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Prototyping!Prototyping!Prototyping!

Google for Education Innovator Academyの3日間で一気に実践したデザインスプリント。

まさに「スプリント(短距離走)」な3日間でしたが、過去にデザイン思考を子どもや大人と学んだときとはまた違った大きな気づきがありました。
それは、ユーザー視点に立つ、「共感」が大切なことと同時に、

「プロトタイピング」

が「共感」フェーズと同じくらい大切であるということです。

今回はアカデミーで改めて感じたプロトタイピングの力や、アカデミーの後に出会った本の紹介などをしたいと思います。

FailBellでできた雰囲気

FailBellというハンドベルが各チームのテーブルにおいてありました。FailBellは、何か失敗したときに思いっきり鳴らすベルです。

FailBellがなったら、みんなが祝います!とにかく祝います。拍手をしたり、声をかけたり。

「失敗しても大丈夫。」「失敗しても学べばいい」ということをデザインコーチのラシュトンさんはしきりに言っていました。

プロトタイピングをつくるときもまさにそうです。つくったものが、なんか違うなーとか、これじゃない!これは捨てて新しいものにしよう!

となったとき、「失敗した」と打ちひしがれるのではなく、Bellを景気良く鳴らして、みんなでお祝いしよう!という雰囲気をつくること。

やや極端ではありますが、Googleの言う「心理的安全性」はこういうちょっとした工夫から、かたちづくられているのかもしれませんね。

プロトタイプはカンタンに、素早く。

アカデミーではプロトタイプは「コンピュータを使わずに」つくりました。

ペーパープロトタイプとして、ウェブサイトでも、サービスでも、モノでも、紙とペンとそのへんにあるポストイットやアルミホイルなど、ありあわせのものでぱぱっと作ります。

ペーパープロトタイプの良さは下の3つかな、と思いました。

1.すぐに作れて試せる

2.いきなり完璧を目指せない

3.未練が残りにくく、捨てやすい

それぞれについて考えてみましょう。

1.すぐに作れて試せる

紙の良さはなんと言っても書くだけで、あっという間にワイヤフレームや画面の雛形を作れること。

ボタンやボックスなどの面倒なCSSやHTMLを書いたり、何度も画面テストとデバッグを繰り返すことなく、あっという間に紙にアイディアが現実化します。

デザインスプリント、のスプリントは、短距離走という意味です。
決まった時間の中で、(実はこれも重要ポイントなのですが)短距離走のように走り切ること、そしてその短距離走を何度も繰り返すことで「よりよいもの」を作っていく方法がハイテク企業では主流です。この方法を「アジャイル」といいます。

2.いきなり完璧を目指せない

コンピュータを使えば、アプリケーションやティーザーサイトを作成することはできます。時間をかけてコーディングして、最初に思い浮かんだものを完璧に作り上げることは可能です。(もしかしたらつくるのに時間がかからないよ、という方もいらっしゃるかもしれませんが。。)

しかし、必ずしも最初のアイディアが素晴らしいものかどうかは誰にもわかりません。さらに、時間をかけたにもかかわらずそれが全く報われないものだったらどうしようもありません。

スプリントはイテレート、つまり「繰り返す」ことがもっとも大切です。

全くわからない状態から確度を上げていくためには、カンタンなテストを繰り返して、繰り返してそして創り上げていく必要があります。

紙とペンを使って完璧につくるのは不可能ですよね?だから、完璧はあきらめて、何度も繰り返して

「よりよいものを創り上げていく」

ことに集中することができるのです。

3.未練が残りにくく、捨てやすい

完璧ではないけれど、クオリティの高いプロトタイプを目指してしまう。

そして、クオリティの高いプロトタイプには未練が残りやすい。これが人情というものですよね。

貴重な時間をかけてコーディングしてつくりあげたウェブサイト。高価な材料と特注した金型による立体モデル。大規模なマーケットへの調査結果。

どれも、プロトタイプだったとしても多くの投資と引き換えにハイクオリティのモノが出来上がるに違いありません。

しかし、もしそのアイディアが「ユーザーの課題解決にふさわしくない」ものだったらどうしますか?

こんなリスクを避けるためにも、初期段階で、

捨てやすいカンタンなプロトタイプで、たくさんの失敗をして、

FailBellを鳴らそうじゃないか!

そして、そこで学べたことをもとにすれば、大きな投資のリスクを取ることなく、どんどんアイディアをユーザーの課題を解決するものとして深めていけるはずです。

デザイナーのためのプロトタイピング入門

そんなことを考えていて、本屋さんをふらついていたら出会ってしまいました。今年の7月26日に出版されたてほやほやの本です。

アカデミーのスプリントで使った「共感マップ」のわからなさを解消してくれたり、プロトタイピングの効果について書いていたり、考えていたこととぴったりの内容でした。

プロトタイピングは解決策の模索のみにあらず

本文から引用すると、

プロトタイピングとは...

できる限り最良の結果を目指し、不完全なアイデアをテストすることをいとわないマインドセットをもち、

未知のことを受け入れて、アイデアを早い段階で何度もテストすること

未知で不完全な要素も踏まえ、アイディアを何度も試すことで、その不完全な部分、つまり、「問題の本質を理解すること」を目指すものと言えるのではないでしょうか。

本文の中で、著者は4つの要素がプロトタイピングにはあると書いています。それは、理解、コミュニケーション、テスト、重要性の実証である。


理解
作ってみて、ユーザーに使ってもらい、それをじっくりと観察することで、ユーザーが潜在的に抱えている問題への理解をさらに深めることができる。

コミュニケーション
頭の中のアイディアを現実化させることでユーザーやチームメンバーからのフィードバックをもらい、コミュニケーションをすることができる。

テスト
ユーザーがどのようにプロトタイプを使うのかじっくり観察し、使ったときの感想をユーザーから聞き出し、学ぶことができ、改善につなげることができる。

重要性の実証
何度もプロトタイプを作ってはテストし、データを集めることでアイディアの重要性を確かめることができる。


デザインにおけるプロトタイピングの位置づけにとどまらず、具体的なプロトタイピングの方法についても詳しく書かれており、今後のイノベーターのプロジェクトにも大変役立ちそうです。

みなさんもよかったらぜひ!

まずつくる。それもすばやく、カンタンに。

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山﨑智仁(Tomohito Yamazaki)
ただ続けることを目的に、毎日更新しております。日々の実践、研究をわかりやすくお伝えできるよう努力します。