「いちご白書」
昔のフォークグループ、バンバンの曲「『いちご白書』をもう一度」の「いちご白書」(The Strawberry Statement)ってどんな映画?と思っていた。
映画は観てないけど、その原作本をゲット。
1967〜68年にかけて、先進国各地で起こった、大学生を中心とした“学生運動”だが、アメリカ・NYのコロンビア大学で実際に起こった学園紛争に参加した、1948年生まれの学生(著者ジェームズ・クネン)の手記だ。
「いちご白書」とは、当時のコロンビア大学の学長が、抗議行動する学生の意見を、「彼らがいちごが好きだというのと同じくらいに重要ではない」と見下したことに由来するらしい。
近隣住民(下層階級が中心)に迷惑を及ぼす新体育館建設に反対する抗議活動や、大学学部長との大衆団交と彼の監禁、デモ、座り込み、警官との対峙に、当時の黒人公民権問題、ベトナム戦争問題、大学自治権問題が絡んで来る、一連の抗議活動に参加した学生の日常。
だけど、そんなに硬いものではない。あくまで、自分を取り巻く理不尽なことに対する、内面における心の葛藤を中心に、口語体っぽく書いている。逆に、それだけに読みにくくはあるけど。
ガールフレンドとの日々から、鎮圧する警官への激しい怒りと彼らとの対話、突然の旅立ち、自暴自棄な行動…。
左翼党派SDS(民主社会学生同盟)が出て来たり、日本の学生運動と変わりはないね。
当時の学生を魅了した「革命」とは一体何だったのだろうか。社会を知り、理不尽さを知って、理想を持って、実際の行動に出るが、イデオロギーが先行して、運動体は分裂し、収束していく。結局、欲と金の資本主義が勝利する。
個人のうちで意味や意義を見出すこともあるとは思うけど。この世代も、戦争体験者と同じように、この世界から去りつつある。
著者がいう。「国家が数十万人を、なんの理由もなく殺すことが受け入れられるならば、個人が、十分の理由のためにひとりの人間を殺すことはかまわない」…。