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【自力解決】未払になった売掛金を、裁判所に申立てて実質7日で回収成功した話

今回、法人間取引で売掛金の未払いが発生してしまいました。
相手方とは連絡が取れていたのですが、厳しく追及してものらりくらりと逃げられ、期日は何度も引き延ばされ、目処が立たずに頭を抱えていました。

そこで、裁判所に「仮差押」を申し立てたところ、相手方の銀行口座凍結に繋がり、最終的に実質7日間でスピード解決しました!
貴重な経験をさせてもらったので、体験談&同じ悩みをお持ちの方へのガイドとして、細かいところも含めて具体的にまとめました。

正直、最初に思っていた以上に大変で、時間もだいぶ使ってしまいました。
某弁護士事務所のサイトには「申立書類の作成など仮差押の手続きは専門性を要する」等と書いてあります。
彼らも商売なので「難しいから任せてね」と言いたい気持ちはわかりますが、自分でも十分にできる手続きです。

また、後述するように弁護士費用もバカにならないため、「弁護士に頼まないと無理」となってしまうと、「明らかに相手に非があるが、金額的に弁護士を雇うほどのものではない(あるいは雇えない)」という事案では泣き寝入りするしかなくなってしまいます・・・。
そういうことを少しでも減らしたいと思い、記事を書きました。

※個人の場合も同様の手続きで進められます。法人よりも個人の方が必要書類が少ないので、ハードルが低いと思います。

※反響ありがとうございます。後半部分を一部有料にしました。
「弁護士相談よりも圧倒的に安く!」というポリシーで設定しています。
弁護士さんに同様のアドバイスをもらうと、合計5時間以上×相談料1.1万円(税込)=5.5万円以上はかかると思います。

Day0:なぜ仮差押か?

通常、債権回収では内容証明を送付した後で支払督促や少額訴訟の手続きを検討します。
しかし、これらの手続きは相手から異議が申し立てられると通常訴訟に移行してしまいます。(少額訴訟は60万円と言う金額上限もあります)
また、管轄裁判所が原則「相手方の本社所在地」になります。

今回、相手方の本社が地方の某県にあるという事情がありました。
こちらは相手方の「東京支社」とお付き合いをしており、契約書にある「専属的合意管轄(紛争が生じた場合は東京地裁で争う)」を生かすためには、最初から民事訴訟を行うしかありませんでした。

しかし、民事訴訟をしていては、判決をもらうまでに数か月ほどかかってしまいます。
相手方はほぼすべての取引先への支払いを止めていることが判明しており、民事訴訟をしていると最悪「時間切れ」になってしまう(破産申請されてしまう)恐れもありました。
そこで、今回は迅速に決定がなされ、それ自体の効力も期待できる(後述します)仮差押をまず行うことにしました。

「仮差押」とは、平たく言うと民事訴訟を起こす前に「仮で」相手の財産を差し押さえる手続きです。
通常は民事訴訟で勝訴してから差押に入るのですが、裁判中に相手が財産を隠したり処分したりしてしまうことも考えられるため、訴訟前に一定の合理性が裁判所で認められれば、スピーディーかつ相手に知られることなく、財産の差し押さえができます。
ただし、あくまで「仮」なので勝訴するまで直接回収できないし、制度の悪用を防ぐために一定の保証金(供託金と言います。後述します)を積む必要があります。

また、今回は金額がさほど大きくなかった(数十万円。少額訴訟の上限は超える。実額は有料エリアで)ため、お金をかけにくい事情がありました。
着手金や成功報酬を考えると、弁護士費用で優に数十万円はかかってしまいます。勝っても相手に支払い能力がない等の事情で回収できないと、費用負担だけが残ってしまい、泣きっ面に蜂状態です。
実際、普段よく相談しているK弁護士には「100万円以下ならペイしないと思う」と言われました。親切心からそう言っていただいたと思います。

