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Adobeのタグマネージャー再入門

Adobe Analyticsの計測をAdobe Launchを使って計測しようという趣旨の動画が公開されています。(相変わらず英語です)Adobe Launchとは端的にいうと、タグマネジメントソリューションです。タグマネジメントなので、発火コントロールや埋め込んだHTMLのタグ要素から値を取ることはもちろんのこと、Adobeの各ソリューション群や他社製品へのデータ連携設定や配信を簡易にすることまで実現できます。

こちらの動画では、計測要件定義が完了していてAdobe Analyticsの設定に着手し始めている方を対象とした解説になっています。一通りご覧いただくと、インターフェース操作を含め感触を掴んでもらえると思います。ここでは、動画の内容に加え、私の経験を交えてAdobe Launchの導入プロセスを解説していこうと思います。
Adobe Launchのプロジェクトは、ざっくり可視化すると以下のようなステップを踏んでいきます。

Chart2 - Adobe Launchを利用したAdobe Analyticsの計測

たかがタグマネージャーでここまで決めなきゃいけないのか、と思うかもしれませんが、それこそホスティング環境を選べたり、開発環境を選べる柔軟さ故、決め事を最初に行っていくことが非常に重要なわけですね。ただし、難解なことはなく、多くても判断は3択くらいがほとんどです。ぜひこのステップでタグマネージャーの導入を実践してみてください。

それぞれのプロセスの見出しにある単語がAdobe Launchを構成する機能1つ1つを指しています。Adobe Launchの機能構成については以下を参照しながら見比べてもらえるとよいです。デジタルエクスペリエンスの管理を行う上で必要な機能要素が最低限組み込まれていることがわかります。

Chart1 - Adobe Launchを利用したAdobe Analyticsの計測

ここから先は、導入各プロセスの補足を解説していきます。

①プロパティの作成

プロパティ設定に関してはコチラを参照ください。
英語ですがキャプチャがあるので理解はしやすいと思います。

プロパティという概念は、各機能の設定を保持する管理母体にあたります。プロパティ1つに対して、タグマネージャーの本番環境用タグが1つ発行されます。

プロパティの数については、「いくつつくればよいか」、という質問をよく耳にします。実際にLaunchを操作し更新を行う「担当者の数」や「管理部門の数」に応じてプロパティ数をコントロールしていくが定石になりますが、むやみにプロパティを増やすと、本番環境用のタグが増えるのみならず、バージョン管理やLaunchに組み込む製品管理が複雑になるので、極力抑えたほうがいいかなと思います(グローバルで1つの計測環境を作っている場合には、制御が難しくなるため)。

②Hostsの設定

Hosts設定にあたっては、コチラを参照ください。要するにAdobeが管理しているAkamaiでタグをホストするか、自社のサーバでタグをホストするかの2択です。ホスト場所の判断基準については、コチラを参照ください。主にセキュリティポリシーによる自社ホスティングが検討の軸になることがわかります。

③Environmentsからタグを入手

Adobe Launchでは、開発環境用、ステージング環境用、本番環境用それぞれに分けてタグを発行できます。それぞれの環境別にタグを管理したいという場合には、各々を使い分けてタグを利用いただくとよいと思います。
ですが、概ね現場ではステージング環境から本番環境にHTMLをコピーしているケースが多く、各環境用のタグ貼り分けは現実的には難しいと思います。そうした場合には、Adobe Experience Cloud Debbugerを用いて本番環境用タグを擬似的に開発環境用タグにスイッチングするということも可能です。(ヘルプに手順があります。)

Environmentsでは、開発環境用のタグは複数種発行することができます。これは、開発者が並行作業する際、開発環境のタグを分けることで後述のPublish衝突を防ぐという役割を持ちます。Adobe Launchを管理する人が増えてきた際に、改めて振り返るトピックスとして覚えておいてください。

その他詳しいEnvironmentsの設定についてはコチラを参照。同期読み込み、非同期読み込みに関する留意点を学ぶことができます。

④タグの埋め込み

基本的には</head>の直上に貼り付けてもらうことが推奨です。CMSで管理しているから<body>直下でも良いですか、という質問をいただくことがありますが、正しくExperience Cloud ID Serviceの読み込みがされないというケースが発生する可能性があるため、極力<head>タグ内の設置をお願いすることが多いです。セットアップ手順はコチラを参照ください。正しくLaunchライブラリを作動させるためのBest Practiceが記載されています。

