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松尾神社宮司を勤めた久我建通

これは縁あって落手した掛軸。久我建通の画と歌です。
久我建通は幕末から明治期の公卿です。建通は皇典講究所が創設された際、副総裁となった人物であり、そうした点については國學院大學の比企さんが書かれています。
建通のもう一つの側面として、神社との関わりがあります。
明治4年に太政官布告で神官世襲制が廃止され、当時の松尾神社(現在の松尾大社)も秦氏の宮司世襲が廃されました。そのときに宮司として迎えられたのが久我建通です。
彼は摂関家の一条忠良の子で久我家の養子となりました。久我家は村上源氏の嫡流にあたる貴族であり、彼は江戸期に神社の祭使などを勤めています。
そうしたことからか、明治維新以後に松尾社のほか賀茂社などの宮司も勤めています。

そして掛軸に話を戻しますが、歌の方はというと

「世中に酒てふものゝなかりせはたのしき時ハあらしとそ思ふ」

とあります。在原業平の「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」をもじったのはいうまでもなく、お酒をこよなく愛していたことが分かります。

松の画と、お酒の歌。八十を過ぎた晩年のものではありますが、松尾大社との関わりを想起せずにはいられない一本ではないかと思います。
そして建通翁が宮司を勤めた松尾大社ですが、前近代の秦氏のみならず、近代の歴代神職の皆さんの弛まない営為によった良質な史資料が維持・保存されてきました。

今回の京都文博の松尾大社展は、古代の信仰のありようから中近世の所領経営や天下人との関わりについて展示したいと思いますが、神社史からすると近代もまた重要であります。
展示は、時代を遡る形で進んでいきます。
またちょいちょいと展示について呟いていこうかと思います。


京都文化博物館の特別展「松尾大社展」の特設ページ


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