「What's Going On」プロデューサー大矢が解説する綾戸智恵ニューアルバム「Hana Uta」その3
What's Going On
綾戸さんがこの曲をレコーディングするのは2度目です。1度目はMYDOレーベル幻の1stアルバム「My do」に収録しました(2005年)。あれはまだ所属レコード会社があったにも関わらず「とにかく1枚好きなようにやる!」と宣言して作ったアルバムです。その時は弾き語りで、重くやったのですが(僕はこのバージョンが結構好きです。聞いていると吉田ルイ子さんの著書”ハーレムの暑い日々”を思い出します)、今回はバンドをフィーチャー。全く違う形に仕上げました。
バンドでファンキーにやるというアイデアは何年も前からあって、その時から鈴木正人さん(ベース)にお願いする事は決めてたんです。ただし何時、どういうアルバムに入れるとか、そういう事が無くてずっと棚上げになっていました。それが今回やっと日の目を見ました。アレンジに関しては綾戸さんから「チャカ・カーンがライブでスキャットをフィーチャーしてるのが格好良い。私はあそこでジャズ・シンガーのスキャットしたい!」と言われました。あれは、チャカの歌はもちろん凄いのですが(余裕が凄い)、バンドが凄い。バンドの人数が凄い。予算が凄い…。興味のある方はYouTubeでご覧いただけます。
さておき綾戸さんからは「(ファンクブラザースのように)ジャズ・ミュージシャンになりたかったけど、色んな事情で今、ソウルやポップスやってますみたいな人達の演奏でやりたい」とも言われたので「ジャズもやってるけどポップスの世界でもバリバリやってます」というメンバーにお願いしました。ただ、全員のスケジュールを調整することが出来ずに綾戸さんのレコーディングにしては珍しく、パートによっては日を改めてオーバーダビングを行っています。ベイシックは渡嘉敷祐一さん(ドラム)、鈴木正人さん、宮川純くん(キーボード)です。3人と綾戸さんの歌だけでレコーディングしたのですが、盛り上がった盛り上がった。エンディングの演奏、凄いことになってます。宮川くんはオルガン(ハモンド B-3)を弾いた後にエレピ(ローズピアノ)を重ねています。ソプラノ・サックスは綾戸さんの神戸・大阪時代からの仲間Yonchan (塩谷博之)が後日、別曲の収録時に吹いてくれました。彼はJAZZをベースに自身の音楽を作り続けているアーティストです。また、ギターの天野(清継)さんはとにかくお忙しいので”天野さんの日”を用意して弾いてもらいました。そうやって出来上がったのが綾戸智恵の「What's Going On」です。
この曲がリリースされた1971年当時は様々な差別やヘイトが横行し、ベトナム戦争中で世界は荒れていました。2022年になっても状況が少しもよくなっているようには見えないのはなぜなのでしょうか。ライナー・ノーツには綾戸さんのそんな気持ちが書かれています。
P.S. 演奏者ににもう一人、ジャズは出来ないけどタンバリン振ってますという人が入ってました。失礼!
ミュージカル「レ・ミゼラブル」の「I Dreamed a Dream」で幕を開けアリシア・キーズの「If I Ain't Got You」やこの時代にもう一度歌いたかったマービン・ゲイの「What's Going On」、自身のリスタートと重ね合わせた「Let Me Try Again」、スキャットを軽快に聞かせる「Billie's Bounce」、ブルース・ロックに挑戦した「I Love You More Than You'll Ever Know」など、JAZZ、Blues、Gospel、Soul、Pops、バンドあり弾き語りあり、綾戸知恵が65歳でお届けする節目のアルバムです。オフィシャルサイトにて絶賛発売中!11月18日(金)にはグローリアチャペル キリスト品川教会にて共演者に宮川純を迎えリリースライブを行うことが決定!チケットはイープラスにて好評発売中。