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オーストラリアのファンドレイジング・カンファレンスFIA Conference 2024を振り返る
昨年に引き続き、オーストラリアのファンドレイジング協会 Fundraising Institute Australia(FIA)主催のファンドレイジング・カンファレンス FIA Conferenceに参加してきました。今回は、2024年2月28日~3月1日の3日間ブリスベンで開催されました。
ちなみに、前回同様に運営ボランティアで参加させていただきましたが、運営目線からの感想は前回カンファレンスの振り返り記事で書いた内容とあまり変わらないので、本記事では切り口を変えて振り返ってみます。
セッションの構成
FIA Conference 2024では、大きく7つのカテゴリに分けられて、カンファレンス2日目・3日目にセッションが行われていました。このカテゴリとは別に、カンファレンス1日目にはマスタークラス・セッションやオープニングセッション等もありました。
①個人寄付(Individual Giving)
現金寄付、広報PR、継続寄付、寄付キャンペーン等の個人寄付に関する様々なファンドレイジングに焦点を当てた9セッション。寄付獲得から継続までをカバーし、ダイレクトメール、デジタル、対面を含む全てのマーケティングチャンネルを網羅するような内容。
②コミュニティ&イベント(Community & Events)
イベントやPeer to Peer ファンドレイジングでの成功事例に特化した8セッション。オーストラリア全土の非営利団体から、Peer to Peerを含むイベント(からのファンドレイジング)の成功の秘訣を学べる内容。
③フィランソロピー&パートナーシップ(Philanthropy & Partnership)
大口寄付や信託による寄付、財団・企業とのパートナーシップ等に焦点を当てたファンドレイジングの実践事例を学べる8セッション。
④ファンドレイジングのハウツー(Fundraising How To…)
ファンドレイジングの基本から、組織の規模に関係なく、全てのレベルのファンドレイザーが簡単に実践できる実用的な内容の8セッション。
⑤新たな課題と世界のトレンド(Emerging issues & Global Trends)
現代のファンドレイジングの倫理や多様性とインクルージョンの重要性、アカウンタビリティと透明性、どのように成長とイノベーションを続けるか等、ファンドレイジングを取り巻く重要な問題をテーマに取り上げる9セッション。
⑥遺贈寄付(Gifts In Wills)
遺贈寄付のプログラム開発から全てのレベルのファンドレイザーや非営利団体に適用できる実践的な内容が含まれた8セッション。
⑦リーダーシップ(Leadership)
若手リーダーに対する実践的なアドバイスやリーダーシップの準備方法、リーダーとしてのファンドレイジングに関する行動の最適化などが、経験豊富なファンドレイザーたちの知見が共有されたり、ファンドレイジングを推進する非営利団体におけるリーダーシップとして知っておくべき考え方や留意すべき課題などが共有される8セッション。
アジア諸国のファンドレイジング・トレンド
カンファレンス1日目のPlenary Session(基調講演)のスピーカーは、2017年の日本のファンドレイジング・カンファレンスで来日してくださったUsha Menon氏。
アジアにおけるフィランソロピーやファンドレイジング、ソーシャルインパクトの推進のため、ご活躍されていて、アジア諸国のファンドレイジングに関連する諸々の動きが共有されました。
「ファンドレイジングの基本は、Ask & Thanks」と言われますが、Menon氏は「Askではなく、世界を良くする機会を(人々に)与えることがファンドレイジングなんだ」と語っていて、基調講演らしくファンドレイザーをインスパイアしてくださるような内容でした。
Menon氏のセッションの内容は下記の別記事にまとめていますので、興味があれば、ご一読ください。
NPOの間接経費を見直すキャンペーン「Reflame Overhead」
日本のNPO・公益法人にとってもファンドレイジングをする時の悩みの種である間接経費(オーバーヘッドコスト)。
オーストラリアにおいても、多くの非営利団体が財政的に苦戦しており、主に間接経費への不十分な資金供給が原因となって「非営利団体の栄養失調サイクル(Non-Profit Starvation Cycle)」が生じています。
今回のカンファレンスにあわせて、そんな状況を変えていくためのムーブメント「Reflame Overhead」が、問題意識を持つオーストラリアのファンドレイザー及びファンドレイジング関係の組織が主導して始まりました。
このキャンペーンが発行している非営利団体向けのガイドブックの内容を中心に、下記の別記事にまとめていますので、よければご一読ください。
世界のファンドレイジング関係者との再会と出会い
協賛ブースをまわっていたら、世界のファンドレイザー認証機関CFRE(Certified Fund Raising Exectives)Internationalのブースを発見。
ブースに立っていたのはなんと、2015年の日本のファンドレイジング・カンファレンスで来日してくださったCEOのEva E. Aldrich氏...!!
「日本のオーディエンスは、私の話をPatientに聞いてくれていたわね」と仰って、登壇時のことをまだ覚えていらっしゃった嬉しさも感じつつ、アメリカやオーストラリアのカンファレンス参加者の様子と比べると、「なるほど、海外スピーカーからは日本のファンドレイジング・カンファレンス参加者達のことがそう見えたのか」と思いました。
なお、日本ファンドレイジング協会が発行するファンドレイザー資格(准認定ファンドレイザー、認定ファンドレイザー)とは別に、全世界のファンドレイザーを対象に発行されている認証資格がCFREです。とはいえ、アメリカ発ということもあり、ほとんどのCFRE保有者は英語圏の国々のファンドレイザーですが…
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本記事の執筆時点で、私はInstagramとLinkedInの2つのSNSと、Mediumというメディアプラットフォームにおいて、ファンドレイジングを中心に日本のソーシャルセクターの様々な事例やデータ等を英語で発信しています。その情報発信を見てくれているファンドレイザー達とカンファレンス最終日に会うことができ、継続的な発信の大切さとそこから得られることを改めて実感しました。
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夜には、なんとガラパーティーも開催されるとのことで、パーティー会場もちょっとだけ入らせていただきました。
クラブのような雰囲気を出しつつ、テーブルの配置はフォーマルな感じで、違うものを混ぜ合わせた感が面白かったです。(ガラパーティーの会場を直に見るの初めてだったんですが、こういう形式が標準なんでしょうか…)
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次回のFIA Conferenceは、2025年2月19日~21日でシドニー開催だそうです。
オーストラリアは親日家が多かったり、流暢でない英語を話す人が多い社会でもあることから、日本人にとって一種の「取っ付きやすさ」はある国だと私は思っています。日本のファンドレイザーやファンドレイジング関係者とオーストラリアの方々との間に交流や連携が今後生まれて、日本と海外のソーシャルセクターがより接続していくことを願っています。
最後に
記事をお読みいただき、ありがとうございました。
私は、海外のソーシャルセクターに関する有意義な事例や知見を日本のみなさんにシェアしていけるように日々活動しています。
インターネット検索等だけで得られる情報には情報の質と量に課題があり、ファンドレイザーをはじめ海外のソーシャルセクターの人達とつながるためにカンファレンス(約15~25万円の参加費)をはじめとする有料イベントに直接参加したり、なるべく正確かつ信頼性のある情報源から情報を得られるように有料のレポートや書籍を購入しながら知見を集めています。
「海外(のソーシャルセクター)」という切り口から日本のソーシャルセクターに引き続き貢献できればと思っていますので、よろしければ、下記の「チップを送る」ボタンでサポートいただけると幸いです。
一人ひとりからサポートいただけることで、様々な情報にアクセスして、様々な機会に参加して、有意義な発信を続けたいと思っています!
どうぞよろしくお願いいたします!
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