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落語・演芸の記録 コレ見た・聴いた2025年1月~
この記事は
地方住みの落語・演芸好きの素人による個人的記録です。実際の落語会には行けないことが多いのでラジオ、テレビ、ネットがメインになると思います。たまに思い出の高座も書くかもしれません。
・落語研究会
TBS落語研究会がU-NEXTで配信されている。1月に見て印象に残っているのは入船亭扇辰さんの「蕎麦の隠居」。柳家権太楼さんの「百年目」、柳家喬太郎さんの「按摩の炬燵」。蕎麦の隠居は初めて聴いた作品で、蕎麦屋を訪れた隠居が初日は「半分」、2日目は「1人前」、3日目は「2人前」と毎日増えていって、そのたびに小言を言っていく。ついには「64人前」になって…というある意味スリラー。「百年目」は、人目を避けようと窓を閉め切って暑さがこもった船の窓をようやく開けて、風が通ったという場面の描写に「空気」を感じました。夏を感じたけど花見に行くから春の噺なんですよね。「按摩の炬燵」は、丁稚さんや按摩さんの切なさやさみしさが垣間見えたのがさすが。面白い中にもあったかみがある人物描写は喬太郎さんらしいなあと聴き入りました。
・こたけ正義感「弁論」(2025.1.15)
弁護士資格を持つ芸人、こたけ正義感さんの「弁論」をYouTubeで見た。こたけさんは夫婦ともに弁護士で、夫婦喧嘩でも争点整理をするとか、独身の同期弁護士が、結婚をしないことを親戚の前でdisる親を「名誉棄損になりかねない」として訴えようとするエピソードなどから入り、げらげら笑う。単なる「弁護士あるある」かと思いきや後半がすごかった。扱ったのは戦後最大の冤罪事件と言われる「袴田事件」。警察や検察の捜査や、証拠とされた品々のおかしな点について、お笑いの要領でどんどんツッコんで斬っていく。一般の人の目撃証言の危うさを笑いで実証してみせるアイディアもすごい。この裁判の問題点に正面からぶつかっていながら笑いに昇華していた。前半の仕込みが袴田事件の後段で活きてくるのも鮮やか。冤罪が生まれる司法制度の問題点をこれほど分かりやすく伝えた例を知らない。冤罪事件を笑いで取り上げた今回のライブは「何か大切なことを言いたいなら、それをチョコレートでくるみなさい」(=難しいことはやわらかく、誰もが退屈せず興味を持ってもらえるように)と言った、映画監督ビリー・ワイルダーの言葉を思い出す。文化庁芸術祭賞に応募してほしい。
今年の初落語に縁を感じる
・ラジオ真打競演 彦いち「天狗裁き」(2025.1)
親が入っているサ高住にばたばたしながら行く途中、たまたまラジオで流れていた真打競演が2025年の初落語。そしてそれが彦いちさんで、とても嬉しかったです。なんだか救われた気がしました(笑)途中だったのでアプリで聴き直し。あ、トップ画像の座布団とマイクは、前に鹿児島で仲間と開いていた彦いちさんの落語会の高座です。
マクラの「~なのよ」などの言い方に初代木久蔵味を感じる。彦いちさんと言えば実際に起こった出来事を爆笑エピソードに仕立てる「ドキュメント」。非常停止した列車の中の人物模様を描写した落語「睨みあい」はドキュメント落語と呼ばれた出世作。マクラって出会いだけど、中東で「初天神」をやったときのマクラや、新幹線の「自由席」の解釈をめぐる格闘家との駅での会話を仕立てた彦いちさんのマクラは何度出会ってもいい。今回のマクラも落語会での「無断録音」をめぐるドキュメントで楽しかったです。「天狗裁き」を聴いて毎回思うのは、人の夢をそんなに聞きたいのか(笑)ということ。「見た夢の話」なんて、されて困る話ナンバー3には入るじゃないですか。江戸のころはそうだったのかな。あ、他人の夢の話、自分は嫌いではないです。広島の安芸太田町での収録、よく笑っているお客さんで会場の雰囲気が良さそうでした。
王楽「試し酒」
・ラジオ真打競演 王楽「試し酒」(2025.1)
酒好きの久蔵が、主人とその友人の話で「五升の酒が飲めるか」の賭け事に臨む噺。きっちり古典で登場人物の解像度が高く楽しく聴けた一席。5升というと9L、すごいね。自分が下戸なので量を呑める人は本当に尊敬します。お酒飲んでいる人を見るのは好きです。いや、正確に言うと好きな人がお酒飲んでいるのを見るのは好きです。王楽さんは笑点の好楽さんの息子で、七代目圓楽の襲名が決まっています。
この回「磁石」の漫才も楽しかった。サンドイッチマンのような現実が不条理の世界に入っていくようなワールド。柳家小八さんは「加賀の千代」という噺で初めて聴いた。