我々の正義:緊急性の低い急配に対応し続けることで疲弊し、患者さんに対するサービスの質が落ちる。
彼らの正義:医師の指示をすぐに実行することで患者さんをよくしたい
それぞれに共通しているのは患者さんを良くしたいという部分であり、根幹では通じ合っているはずなのです。
つまり我々(薬剤師)は患者さんをよくするために動いている人だということを認識してもらうことが信頼につながるのです。
僕自身、1年目で先輩から施設を引き継いだ頃によく経験しました。
当時は業務自体に慣れてない上に自分の仕事に自信もなかったため、「今すぐ持ってきて!」と言われれば応じる他の選択肢を持ち合わせていませんでした。
その頃、新人の僕はとにかく服薬後のフォローをするのだ!と意気込んでいましたが、引き継いだ元の先輩が患者さんにほとんど触れていなかったため、聴診をしたりフィジカルアセスメントを行うのにはちょっぴり勇気が必要でした。
訪問クリニックの看護師さんに「や、薬剤師さんって聴診するの!?」と言われたり、ヘルパーさんに患者さんの様子を尋ねて不思議な表情をされたりしながら、患者さんおひとりおひとりを評価していました。
こうしたことを繰り返しているうちに他職種のみなさんから「こいつは患者さんをみにきてるやつなんだ」と認識していただけるようになったのだと思います。
隔週の訪問でしたが、訪問すると主任ヘルパーさんが僕に申し送りする時間を作ってくれるようになったりもしました。
それからというもの、夕方に処方せんが流れてきたとしても、電話で症状をお聞きした上で緊急性がなければ「今度の定期配薬の際にお持ちしますね」と伝えると「ありがとうございます」と仰っていただけるようになりました。
ちゃんと患者さんのことを考えた上で判断をしてくれていると感じてくださっているからだと思います。
これは仕組みの話になってしまうのですが、配薬をパートナー(非薬剤師スタッフ)が担当していて、僕は薬を持たずに訪問していたのも良かったのかなと思います。
問題にぶつかった時には"そもそも何のためにやってたっけ"というWhyに立ち返ってみる。
そしてその解決策は、おひとりおひとりの患者さんを丁寧にみて良くする行為の先にあったりするのかもしれません。
いつも読んでくださりありがとうごさいます。みなさんが読んでくださることが活力になっています。