ドイツで初めて髪を切る シュトゥットガルト 2003年春
そういえばドイツに来て2年弱、髪をドイツで切った事がない。フランクフルト時代はほぼ毎月パリに戻っていたので、7区のクレール通りにあった英語が話せる陽気なフランス人親父の美容室に行っていたのだが、もはやパリに行く用事は一つもなくなってしまった。
髪もボサボサ伸びてくると手入れも大変だし面倒だ。そろそろ潮時かなと思うが、しかし英語を話せる床屋か美容室なんてシュトゥットガルトにあるのかな?ドイツ語で理想の髪型を色々指示する自信がない。
などと逡巡しているうちに数ヶ月、ちょっとしたロン毛になってしまいさすがにこれは覚悟決めてそろそろ髪切りに行くかと外出したら、なんとアパートの同じビル一階にヘアサロンらしきものがあるではないか。
よし近いしここに行くぞ!と入るともちろん日本の床屋や美容室のような愛想良いいらっしゃいませの挨拶はなく、古びた店内で私服の女性従業員が3人ビックリした顔でこちらを見る。壁に貼ってある白けたポスターのモデルがやけに美人に見えた。
レジに座っていて、やる気なさそうにネイルをしている、たぶんトルコ系移民の目がパッチリした子はこっちを全くガン無視。
これまた一番奥にいたブロンドのガッチリした女の子は疲れた顔をしていて、更に輪をかけてやる気がなさそうな表情。
エプロンをした3人の中では一番年長、それでもたぶん30前の姉御肌っぽい子が予約なかったよね?でも空いてるから、どうぞどうぞと椅子を進めてくる。
姉御肌があなた今日来るの初めてだよね、どんな髪型が良いのかな?(とたぶん言っているのだろう)髪をグシャグシャ触りながら鏡の僕の顔に微笑みかけてくる。あれ、意外と可愛い。
えー、脇は短め、全体的に2センチ切って前髪は垂らすから残してと英語なら完璧に言えるがさてドイツ語でどこまで通じるかな。
オーケーオーケー、アンダースタンドとドイツ語訛りの英語で姉御、本当か?
姉御肌は私を店奥の流し台まで連れて行きシャンプーをしてくれる。うーん、悪くない。何か話しているがかゆいところありますか?とは言ってない、としかよくわからない。
シャンプーしてリンス、流して水を拭き取り再び鏡の前へ。さっきのやる気なさそうなブロンドが、どうしたものかと言った表情で待ち構えている。え?姉御じゃなくてお前が切るの?
しかもブロンドはメチャクチャ背が高い。185、いやもっとあるな190に近い。しかも結構肩幅があって、ごめん、外見からは器用な感じが全然しない。
ブロンド190はその大きな手に似合わない小さなハサミをカチカチ言わせながらどうぞどうぞと椅子を進めてくる。脇は短め前髪残してと言って後はもう覚悟を決めた。
パチパチと濡れた髪をハサミでサッサかと南小学校の図工の時間くらいのペースでチョキチョキ切るが時々髪にハサミが引っかかって痛い…
何回か髪がハサミに引っかかった後、ブロンド190が舌打ちをして、ハサミを床にガチャンと投げつけた。おいおい。
新しいハサミを出してまたパチパチ、なぜかまた髪に引っかかる。ハーとため息をついて舌打ちしながらまたハサミを床に投げつける。
それからかれこれ4本ハサミをダメにしたが、まあまあ短すぎずいつもの髪型が最終的には出来た。ブロンド190も満足げだ。なかなかやるなあ。
姉御肌もいいね!という感じで親指を立ててくる。しかも結構な量の髪が床に落ちている。これは大変だったろうなあ。
ブロンド190が満足げに僕の髪を触りながら、シューン、ゾーシューンと繰り返している。いや僕もダンケ、ダンケ。初めてにしては上手くいったわ。
「黒いアジアの髪、硬いけど美しいねー。私の髪なんて細くてすぐ切れちゃう、おかげでハサミを4本つぶしたわ…あと髪の量多すぎ!笑」とブロンド190が笑う。あーそういう事か、なんか悪かったね。確かにあなたの髪は細いもんね。そりゃハサミも潰れるわ。そしたら姉御もそんなん大丈夫だわ、ハサミなんていくらでもあるから、と意外に暖かい雰囲気の美容室でまた来ようと思ったのでした。
続く
#福島県議会 #シュトゥットガルト #ドイツ #選挙 #ドイツで髪を切る
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