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改めて、“まちづくり“を
昨年末から、「原点回帰」 という言葉が自分の中でキーワードとして浮上しています。
自分では全く気づいていなかったのですが、合作の採用説明会で副社長の西塔大海から「最近よく言ってるよ」と指摘され、言われてみれば、確かにそうかもしれない。
<環境だけ>では見えてこないもの
合作は現在5期目、最初の採用説明会の頃は「SDGsど真ん中の仕事」と訴求していました。想いを持って取り組むに値するテーマだと感じ、大崎町での仕事を始めて、 特に環境分野を中心に尽力しました。
その結果、環境やサーキュラーエコノミーの分野では日本国内でも一定の成果を上げることができた部分もあると感じます。
全く別の地域で「大崎町のこと、知ってます!」と声をかけていただいたり、最近では環境省のサーキュラーエコノミー推進関連の委員を任せていただくようになったり、感慨深く思います。
しかし、自分はもともと環境分野が専門ではありません。専門は美術(彫刻)で、ずっとやってきたのはクリエイティブ✕地域・社会。アートとまちづくりで培ったスキルを、大崎町では環境やSDGs分野に投資してきました。
約7年間環境やSDGsに注力してきた中で、改めて「“環境だけ”では足りないものがある」と感じるようになりました。それが、人の“心理面”に対するアプローチです。
2018年と今では、世の中の環境やSDGsに対する意識も大きく変わってきました。当時はSDGsに対して多くの企業が手探りの状態でした。大崎町で多くの企業視察の対応をしましたが、当時はまだSDGsや環境対応と言うと新しく作られた部署の仕事であったり、「これから勉強する」フェーズの方々が多かった印象です。
しかし今は環境配慮は当たり前にやるべきこととなり、実際のアクションが増えています。2018年は事業の種だったものが、実際にトライアルが進行し事業化されたものも増えてきました。この流れに合作がどれだけ貢献できたか分かりませんが、世の中の流れとしてもこのまま進んでいくことは間違いないと思います。
一方で、実際に世の中が動き出しているからこその課題も出てきています。「環境は大事だ」と分かってはいても、日常の行動を変えることは簡単なことではなく、環境のことだけに注力して売上をつくるのは難しいのが現実。環境に配慮していれば商品が売れるわけではなく、実際には便利さや価格、デザイン性も求められる。例えば<かっこいい・かわいい>や<楽しい>がそこになければ、買う・行く・使うなどの選択になかなか繋がらない現実が見えています。
大崎町の"まちづくり"を再考する
大崎町での活動は、リサイクルの取り組みのアドバンテージを活かしつつ、大崎町だけでは解決できない課題を企業と協力して解決することが重要だと考え推進してきました。
これまでの取り組みは幸いにして自信を持ってお伝えできるものがいくつも生まれました。その一方で、「まちづくり」に資する取組があまりできていないことに違和感が膨らんできていました。
ビジョンとして掲げているサーキュラビレッジを作っていくことは、まちづくり的な事業ではありますが、まずは世界の課題解決につながることを企業と共にやっていくのが主軸に活動してきました。
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しかしながら、実際に大崎町で暮らしながら活動を進めていく中で「やるべきことは環境やSDGsだけでは足りない」と感じるようになりました。
これまでの大崎町での活動は、町の人たちの普段の生活にどう関わっているかで見ると少し遠回りな活動です。理屈では分かっていたものの、やっぱり大崎町のことを好きで始めたからこそ、もっと直接的に大崎町の人たちのためになることが必要。身近な人の喜びが、ひいては自分たちのエネルギーにもなります。
環境も大事ですが、もっと人の幸せに直結する部分も大切に。そう思うと、SDGsは環境・社会・経済の3つのバランスが大事だと提唱していますが、改めてそうだなと実感しました。
合作株式会社の強さと面白さの1つは、創業者がアートと物理学という異質なバックグラウンドの組み合わせであり、その2人が地域づくり分野で活動していることだと思います。環境は当たり前に大切だけど、"地域・まちづくり"が自分たちの中心にあるのだと再認識しました。(さらに、自分の中ではクリエイティビティが非常に大事。)
こういった背景があり、まちづくりという"社会"や"経済"の面にももっとアプローチしていこうとシフトし、ここ1-2年は町の人たちとの繋がり、一緒にやっていく事業を模索してきました。(例えば、合作として受託した環境省の人材育成プログラム"migakiba"や、地元のJCに参加して活動させてもらったり。)
アイデアを吸い出すだけのまちづくりワークショップは、絶対にだめ。
『あなたとおおさき未来デザイン会議』
そんなこんなで前置きが長くなりましたが、「原点回帰」の1つとして昨年の秋から、大崎町で『あなたとおおさき未来デザイン会議』 というまちづくりのワークショップを実施しています。
近年実施されているまちづくり系のワークショップの多くは<参加してくれた人たちから、アイデアを吸い出して終わり>という場になっています。これは、よくない。
インプットもないのにいいアイデアもアウトプットも出ませんし、忙しいまちの事業者さんたちにとって何の得にもならない会には参加してもらえません。時間を作って参加したい!これは学んでみたい!と思ってもらえるような、楽しさを感じられる設計が必要不可欠です。
今回の大崎町での会は、専門家を呼んでAIやデザインについて学んだり、実際に別の町へフィールドに出て感じた上で、今後の大崎町の未来を一緒に考えていく流れで設計しました。
ワークショップの核は、チームづくり
