[tabinote #4]ごちゃ混ぜのアジア
バックパッカー旅は何もかもが初めてで、シンガポールは「旅」として訪れた最初の国になった。
ゲストハウスやドミトリーに泊まるのすら初めてで。
色んな国の旅人が一緒になって泊まるドミトリーは、部屋の中に文化が混ざり合っているようで、楽しかった。
下着姿で男も女も平気でうろついているし。
全く知らない相手でも、ラウンジで席につけば気軽に話してくるし。
基本飛び交ってる声も、目に入る文字も全て英語。
異世界に迷い込んだようで楽しかった。
旅で最初に訪れた試練は「衛生」にどう打ち勝つか。
宿はそれほど汚くはなかったけど。
町を歩いて探したご飯屋さんや屋台はどこも不衛生そのもののように見え、旅で一番初めに口にした夕食はセブンイレブンのカップラーメンになった。
コンビニは世界中にあるだろうし、カップ麺さえ売っていれば生きていけるし、旅を続けられると考えた。
でも、それは旅の本来の姿ではないって気づいて、次の日は町中にある大衆食堂でご飯を食べることにした。
大きな広場の中心にプラスチックの簡単な机と椅子が乱雑に並び、その周りにたくさんの屋台が並んでいるこの場所をみんな大衆食堂と呼んでいた。
屋台のほとんどは中華料理で、作っている人の顔を見ても中華系の人ばかりで、シンガポールにあって、シンガポール料理を出す店は一つもなかった。
シンガポール料理がどんなものかも僕は知らなかったが。
そして、席について飯を食べている人々もほとんどが中華系かインド系、そこに少しの欧米人の旅人が混ざっているだけだった。
食堂の真ん中に置かれたブラウン管TVから流れていたのは台湾の放送で、字幕は英語だった。
日本人の僕も大勢のアジア人に紛れ、一人日本食を食べていた。
シンガポール料理もないシンガポール人もいないシンガポールの大衆食堂で、このごちゃ混ぜの感じがシンガポールなのだ。これこそがアジアなのだと知った。
日本に住んで日本人のみと生活してきた僕にとって、このチャーハンみたいにごちゃ混ぜな感じのアジアの雰囲気は刺激できであり異質的ではあったもののすぐに受け入れられた。
しかし、僕にとって非日常的なこの体験も彼らにとっては日常の1コマに過ぎないのだと考えると、色んなことを想像せざるを得なかった。
僕は日本人であり、アジア人なのだ。
Life is a journey !