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『リライト』 第一章 戒め

はっきりいって、僕は無敵だった。

なぜなら、僕は生まれた時から兵士、としての英才教育を受け続けてきたからだ。

そして、この世界では、身体能力を限界まで高めるメソッドが確立されており、そのメソッドに沿って20年間も教育され続けてきた人間は、男女全てを含めても、この世界で僕、ただ一人

その甲斐もあって、僕は、これまでの戦いにおいて、いまだに傷ひとつ負ったことはなかった。

また、戦時中と言うのは技術の進歩が著しい。

飛行機、携帯電話などの原型が戦争から生まれた事実からも、その事が正しいということは、歴史が証明してくれているが、僕はエリート兵士として、その恩恵も十分に受けていた。

今、僕が持っているこのidもそうだ。これはインフォメーションデバイス、通称id。一言でいえば、超進化したスマホだ。

電波を発生させると、敵勢力に傍受される危険性があるため、戦場では使用できない。しかし、このidは電波を使わない。人間には、センス、というものが多数存在しているが、この端末は人間のセンス、を引き出し、それを増幅顕在化させる事で、自由に扱えるようにしたのである。

そして、他者との交信には、もちろん、センスのひとつである、テレパシーを使う。テレパシー、というと、原始的な響きだが、idを使うことで、テレパシーが可視化され、誰が、誰に、なにを伝えたいか、がすべてわかる。

もちろん、テレパシーを傍受する事はできない。テレパシーは、交信したい相手、に直接、語りかけるからだ。まぁ、僕もそう聞いてはいるものの、仕組みをよく理解してるわけではない。そういうもの、として認識しているだけだ。でも、僕にとってはそれで十分だ。

「コウジ?今回の任務はどう?」
「楽勝すぎて、つまらないね。今から帰るから、飯用意しといて。」
「はいはい、わかったわ。戻って報告お願い。」

僕のアシスタント兼世話係である、シスイからの交信だった。

今回の任務は、拠点の制圧。

敵勢力が新たに拠点を築いたので、それを無力化してこい、とのことだった。

そして、任務に望んだのだが、僕と相手との間には巨人と小人ほどの力の差があった。僕一人に対し、敵の数は20人程、しかし、相手が何人でこようが、赤子の手をひねるほど、僕にとっては容易い相手だった。

しかし、僕は、絶対に誰も殺さない、と決めている。これは、僕自身の、過去に対する戒め、のようなものだ。敵とか味方とか関係なく、僕は誰も殺したくない。

僕は、強く、そう心に決めていた。

僕は、敵を操り、自分たちの手で、拠点を破壊させ、その後、武器やら何から、身ぐるみを全て剥がし、相手の戦意を削いで、撤退させた。

「もう二度と来るなよ。いや、頼むから来ないでくれ、誰も殺したくない。」

これで、任務完了だ。さぁ、基地に戻るか。僕らの基地、『アンダーアース』へ。

続く・・・

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