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[tabinote #12]自己紹介の後は「お腹空いてる?」@プーケット

プーケットの病院で喉の診察を受けると、また10日後に来てねと言われたので、思いがけずここで10日間過ごすことになった。

拠点として選んだ宿は予約サイトで出てきた多くの宿の中からなんとなく決めた安宿だったけど、居心地が良くて大好きになった。

チェックインしてドミトリーの部屋に入ると、狭い部屋に3つの2段ベッドが詰め込まれた部屋だった。

ドアを開けると上半身裸の男が頭からバスタオルを被りながらこちらを振り返った。シャワーから出たばかりのようだった。

彼は顔に満面の笑みを浮かべながら手を差し出した。

「ヘイ、俺はフランス人のトーマス。よろしくな」

「OK、俺は日本人で、トモって呼んでくれ、よろしく」

簡単な自己紹介でお互いの名前と国籍を交換した。

するとトーマスは、

「お腹空いてる?」

と尋ねてきた。

僕は思いがけない質問で一瞬思考が停止したが、空いてると答えた。

すると彼は、今から市場で食いもんを買ってくるけど、君の分も買ってこようか?と聞いてくれたので、僕は市場の場所も知りたかったのもあり、一緒に行っても良いかと聞くと、一緒に行こうと彼も快諾してくれた。

宿の前の坂を降りて行った突き当たりに市場はあり、様々なローカルフードが銀色のトレーに盛られ、テーブルの上に敷き詰めて並べられていた。

なんでも、パックに自分の好きなものを好きなだけ詰めて良いらしい。

そうして後で重さで料金が決まるシンプルな仕組みだった。

僕達は思い思いに食いたいものを選んでテイクアウトすると、宿に持ち帰って道路に面した宿の外にある共有スペースで涼しい風に当たりながら昼食をとった。

到着してまだ5分もしないうちに、僕にはもう友人ができたどころか、その友人と飯をともにしていた。

少し考えると変な状況にも思えたが、これが旅なのだと後から知った。

ここで少しだけ話をスキップさせて欲しい。

実は、プーケット滞在が長くなることがわかっていたので、ここからほど近い場所にあるビーチ沿いの町に数泊足を伸ばしたことがあった。

そこからまたこの宿に戻ってきた時の話だ。

僕は同じ部屋のドミトリーに戻ってきてドアを開けると、中には外国人の女の子が一人ベッドに座っていた。

挨拶を交わすと彼女はイタリア人のマヌエラだと名乗った。

お互いに簡単な自己紹介を終えると、マヌエラはこう尋ねてきた。

「ところであなたお腹減ってない?」

聞いたことのあるセリフだった。

僕はまたしてもお腹が空いていると答えると、一緒に市場に行きましょうとマヌエラは誘ってくれた。

また市場に一緒に行って、僕達は思い思いの食べたいものを選んだ。今度は宿にも戻らずにその場で立ったまま、お互いが選んだ食べ物をつつきあった。

知り合って5分で一緒にご飯を食べる仲になる。

自己紹介の後は、「Are you hungry? (お腹空いてる?)」

これが旅の“距離“なのだ。

Life is a journey !










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