⑤Extensionsの組み込み

基本的にはAdobe製品を利用する場合、Extensionsに存在している各製品別のExtensionはインストールしておきます。Extensionsを利用することで、Adobe LaunchのUI上の操作で各製品にデータを送ったり、受け取ったりする設定ができるようになり、作業ミスを防ぐことができます。また、Extensionsの中身が更新されたときもボタン1つでupdate作業ができるので、Extensionsの開発とタグの管理を切り離すことができることも便利な機能です。
ヘルプにはそれぞれのExtensionsの解説も用意されています。

Adobe製品のみならず、GoogleやFacebookなどの3rd Partyのタグ設定を肩代わりするExtensionsもあるので、自社の導入ツールの状況に応じて使い足すとよいでしょう。

⑥Data Elementsの設定

基本的にはAdobe LaunchのData Elementを用いて、HTML内にあるタグの中身やブラウザのCookieから値を取得し、各製品の変数(データを入れる箱)に格納するというコンセプトになります。よって、このData Elementsの設定に慣れることが、デジタルエクスペリエンスをコントロールするデータ集めの第一歩にもなります。Data Elementsで取得したデータを、Adobe Analyticsの変数に渡して計測内容をリッチにしたり、Adobe Targetの変数に渡してターゲティングセグメントに活用する、ということを行います。
詳しい設定内容については、ヘルプを参照いただくとよいです。

⑦Rulesの設定

AnalyticsへのRule適用についていくつか解説動画ありますので、参照ください。

ご覧いただいたRulesは、いわゆる設定内容の「発火条件」を定める機能です。詳しい設定解説はヘルプを参照ください。こちらの記事ではあくまでもRulesという概念の説明にとどめます。Adobe Analyticsの発火条件も知りたいという場合は、コチラも参照ください。Extensionsの詳しい設定に関しても言及がありますし、Rulesでの設定でどの発火条件を選んだらよいかということに関しても言及があります。

発火条件は一見すると、特定のURLやボタンクリックのときくらいなんじゃないの?と思いがちですが、こだわるといろいろな条件が出てきます。Adobe LaunchではCoreのExtensionがその制御ライブラリを揃えています。どんな設定があるの?どんな意味を持つの?と興味を持たれた方は、コチラを参照してみてください。

⑧Publishの設定

Publishにあたってつまずきがちなのが、ライブラリという概念です。設定した内容がそのまま1つ1つ公開されるんじゃないの?と思われがちです。Adobe Launchの公開管理は、1つ1つの設定をライブラリとしてまとめて、公開履歴を保持します。また、Development環境にて、複数作業が走ったときにバッティングが起きないようにすることができます。文面を図に起こすと、以下のように表せます。

Chart3 - Adobe Launchを利用したAdobe Analyticsの計測

よって、Publish作業の第一歩は、設定した内容をライブラリに組み込むことになります。そして、ライブラリを各Enviromentsに反映していきます。Adobe Launchはミニマムで「Development」「Staging」「Production」と3つのEnviromentsを保持しています。本番公開にあたっては各Enviromentsを必ず通過させることになるので、少し手間が多く面倒だったりしますが、これは安全にタグ管理を行うという保証と引き換えと思っていただけるとよいと思います。

もし、クイックに設定内容を確認したい、という方は前述で記載したDevelopment環境までライブラリPublishをし、Debuggerを使って、Development環境のタグに切り替えて設定内容を確認するとよいでしょう。私も初期動作確認ではそのようにして作業を行います。手順は再掲になりますが、コチラを参照ください。作業効率を上げるために、作業中は常に手元にDevelopment環境のタグIDを控えておくとよいです。

とにかく使って覚えるのが上達のコツ

Adobe Launchの管理は上記のプロセスをひたすら繰り返すだけです。上達には操作に慣れる、が一番だと思います。自分専用のライブラリを用意すれば他人の設定害することなく開発は行なえますので、ぜひトライアルしてみてください。プログラムは書けなくても、UI操作でデジタルエクスペリエンスに必要なデータを揃えることができる、ということを実感してもらい、自社の取り組み加速の一助となれればと思います。