[tabinote #10]何もない町ハジャイ
マレーシアのペナン島からタイに入ることにした僕は、宿のおじさんにタイ行きのバスチケットを買いたいと尋ねた。
おじさんはここから行ける場所の時間と料金が書いてある表を出してきて僕に見せてくれた。
東南アジアの大抵の宿は旅行代理店のような業務を兼任しているところが多かった。
表を見てみると、なんとここからタイのバンコクやそれよりももっと北にあるチェンマイなど、かなり遠方まで移動できるらしかった。
しかし、その移動時間を見てみると、12時間や18時間と、想像を絶する長さだった。
僕は腰が少し悪いので、可能な限り長距離移動を避けるようにしていた。
なので、今回はマレーシアとタイの国境の町であるハジャイまで行くことにした。
移動日は宿の目の前までバスがピックアップしに来てくれる。
しかしバスと聞いていたが、当日迎えに来てくれたのはバスではなく、ミニバンだった。とりあえずピックアップし終えた後バスに乗り換えるのかなと思ったが、結局ハジャイに着くまでミニバンのままだった。
さらに距離が遠くなればバスだったらしい。
とにかく僕は白いミニバンに乗り込んだ。
僕以外にもいろんな国籍の人間がバンに乗っていたが、全員観光客らしかった。
バンが国境のイミグレに到着するまで数回の休憩を挟んだ。
その間、3人で旅しているフランス人グループが、一人旅の僕のことを何かと気にかけてくれて嬉しかった。
話を聞くと、3人(男性2人、女性1人)は昔からの友人で、オーストラリアで1年間ワーホリをした後、稼いだお金を使って、陸路経由でフランスまで旅して帰るところなのだと教えてくれた。
なんてクールな旅を、生き方をしてるんだろうと、その話を聞いて僕は感動した。
またこの3人がヒッピーまで崩れた感じはなく、それでいて自由なバックパッカーのように見えてカッコ良かった。
男はパリッとしたVネックのTシャツを着て、胸元にサングラスをかけ、少し露出した肌からタトゥーをのぞかせていた。
イミグレを通過してさらに少し走って、僕達はハジャイの町に到着した。
到着すると、バンはそのままどこかの旅行代理店で止まった。
皆そこで降露された。
運転手の説明では、この旅行代理店からさらに各地にバンが出ているから、チケットはここで買いなさい、と。
皆言われるようにして、旅行代理店の中に入って、カウンターでそれぞれ行きたい場所のチケットを買っていた。
僕の順番になり、僕は宿が近くにないかと尋ねた。
そんな質問をした人は初めてなので、カウンターの男は顔を上げて僕の方を見ると、何言ってんだこいつ、と言わんばかりの顔を見せた。
先ほどの運転手も、お前はここからどこに行きたいんだと僕に聞く。
僕はどこにも行かない、ここ(ハジャイ)に泊まるから宿を探したい、と答える。
そうして押し問答が続いて、一旦僕は列から追いやられ、後ろに並んでいた人を捌き始めた。
そこにフランス人の3人組が何か問題があったかと助けに来てくれた。
僕は、ハジャイに泊まるつもりなのだが、、、と答えると。
フランス人の3人組は笑って、「トモ、ここは観光するような場所ではないよ。何もない場所なんだ。ただの通過点さ。だからほら皆を見てごらん。皆ここからプーケットやクラビ、バンコクに移動するチケットを買ってるんだよ」と言った。
「それはわかっているんだけど、僕はもうこれ以上移動したくないし、何もない町は何もない町で見てみたいんだ」そう言うと、彼らは理解をしてくれ、僕の意見を尊重してくれた。
3人組は最後まで優しかった。
僕はその3人組が出発するのを見届けてから1人でこの誰も観光客が泊まらないような、何もない町を歩いて宿を探した。
結局ハジャイには2泊ほどして次の町に移動した。
何もないと言っても、ここにも多くのタイ人が住んでいるし、街中には市場もあればお店やレストラン、マッサージ屋、コンビニなんでもあった。
人が住んでいるなら生きていける。
観光名所を見て回ることだけが「旅」じゃない。
ハジャイの町で僕はそう思った。
Life is a journey !
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?