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lightingとwriting


 私は古殿町で写真館を経営しています。家族経営の小さなお店です。東京で写真の専門学校生、スタジオ勤務を経て帰郷。今年40歳、カメラマンになってもうすぐ20年になります。私のお店は吉田写真館として祖父が創業。私で3代目となります。
 写真館については後述するとして、今回はなぜ私がこの場を借りて文章を書こうと思ったのかお話します。現在の写真館は、ただ写真が撮れれば良いという場所ではなくなりました。みんなが手のひらサイズの高性能なカメラを持つようになったからです(しかも電話ができる!)
 誰でもきれいな写真を残せる時代。「写真が撮れる」という技術的な価値で商売できた時代はとうに過ぎ、現在は「写真+αの付加価値」が求められています。そして、その付加価値を伝えるために欠かせないメディアがSNSです。この小さな画面から目が離せなくなってしまう。そんな瞬間が、皆様にもあると思います。なかでも写真表現を得意とするインスタグラムは、カメラマンと最も相性の良いSNSと言えるでしょう。
 


 しかし、インスタグラムが登場して10年以上がすぎ、純粋に投稿を通じて写真や人との繋がりを楽しむものから、巧みな投稿で閲覧者に訴求する広告メディアへ変化を遂げています。
 吉田写真館もインスタグラムを通してたくさんの方に知っていただけるようになりました。とはいえ、広告や同業種の競合も多く差別化するのが難しいのが現状。綺麗な写真、技術的に優れている写真だけでは、閲覧者の心にぐっと入り込むことは難しいと感じています。そこで、インスタグラムで成功しているカメラマンの特徴を分析してみることにしました。
 まず、写真が素晴らしい事は言うまでもありません。次に、タグをたくさんつけるなどフォロワーを増やすことに長けている。そして、優れた文章が書けること。写真が良いことは前提として、それだけでは伝わらないことを言語化できる力が必要だと強く感じました。上手な文章ではなく、人柄が伝わる「良い」文章。職人は「技術はあるが商売が下手」と言われています。写真が撮れることが特別な技術だった時代の祖父や父を見てきた私も、どちらかといえば職人気質なのでしょう。

 


 しかし、良いものを作るだけでは売れない時代。変わっていかないといけないと感じています。いくら自分たちに大事にしている想いや世界観やストーリーがあっても、伝えなければ人の心に届かない。それらは私たちの強み(付加価値)であるはずなのに。小さなお店こそ、その強みを写真と言葉で発信して伝えていかなければならないのです。
 lightingとWritingという単語があります。写真撮影の場で照明を当てることと、文章を書くこと。似たような綴り、発音ですが意味は全く違う。しかし、どちらの「ライティング」も、今後の私達に必要な技術です。
 これからの寄稿において、私のWritingへの挑戦にお付き合いいただけると嬉しいです。

福島民報 2022年9月7日 掲載


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