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音楽配信とクレジット表記

mp3がNapsterで世界に広がっていった頃、AppleがiTunesで配信を始めた頃、PCで配信の音楽を聞くことが嫌いでした。とにかく音が悪くて。Appleのような会社があんなクオリティで音楽を販売するなんて、馬鹿にしてるなと思いました。

それからあっという間にダウンロードも終わりを告げ(ハイレゾをダウンロードしている、僕のような絶滅種もいますが。。)、ストリーミングが主流に。僕は当初、”子供の頃、ラジオで流れていたのと似ててイイんじゃない?宣伝になって多少お金にもなりそうだし”などと軽口叩いてましたが、まさかCD(パッケージ)に取って代わるとは、、、。

いつの間にか自分もSpotifyのプレイリストで新しい音楽や、いままで気が付かなかった過去の素晴らしいアーティストらに出会い、YoutubeでMVや未見のLIVEを楽しみ、CDの代わりにAmazon Music HDを使い、以前にも増して音楽に接する機会が増えたのに、出費が減るという歓迎すべき時代が訪れました(制作者としては喜んでばかりいられない状況でもありますが)。

IT(情報技術)なのに情報が足りない。

そこでずっと気になっていたというか、不便だなあと思っていたのが、レコーディング・データ、いわゆる”クレジット”が全く書かれていないということ。これヒジョーに不満。誰が作った曲で、誰がアレンジして、誰が演奏して、誰がどこで録音して、プロデューサーが誰で、みたいなことが全くわからない。もう不親切以外の何物でもないです。ITのくせに情報が足りない。

ごくまれにアーティストのWEBで見たことがあるけれど、レコード会社(この名詞まだ通じる?)のWEBにもない。洋楽だとAllmusic.comというサイトがあって、そこがデータを整理してくれているんですが、少し大雑把だったり(参加者はわかっても、どの人がどの曲に関わったか、まではわからない)、最近は追いきれないのか、不明なものが増えている印象です。

ドキドキする体験なんです。

何故そういった事(情報)が知りたいかと言えば、自分の気に入った楽曲やアルバムがあれば、それをプロデュースしている人が手掛けている他のアーティストのアルバムも聴いてみたいし、音が気に入ればそのレコーディング・エンジニアさんが別のアーティストと、どういう音を作っているのか聴いてみたい。いい演奏だなと思えばそのミュージシャンが他の場所でどんな演奏をしているか聞いてみたい。逆に”これいい演奏だな、いい音だな、好きな音楽だな”と思ってクレジットを見たら、以前聴いた別のアーティストのスタッフ・メンバーと同じだった、とかジャケ買いならぬ”プロデューサー買い”するなんていうのはちょっとドキドキする体験なんです。

レストランに行って美味しい料理と出会ったら、シェフがどこで修行して、どんなお店で働いてきて、そこはどんな料理やワインを出すのかっていうのが気になるタイプなんです。有名シェフの店に行って”さすが!”の味なら、次には弟子の店に行ったり。料理だと金銭的なこともあって、そうそう辿れないけど、音楽はその点、たどりやすい。特にこのストリーミング時代は、お金も時間も以前に比べたら全然かからない。なのに、かえってたどりにくくなってる。退化してるよね、これ。

もちろん、仕事上でも不便。去年、今までにご一緒したことのないエンジニアさんに数曲MIXを頼みたいね、って話になったんだけど、名前を探すのが大変。ストリーミングで色んなアーティストをどんどん聴いていって、気に入ったMixの曲を絞り込む、というところまでは以前よりも確実に簡単に幅広く出来ました。これはストリーミング以前だったらけっこう大変。ただ、そこから先が難しい。アーティスト・曲名・エンジニアとか検索ワードを入れて出てくれば超ラッキー。ジャケットを見ようと蔦屋にいっても、最近のものはかなりヒットしないと置いてないんですね。で、品揃えが豊富なネット・レンタルを利用したら、ジャケットは貸してくれなかった。仕方なくメーカーにメールしたり、電話したりしました。大概は教えてくれますね。ただ、とあるメーカーには”今回はお教えしますが、ジャケットに書いてあるので次回からは買ってくださいね”と言われましたけど。ううう、商売の基本です!

音以外の熱量も伝えたい!

そんな経験をしていたので、自分がコントロールできるものに関しては、できる限り情報を発信していこうと思いました。そして今回、綾戸智恵が綾戸”智絵”だった時代、1998年のデビューアルバム「For All We Know」から「LOVE」まで5タイトルのストリーミングを始めるにあたっては、クレジットはもとより、ライナーノーツも公開することにしました。

そもそも2014年の「Picture in  a Frame」以降の綾戸智恵のアルバムは、WEBにクレジットを掲載しています。クレジットを掲載するのは、一緒に作品を作った方々への最低限のリスペクトだと考えています。それが今回、ライナーノーツまで掲載することにしたのは、出し惜しみはやめたってことです。

今まではCD(パッケージ)という存在を意識して、パッケージを買っていただいた方に申し訳ないんじゃないか、パッケージが売れなくなるんじゃないか、という強迫観念のようなものに追われて避けてきました。ただ、旧譜に関しては今後パッケージとして再発できるかはかなり微妙だし、せっかくリマスタリングまでして出しているのに、それ以外のものを置き去りにするのは中途半端じゃないかと。また、ライナーノーツも、綾戸智恵本人が書いたものだったり、関係各位のとても愛情のこもった文章であったりで、聴いてくれる方のイマジネーションに訴えかける素敵な作品だと思ったからです。今読んでも熱量ハンパなかった!

WEBにアップしてみると結構な文字数で、いまどきこれを読む人がいるのかなとも思いますが、制作した当初の「買っていただいた皆様にもっと楽しんでほしい、喜んでほしい、音楽だけでなく文字でも伝えたい」という気持ちの部分もできる限りお届けできればと思います。ファンやリスナーのみなさまに楽しんでいただけたら幸いです。

そして、すべての作品のクレジットが、今後どこかにアップされたらありがたいなと思います。僕も楽しみたいので。

綾戸智恵blog(ライナーノーツを掲載しています)

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