なので、今回は手続きを自分で進め、弁護士さんには要所要所でアドバイスをもらうことにしました。

Day 1:申し立て書類準備

必要書類の準備

裁判所のサイトを熟読しながらフォーマットをカスタマイズしていきます。
こちらの主張を裏付ける資料(疎明資料)として、契約書、注文書、業務内容を説明した資料、請求書、相手方とやり取りしたSlackのキャプチャーなども用意します。
しかし、申立書の記載に細かなルールがあり、かなり厄介です・・・。
(後述します)

また、法人の場合は自分の会社(債権者)、相手方の会社(債務者)、差し押さえを依頼する金融機関(第三債務者)の登記簿謄本が必要です。
忘れずに取っておきましょう。

ちなみに、謄本取得にはオンライン請求が安くて便利です。
(窓口請求だと600円ですが、オンライン請求だと郵送で500円/窓口受取で480円になります。並ぶ必要も収入印紙を買う必要もありません。)

弁護士相談

某弁護士事務所に新規で1時間の有料相談(1.1万円)を申し込み、申立書を確認してもらいました。(K弁護士には何となく聞きづらかった・・・)
内容は「問題ない」とのことで、「破産されてしまうと何もできなくなる。債権回収はスピードが勝負!」とアドバイスをいただきました。

時間が余ったので、仮差押後の流れや破産申請されてしまった場合の対応や不安なこともあれこれ伺い、「相手がこう出てきたらこうしよう」という将来のシミュレーションもできました。

Day 2:裁判所への申し立て

翌日、裁判所に申立てを行いました。
てっきり、簡易裁判所に申し立てればよいと思っていた(弁護士もそう言っていた)のですが、窓口で「契約書の専属的合意管轄が東京地裁となっているので、そちらの窓口で」と言われ、裏手にある地裁に出直しました。
出鼻を挫かれてしまいましたが、これはまだ「序章」でした・・・。

想定外1:膨大な添削

地裁の窓口(入ってすぐの階段を上ったところにある民事9部)で申立を行いたい旨を伝えると、まず「収入印紙2,000円分」を購入してくるように言われました。(地下1階の郵便局で買えます。)
印紙を貼って提出すると、「これから30分かけて内容を確認するので、時間になったらまた来てください」とのこと・・・。
このタイミングで裁判官との面談も調整してもらい、「翌日13時30分から」となりました。

そして30分後、書類に膨大な付箋が張られたものが戻され、その場で二重線を引いて訂正印を押して訂正文言を書き・・・というのを繰り返します。
例えば・・・

【誤】
株式会社 磯野一家
上記代表取締役社長CEO 磯野カツオ
【正】
株式会社 磯野一家
上記代表者代表取締役 磯野カツオ

みたいな細かい修正が都度入ります。
(訂正したバージョンの申立書、取下書、同意書等の実際に使った書面をテンプレ化したものを後ろに置いておくので、ご活用ください。)

また、訂正した書類の一部(当事者目録など)は今後の手続きでも使うため、写しを持っておく必要があります。
「予備の書面に書き写しますか?」と言われたのですが、そんなものはない(出す分しか印刷して来なかった)し、写真を撮るのはNGということで途方に暮れましたが・・・

元データがパソコンに入っていることを思い出し、その場で訂正した書面を見ながら修正させてもらいました。(初めてのことだらけでかなりテンパっていたようです・・・)

想定外2:不動産登記簿

「足りない資料があるので、明日までに用意してください」と言われたのが、不動産登記簿です。
今回、銀行預金の差押を申請したのですが、「不動産を持っている場合は、預金よりも先に仮差押の対象になる」というルールがあるらしく、「相手方が不動産を所有していないこと」を証明する必要があります。

具体的には、会社所在地の不動産登記簿を取得し、所有者名が相手方ではないことを示す必要があります。
(前日に弁護士に相談して太鼓判をもらったのに。おい、T弁護士!!)

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