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子どもたちはそれぞれの未来へと歩みめ、愛犬とは限られた時を惜しむかのように濃密な時間を刻む
朝一番、愛犬のゴエモンの様子がおかしいことに気づいた。散歩に行くつもりで準備をしていたが、数歩進んだところで崩れるように倒れ、そのまま動こうとしない。ついに、この日が来てしまったのか——そう思った瞬間、込み上げるものを抑えきれず、涙が頬を伝った。抱き上げて部屋に戻すと、ゴエモンは静かに横たわり、もう歩こうとする素振りも見せなかった。
急いで病院へ向かう。診察を終えた先生の言葉は、心に重くのしかかるものだった。「あとは看取るだけでしょうかね。」覚悟はしていたつもりだったが、実際にそう告げられると、胸の奥にぽっかりと穴が開いたような気持ちになる。
そんな最中、息子の高校入試の面接がある。ゴエモンのことが気がかりなまま、気持ちを切り替えて学校まで送迎。その後、また病院へ。そして再び学校へ戻る。目まぐるしく動き回る一日だった。
そんな中、娘から明るい知らせが届く。「卒検、受かったよ!」短いメッセージに、ほっと息をつく。
目の前のことに追われ、考える暇もない。でも今は、それでいいのかもしれない。やるべきことにひとつずつ向き合いながら、ただ目の前のことに最善を尽くそう。