毎回ゲストの方にも協力いただいて、インプット・アウトプットを楽しんで行える場づくりを心がけていますが、今回全体を通して何より大切にしていることは、『懇親会』です。各回の最後に必ず懇親会の場を設け、皆さんが仲良くなるための工夫をしてきました。
言葉だけ聞くと「ただ飲み会が好きなだけでしょ」と思われるかもしれませんが、その真意は“人と人が繋がる場づくり”。
ワークでのインプット・アウトプットも大事ですが、ワークショップを通じて参加者同士がチームになること=仲良くなることこそが真髄だと考えています。そのためには、参加者同士の繋がりを作り、深めるきっかけとしての仕掛けをしっかりと考えることを何より重視しています。
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そうした意味で、懇親会は、ただお酒と料理があれば盛り上がるものではありません。どんな話題で盛り上がる場にするのか、話せていない人がいたら声をかけたり、まだ知り合っていない人同士を繋げたり。参加者一人ひとりに「この場に参加してよかった」と感じてもらい「次も参加したい」と思ってもらうためには、場をまわすファシリテーションや仕掛けが必要です。
懇親会にも力を入れて会を進めている今回のワークショップは、既に4回までが終了していますが、嬉しいことに毎回二次会・三次会が自然発生しています。懇親会だけでなくその後までも参加率が高いということは、この場自体が楽しいという何よりの証拠だと思いますし、実際に会を重ねるごとに皆さんの熱量が上がり、“いいチーム”になっている手応えを感じています。
なかなかこの熱量や雰囲気は文章で伝えづらいのですが、こういった「楽しさ」や「この人たちと一緒に居たい、何かしたい」という空気感は、まちづくりにおいて何より大切な、核となるものだと思っています。
どんなにいい企画や施策を打ち出しても、それを実行して根付かせていくのはそこで暮らしを営むまちの一人ひとり。どんなチームができているかによって大きく変わります。そのチームの核が今できつつあるのではないかと感じています。
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僕もとても楽しく参加させてもらっています。
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1泊2日、2日間まるまる予定をびっしり詰め込んだ視察旅でしたが、夜な夜な語り明かした2日目も誰も遅刻せず朝早くからワークに取り組み、皆さん前のめりに参加してくださいました。なかなか地域のみなさんと一緒に他の地域を視察に行く機会はありません。一段と関係性が深まった旅となりました。
クリエイティブの力で、“心”を動かすまちづくりを。
これからワークショップは終盤に入り、実際に大崎町の未来に向けての具体的なアクションに落とし込んでいく段階です。こんなにいいチームができていれば、おのずといいアイデアやプランが生まれ、そして着実に実現向かっていけると感じられる今、書きながら改めて自分も楽しいな、幸せだなと思いました。(きっと今日本中で行われているまちづくり系のワークショップの中で、10本の指に入るぐらいいい会ができていると思います。)
自分たちも楽しんでいる今回のワークショップですが、参加してくださっている方々からも「この場作ってくれてありがとう」と、直接言ってもらえるようになってきました。それが何よりの原動力になると思うと、まちの人たちと一緒に楽しく取り組んでいくこと、それこそがやっぱり“原点回帰”で大切にしたいことだと感じています。
環境のことはもちろん大切で大崎町の強みでもありますが、まちづくりや人の幸せは、それだけではない。人の心を動かすことがクリエイティブの根幹だとすると、その力を活かしたまちづくりに改めて力を入れていこうと思います。
なかなか伝わりきらない部分もあると思いますので、大崎町で今何が起こっているのかは、ぜひ現地へ足を運んでいただけたら嬉しいです。
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各回のレポートとしてパネルを制作し、町で展示しています。
補足:あなたとおおさき未来デザイン会議の位置づけ
一般社団法人大崎町SDGs推進協議会の取り組みとして、2021年度~2023年度の3年間を第一フェーズとして捉えていました。3年毎に事業評価をする仕組みにしており、本格的な事業評価を行ったことで次年度の計画づくりが少し遅れてしまいまして、2024年度は2025年度からの第二フェーズに向けた仕掛けの1年のような位置づけになっています。
第二フェーズでは、まちのみなさんと一緒にサーキュラービレッジ構想をより具体化していくために、現在まちのみなさんとワークショップで次の具体的なアクションを練っている最中です。
ちなみに、以前「もっと、アートするよ。」と宣言した背景を書いたnoteで
“「事業としては、定款に掲げていることをちゃんとできていて健全な組織運営ができているけど、齊藤らしいクリエイティブな面が全然発揮できてないんじゃない?」と。
評価いただいた方には、別の案件で大崎町以前の活動も見ていただいていたので、正直ぐうの音も出ませんでした。自分でもうすうす気づいていた、やり切れていないことを、外から指摘されてしまった。悔しさや恥ずかしさで、しばらく眠れなくなるくらいでした。”
と書いたのですが、まさにこれが、大崎町での取り組みのことでした。
協議会としての取り組み、第一フェーズはとてもいい成果を残せたと思っていますしそのような評価もいただきました。
ただ、「まちのワクワク感が足りてないんじゃない?」と。
まさにその通りでした。これが、「環境のことだけをまずは力を入れてやってきて、何か足りないものがある」と感じていたこと。
第一フェーズでしっかり環境に注力できたからこそ次に展開できるものがありますので、ここからはより地域とともに事業を回していければと思います。