標準化と分業のテイラー主義 【トッド・ローズ著 ハーバードの個性学入門 平均思考は捨てなさい】
フレデリック・テイラー、といえば経営に関わる人なら知っているかもしれない。
「科学的管理法」と「マネジメント」といえば、この人!のようだ。
この科学的管理法に、現代社会に存在する大企業に限らず、多くの企業が基づいている。
マネジメントと仕事をする人を棲み分けて、アウトプットを計測し、効率的にアウトプットの質を均一化させるために標準化を行うべきだ、という考え方だと、トッド・ローズは述べている。
この科学的管理法は企業のマネジメントに限らず、様々な分野に応用されたことがある。
その最たるものが、ナチス・ドイツの官僚機構だ。
凡庸の悪とハンナ・アーレント
哲学者、ハンナ・アーレントは彼女の著書「全体主義の起源」でナチス・ドイツで絶滅収容所や虐殺を指揮した「アイヒマン」の裁判に参加した経験談を語っている。
その中でも最も彼女が強調した言葉は
「凡庸の悪」
だった。
多くのユダヤ人を虐殺したナチスドイツの中でも、特に虐殺を直接指揮したアイヒマンのことを、ハンナ・アーレントは「よほどの悪魔的な人間であるはずだ」と予想していた。
しかし、実際にエルサレムで開かれた裁判で目にしたアイヒマンの姿は
「普通のサラリーマンと遜色ない」
と思うほど、普通だった。さらにその上、本人は
「私は命令に従っただけだった」
としか答えなかったのだ。
徹底的に分業化され、効率化された組織だったナチスドイツ。虐殺に関わった人々は自分たちが直接虐殺した、と感じることなく「虐殺に加担してしまった」のだった。
普通であるが、無批判的思考であったがために、虐殺に加担することすら責任の重さを軽くしてしまった結果だった。
科学的管理法は、つまり言うことを聞くだけの労働者と、それらを取り仕切るマネジメントを分けることで、仕事の無駄を省くということだ。
映画はおすすめなので、ぜひDVDなど手に入れて観てほしい。
学校にも用いられる科学的管理法
この科学的管理法、まさに「計測」とその「平均との比較」から始まるのだが、これもまさに現代の教育の問題点をついている
つまり、
テストの点数
をどのように処理するか、平均思考に毒された扱いを見てゆこう
平均思考に基づくテストの扱い
平均思考に基づくときには、テストの点数を平均値と比較して一喜一憂する場合が多い。
「今回は高得点を取れた!平均をうわ回ったよ!」
となるはずだ。平均との「偏差」を気にし続け硬直化する。
他と比較を行うことによって、効率性が上がる場合もあれば、常に平均からの圧力をうけて止まってしまうこともある。
そもそも、ナチスドイツが用いていたまったく人道的ではない方法を未だに採用する日本の社会、学校、企業には一抹の不安を感じざるを得ない。